2025年08月12日
8月京大龍谷大野合宿を振り返って/ 初ソロ体験記
お世話になっております。2回生の山口航汰です。去る2025年8月9日、ついに念願の初ソロに出させていただきました。
初ソロにでた合宿である8月京大龍谷大野合宿は、後半二日があいにくの大雨で早期撤収となったもののインシデント等なく無事に終えることができ成果も多い合宿でした。
今回は合宿全体を振り返るとともに初ソロまでを振り返ろうと思います。
もともと、私は同期の中であまり飛んでいないほうだったのですが、今年の5月に参加したおおのローズカップがきっかけとなり初ソロを意識しだすようになりました。
それから夏までには初ソロに出ようと思い、割けるだけの時間はすべて部活に割いて基本的に毎週合宿に参加しフライトを重ねていました。
洛風総会(KUGCのOBOG総会)では、埋まりきっていなかったチェックリストの知識項目をOBとして参加されていた辻井教官に埋めてもらい、ベテランOBの谷さんからフレアの極意を教わって初ソロへの準備を整えていきます。
4週連続木曽川生活などの試練を乗り越え総発数69発で挑むは7月京大大工木曽川合宿。1日1コンドルを日課にして毎日シミュレーターの練習を重ね、満を持して合宿に挑みます。
辻井教官に朝イチで乗ってもらったフライトの出来はそこそこ、全体的にまとまったフライトができたものの全体的にラダー過多で滑り気味。「もう1回乗ってみよう」と言われたものの搭乗は回ってこず次の日へ持ち越し。そして回ってくる次の日のフライト。昨日の反省を活かしてラダーを優しく扱うぞ!しかし、何か1点を気にしすぎるとまとまりが崩れて上手くできないのが自然の摂理というもので、辻井教官からも「昨日のほうが上手かったな笑」と言われてしまいました。結局この合宿では何も出来ずに終了。総発数71発と車係の認定だけを引っさげて京都に帰りました。
ということで狙うは次の合宿、すなわちこの8月大野合宿でございます。しかし最近の参加合宿はほとんど木曽川。前回の大野合宿は5月で、それから木曽川木曽川木曽川木曽川福井木曽川と5木曽川1福井ぶりの大野合宿です。当然大野のことは何も覚えておらず、試しにシミュレーターで飛んでみると木曽川では毎回ピッタリ200mで通れていたチェックポイントも大野ではバラバラ、このままでは8月大野の一発目が慣熟飛行になってしまう。危機感にかられテスト勉強の傍ら毎日部室に通い詰めシミュレーターでの練習を続けました。1ヶ月やり続けた成果は確実に実力につながり、7月後半には完璧な場周経路を描いて素晴らしいパス角で帰れるようになりました。ダミーブレイクにも対処できるように策切れ確率100%で何回もシミュレーションし、どの高度で切られても安全に帰ってこられるようにしていました。まさか、これがのちの悲劇につながるとも知らず......
お待たせしました、ついに迎えるはこの8月京大龍谷大野合宿。この合宿を逃すと次の初ソロチャンスは2か月後の9月末になりかねないこともあり、なんとしても初ソロに出たい合宿です。そんななか確認する天気予報は全日雨、そもそも合宿をできるのかも怪しい状況でしたが、入り日にはある程度回復し、運命をかけた合宿は無事に幕を開けました。
1日目 8/7
この日は朝から雨、昼から晴れる予報だったため午前中は学科などで時間を有効活用。われらが鈴木主将による大野の道学科を受けた後は時間が余っていたため、こんな時間を見越して京都から持ってきていたシミュレーター機材をセッティングしてシミュレーターで練習をしました。初ソロ前最後の練習のつもりで挑みましたが出来はいまいち。フレアもきれいに決まらず、自信へとつなげることはできませんでした。もちろん索切れ確率は100%でダミーブレイクへの対応もばっちり!
予報通り昼には天気も回復し、機体を組んで訓練を始めます。ピストの落合から飛ぶか聞かれ、初ソロコンディションでないため若干渋ったものの「明日いきなり一か月ぶりに飛んで初ソロでれるか?」という落合のアドバイスを受けて飛ぶ事に。発航順は2発目で後席佐野教官。ソロを意識しだしてから一番同乗してもらっている教官、ソロチェックのつもりで挑みます。しかし、よく考えれば前回のフライトは実に一か月前の木曽川合宿。いくらシミュレーターをやっていても感覚を思い出すフライトになってしまいました。曳航時の速度指示も自分でできず、またラダー踏みすぎを指摘されてしまうという情けない結果に。
結局この日のフライトはこれだけで、残りは1回生の親などランウェイワークに集中して合宿に貢献。
2日目 8/8
この日は朝から晴れ。朝一番は絶好の初ソロコンディションです。この日もまた2発目後席佐野教官。おそらくこれが1チェック目のはず、昨日の反省を生かして落ち着いて飛びます。するとびっくり、上空がド静穏で飛びやすかったこともあり、離陸から着陸までまとまったフライトをできました。それまで課題であった後期上昇やフレアも深く意識せずとも自然にできるようになり、降りたあと佐野教官からも「今のフライトよかったやん」とお褒めの言葉を頂き初ソロへ自信をつけます。
そして次の搭乗は7発目後席松村教官。教官が変わったことで1チェック目に通ったことに気づきます、あの完璧なフライトならそら通るわなんて思いながら。
教官への挨拶をすませ次のフライトのイメトレをしていると、佐野教官がやってきて急に索切れ時の対処の話をし始めました。
「確かに、そろそろダミーのことを考えないといけないよな、いやでもたしか初ソロ前はチェック?@、チェック?A、ダミーでソロだったはず。でも今この話するってことは次ダミー?どういうこと?」
考えすぎてよくわからないまま機体に乗って気づけば無線を入れて張り合わせ。人間、索が張り合わせたらすべてを忘れるものでその時にはダミー云々の話は忘れていました。
「エアボーン、速度チェック」
いつも通り上昇の操作を続けます。「200m通過速度チェック」、機首が下がらないようにアップを続けていた刹那
「ガコン!!!」
大きな音と衝撃、急激なパワーカットの感覚が自分を襲います。ダミーブレイクだと気づいてからは簡単です、これまで練習してきたように滑空姿勢・離脱・速度チェック・高度チェックをするだけです。
「ダイブブレーキを押さえながら離陸する癖をつけてたからダミーの時もレリーズの動きがわかった」と語る尊敬するT.M.先輩の初ソロ体験記に倣ってダイブを押さえていた手は、レリーズの動きに気づかないだけでなくまさかのダイブブレーキをオープン。レリーズノブとダイブブレーキを間違えることありますか?焦ってればあるんです、びっくりですね。
すぐに気づいてダイブブレーキを閉じたはいいものの、右手はエレベーターをフルダウン。当然機首はどんどん下を向き、目の前の景色はすべて地面になっていました。「下げすぎや!」という松村教官の声でようやく状況に気づき、滑空姿勢に戻し場周に入ったものの、ダミーによる緊張かそれとも考えうる限り最悪の回復操作をした絶望からか旋回しながら足が震えていたのをよく覚えています。
地上に戻ってからは、なぜあんな回復操作を行ってしまったのかと自責の念に駆られ教官の講評も半分ほどしか頭に入りませんでした。今思えば、原因は大きく二つです。一つ目は予想だにしない状況による緊張と焦り。二つ目はシミュレーターのやりすぎです。というのも、シミュレーターはどうしても実機とは違いがあり、その一つが索切れ時の回復操作だったのです。シミュレーターでは索切れ時にエレベーターをフルダウンにしないと滑空姿勢まで戻らず、シミュレーターで索切れ時の練習をやりまくっていた私は索切れ=即フルダウンという動きが染みついていたのです。しかし実際の機体は挙動が全く異なり、操作としてはニュートラルに戻す程度の操作で滑空姿勢に戻ります。しかも、この時の私は操作に集中するあまり「滑空姿勢に入れる」という本来の目的を忘れエレベーターの操作しか見えていなかったのです。
講評の際に「もう少し一緒に乗ろうな」と松村教官に言われ、そのもう一度が今日やってくることを願いながらランウェイワークを続けること1時間ほど、再び搭乗順が回ってきます。後席は松村教官。またダミーじゃないかとびくびくしながら離陸。結局索は切られず通常通り上昇して離脱。直後に体が持ち上げられる感覚、そうサーマルです。リダポンでぐるぐるソアリングし10分ほどで高度1000mほどへ。上限高度を気にしながら西側のサーマルを探しつつ30分ほど滞空して帰ります。普段ならうれしい滞空も、今は場周飛行の練習のほうが優先したいという思いが強く、発数割いてる上に滞空までする申し訳なさもあり、素直に喜べませんでした。ただでさえ発数もらってるのに贅沢な話だ。
先ほどのフライトでチェック?@は通ったらしく、次は北教官との搭乗。今度はいつダミーが来てもいいように完璧にイメトレ済みです。北教官から「やまこう(説明しよう、KUGC2回生には山口が二人いることから私は部内で「山」口「航」汰から「やまこう」と呼ばれているのだ)」と呼ばれやや驚きながらもいつも通り出発します。
予想通り今回はダミーフライト。前回と同じくらいの高度で索が切られます。イメトレ通りに滑空姿勢に入れて落ち着いて離脱操作......
1回目のダミーに比べれば格段によくはなったものの、滑空姿勢に入れる時にやや速度が抜けていたのを気にして少し機首を下げた結果オーバースピードになり、そのまま旋回を始めたため100km/hほどで飛び続けてしまいました。速度が抜けるよりかは遥かにましですが、速度出しすぎもいただけないものです。北教官からオーバースピードを指摘され速度を修正し第三旋回、第四旋回、ここまでくればいつも通りです。
「速度チェック、軸線チェック、パスチェック。速度チェック、軸線チェック、パスチェック......」
呪文のように唱え続け、ファイナルを飛びます。
「速度チェック、軸線チェック、パスチェック。速度チェック、軸線チェック、パスチェック......」
「速度チェック、軸線チェック、パスチェック。速度チェック、軸線チェック、パスチェック......」
「速度チェック、軸線チェック、パスチェック。速度チェック、軸線チェック、パスチェック......」
地面が近づきます。
「速度チェック、軸線チェック、パスチェック。速度チェック、軸線チェック、パスチェック......」
「速度チェック、軸線チェック、パスチェック。速度チェック、軸線チェック、パスチェック......」
「「あれ、フレアは?」」
そのとき、一瞬ながら操縦桿に後席から触られる感覚が。
そう、ここにきてフレアをし忘れかけるという超重大やらかしをしたのである!
なんとか急激な機首上げにより一命をとりとめたものの、当然ながら講評で北教官からフレアが遅すぎるとしっかり怒られてしまいました。フレアし忘れはたまにあると、これまたT.M.先輩から聞いていたもののまさか自分がこのタイミングでやらかすとは。フレアの感覚をつかんで安定しだした矢先だったこともありショックは大きい。「やまこう、もうちょっと乗ろうな!」と北さんに背中をポンポンされ励まされてしまった。
やらかしまくってメンタル面でこれ以上飛んでも上手くいく気がしないこと、このフライト直後に昼休憩で初ソロコンディションでなくなっていくことから初ソロは明日に持ち越しかとこのあたりから薄々感じ始めました。実際にこの日はこのフライトで終了、次の日に持ち越しです。二度のやらかしに頭を抱え、龍谷の1回生にすら慰められる情けない先輩になっていました。
それからは1回生の面倒をみながらランウェイワークをし、夜に索切れ対処の学科資料を見ながら就寝。
3日目 8/9
この日も朝から一日中晴れの予報。しかし途中から南風の予報なため初ソロチャレンジに与えられた時間は決して長くありません。前日のように何回もダミーをしてはいられません。佐野教官にも「何回もダミーしていられんぞ」と笑われてしまいました。
この日も2発目の搭乗。後席は辻井教官です。辻井教官は京大教官であり、紹介を受けて同じバイト先で働いたりローズカップにチームで出場したりと大変お世話になっている教官です。1晩置いたおかげか深く考えずにいつも通りに飛べ、まとまったいいフライトができました。前合宿で言われたラダー踏みすぎも気づけば直っていました。13のラダーは踏むというより足に力を加える程度がちょうどよく踏める。上空ではサブG訓練を使って回復操作の練習もさせてもらい、ダミーへの対策もばっちり。最後にやや軸線がずれたという反省点はありましたが、無事チェック?@は通ったようで、数分後には次の搭乗が回ってきます。後席は神戸大の渡辺教官。
ダミーだろうなと薄々察しつつ、いつも通り飛びます。なぜかは分かりませんがとわちゃんひろちゃんによる、3回生のやる2索目とは思えないようなのんびりとした索付け索だしにより出発です。三度目の正直、ここで決めて絶対に初ソロに出るぞ!
想像通りこのフライトはダミー、250mほどで索を切られます。さすがの自分も二日で三回も索を切られていればもう慣れたもんです。落ち着いて回復操作をこなし、帰ってきます。しかも軸線ばっちり指定地着陸です。
渡辺教官から軽く講評を受け、渡辺教官が辻井教官に何かの指示を。
辻井教官「ちょうどいいやあの108、山口でいこう」
ピスト落合「後席は?」
辻井教官「なし!」
「京大山口航汰、その108搭乗、ソロ」
ピストのアナウンスを聞きながら辻井教官と機体へ向かいます。辻井さんと重量重心位置を確認し搭乗準備。今後ろに誰も座ってないのか、なんて思いながらキャノピーを閉めます。同期の陳がしっかりと確認をしてから索を付けます。計器や縛帯を改めて自分でもチェックし、クリア確認を一人でゆっくり確実にしてからサムアップ。翼出しは同期の手塚。機体が水平になり、あとは無線を入れるだけ。無線を入れたらもう後戻りできないなと思いながら一度大きな深呼吸をしてそわそわする心を静めます。
無線を入れて張り合わせ、人間やはり張り合わせたらすべてを忘れるものでここからはいつも通りです。3回杣ウインチマンに曳かれ、曳航速度120km/hにビビりながら上昇します。(あとから聞いた話だが初ソロは速めに曳くものらしい)
綺麗な後期上昇を描いて滑空姿勢へ、シミュレーターで何度も見た景色です。ソロだからといって変わることはなくいつも通りブツブツやることを喋りながら飛びます。強いて言えばいつもより機体が軽くてすぐ反応してくれ、飛んでいて楽しいです。
ソロで飛ぶ空はもっと緊張するものだと思っていましたが、意外とそうでもなく離脱後に旋回しながら「え、俺いま1人で飛んでるの?楽しい〜〜!」なんて1人で喋りながら飛んでいました。
某全国3位のA.I.先輩の初ソロ体験記で「両手両足を離してみた」みたいなことが書いてあったので自分も初ソロの暁にはやろうと思っていましたが、実際は怖すぎてそんなことできませんでした。
代わりと言ってはなんですが歌いながら飛んだり、ランウェイ向いたときにランウェイのみんなに向かって手を振ったりと、1人でしかできないことをいっぱいして楽しみました。
完璧な高度でエントリーして気づけばダウンウインド、ここからは帰ることに集中します。第三旋回でも速度と滑りをチェックしていて例の慣習のことなんてすっかり忘れておりました。
ベースからのパス角は完璧。第四旋回でしっかり軸線を合わせてファイナルを飛び、忘れずにフレア。大きなミスはなかったものの、軸線が少しズレたせいでフレアで機首が暴れてしまいました。みんなが見つめる初ソロの着陸でこんなみっともない着陸をしてしまったのはなかなか恥ずかしいものです。
とはいえ無事に帰ってきて指定地ピッタリに降りることもできました。キャノピーを開けるとみんなが駆け寄ってきます。この瞬間を機体の中から見る日が来るとは。
上空で楽しんでいたもののなんだかんだ内心はビビっていたようで、キャノピー開けて開口一番「生きて帰ってこれたー!」と漏らしていました。
総発数79発での初ソロでした。70発ぴったりで初ソロ出るぞという目標は叶わず、3回もダミーをする情けないチェックフライトを挟みましたが、なんとか70発代でソロに出ることができました。
それからは初ソロ恒例、写真撮影タイム。大野さんの最強カメラで最高の写真を撮っていただきました。この写真は一生の宝物です。
このとき知ったことですが、このフライトが辻井教官にとって初めて出した初ソロだったらしく、それが自分であったというのはなんとも感慨深いものです。
帰ってきてから渡辺教官が「おめでとう」と言って握手してくださった時、初ソロに出れて本当に良かったなと心から思うとともに渡辺教官のあまりのカッコよさに惚れてしまいました。
長くなりましたが最後に、この初ソロは周りの人たちの存在なしには成し得なかったものだと思います。どんなにひどいフライトをしても見捨てないでいてくれた教官方、自分の発数が奪われているというのにどんなときも応援してくれ時にアドバイスもしてくれる先輩や後輩たち、そして何より愛すべき同期たち。人の成功を心から願い共に成長していける素晴らしい仲間に出会え、この部活に入ってよかったと心からそう思った瞬間でした。
まだまだ改善点しかないようなフライトでしたし、初ソロはゴールではなくスタートであることを忘れずこれからも精進していきます。
期末レポートと見間違うほどの長さの拙文でしたが最後までお付き合いいただきありがとうございました。
これからもどうぞよろしくお願いします。
【合宿の最新記事】
posted by 京都大学体育会グライダー部 at 15:53| Comment(0)
| 合宿
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