90年代の教育を語ろうと思えば、外せないキーワードは間違いなく、「ゆとり教育」でしょう。
この言葉ほど、定義が曖昧なまま、一人歩きしているものも珍しいです。私は、ちょうど「ゆとり世代」の先頭になるのですが、センター試験の日、新聞の見出しに「ゆとり世代vs旧課程」と書かれていたことを今でも覚えています。
まずは、「ゆとり教育」の再定義から始めてみたいと思います。
「ゆとり教育」はいつ始まった?
義務教育を行なっていくにあたり、文部科学省から学校へ「学習指導要領」というものが通達されます。
戦後、おおよそ10年に1度、全面改訂されてきました。その中に「ゆとり」という方針が盛り込まれたのは、昭和52年(1977年)の改訂の際です。
文科省が2011年に発表した「学習指導要領等の改訂の経過」という資料によると、1977年を境に授業時間数の削除が進んでいきました。その目的は、「ゆとりのあるしかも充実した学校生活が送れるようにすること」とされています。
そういう意味では、この学習指導要領が実質的に導入された1980年度以降に小学生になった人々はある意味で、「ゆとり教育」を受けてきたと言えるわけです。つまり、今、40歳以下の方々も含まれてきます。
このゆとり教育の背景には、高校進学率の変化があります。昭和49年には高校への進学率が90%に到達し、高校教育が義務教育の延長線上になります。文部省の発想としては、高校進学を念頭に置いた義務教育の再構築がテーマになっていったと思われます。
(下図は文科省の資料「高等学校教育の現状」より)
そういう意味で、社会の変化を受けて、学習指導要領が変えられていったことが大前提にあります。
「週休2日制」への移行
また、「ゆとり教育」の象徴的な出来事として、毎週土曜日が休みになる「週休2日制」があります。
これ自体も、学校側が教育制度の何らかのビジョンに照らし合わせて発表したものではなく、社会の変化に合わせて取り入れていった制度です。平成4年以降、学校だけでなく役所などでも、土曜日が休みになり、毎週末に連休が存在していることが当たり前になっていきます。
そもそも、この週休2日制を日本において取り入れたのは、パナソニックの創業者である松下幸之助翁です。産経の記事で、詳しく取り上げられていますが、翁はGDPで日本の10倍を誇ったアメリカが週休2日制を敷いていることに驚きます。
ここで松下幸之助はアメリカが週休2日制を取り入れることのできる理由をこう語ります。「日本よりも生産性が10倍高いから週休2日でも日本の10倍以上のGDPを誇っているのだ。」と。
日本生産性本部の定義によれば、一般的な生産性とは「労働者1人1時間あたりの生産性」のことを指します。つまり、同じ条件下で、1時間働いた際に出来上がる製品や提供できるサービスの量や質が上がることが「生産性が上がる」といったことなのです。
「週休2日制」というのは、平日5日間を通じて、生産性が10倍とまでは言わずとも、絶対的に上げていくことを前提としています。
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