TPPは問題だらけ?〜TPP問題をめぐる高橋洋一氏のデマを斬る!!〜中編
- 2015年11月26日
- 経済
- TPP
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- 高木克俊
日本とアメリカでは医療保険に関する考え方がそもそも違う
前回記事では、高橋洋一氏のコラムから、一部引用して高橋洋一氏がどのようにして、堤未果氏がテレビ番組で「日本がTPPに入ると盲腸の手術で700万円かかるようになる」と発言したかのような印象操作を行ったのか?という問題について解説しました。
そして今回は、日米の医療制度や保険制度の違いについて説明しながら、TPPに入ることやアメリカからの要求によってどのように日本の保険制度や医療制度が破壊されていくのか?という問題について解説したいと思います。
まず、最初に説明しておかなければいけないことは日本とアメリカではそもそも保険や医療に関する考え方が全く違うということです。簡単に言うと、アメリカでは医療や保険制度は営利企業が提供する商品であり、日本では、国民皆保険の制度に代表されるように医療や保険が社会的なサービスとして扱われています。
より具体的には、日本の医療制度や保険制度の理念は、憲法25条に定められた「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障するため制度として設計されています。
日本国憲法25条
1 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
この権利を逆に国家の側から眺めたのが、25条の2であり、国家はすべての国民の社会福祉、社会保障、公衆衛生の向上と増進に努める義務があるわけです。
オバマケアは出来損ないの皆保険?
一方、アメリカでは医療は営利企業が提供する商品です。商品なので、お金が払えない人はそのサービスが受けられませんし、営利企業なので、企業は出来る限りそのサービスを提供するための価格を高く設定しようとします。
アメリカの民主党が政権を取ったときには、オバマ氏の最大の目玉政策の一つはオバマケアと呼ばれる、すべての国民に医療保険を適用させる政策でした。アメリカには国民皆保険制度が存在しておらず。 公的医療保険は高齢者向けのメディケアと低所得者向けのメディケイドに限定され、国民の27%前後をカバーしているにすぎません。そのため、メディケアやメディケイドの加入者以外は、保険が必要な場合は民間企業の提供する医療保険のサービスに加入する必要があります。結果として2006 年時点で全国民の16%程度、4,700万人前後の国民が無保険のままに放置されていました。そこで、オバマが目玉政策として打ち出したオバマケアでは、すべての国民に健康保険を適用させる制度を作るとしてリベラル層から非常に高い評価受けました。
しかし、現実のオバマケアは日本のような国民皆保険制度とはほど遠い制度となりました。メディケアのような公的医療保険を全国民に適用させるのではなく、全国民を民間の保険に強制的に加入させるという制度だったのです。
これによって、得したのは誰かといったら、当然民間の保険会社です。それもそのはずで、現在アメリカでは保険に加入していない人には罰金が課されます。また、この政策によって、保険会社は、特定の人物が保険に加入するのを拒否することが出来なくなったのですが、その分保険料はそれまでと比較しておよそ2倍に上がったと言われています。通常ならば、保険料を突然2倍に引き上げれば保険に加入する人が激減しそうなものですが、ほとんど全ての保険会社で保険料が大幅に引き上げられた上に、オバマケアにより全国民に保険に加入する義務が課されたため、保険に入りたい人、保険未加入による罰金を支払いたくない人は、非常に高い保険料を負担してでも民間の保険会社に加入せざるを得ないのです。
先に挙げた高橋洋一氏のコラムでは「アメリカも、他国の公的保険をアメリカ並みにせよなんて馬鹿げたことは決して言わない。」(TPPをめぐる「3つのデマ」を斬る! 〜「アメリカの言いなりになる」論の根拠を徹底検証 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/45896?page=3)とありますが、そもそもこんなメチャクチャな制度を他国に押しつけられるハズがありません。
→ 次ページ「じゃあ、どうやって日本の保険制度は壊れるの?」を読む
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