こんにちは、島倉原です。
今回は、「失われた20年」(デフレを伴う日本経済の長期停滞)の原因を巡る諸説を概観してみようと思います。
目次
経済学は当てにならない?
以下は順不同で、あくまでも「私の知る限り」の諸説一覧です。また、論者によっては複数の説をまたいでいるケースもあります。
(1)生産性低下説
GDPとは「Gross Domestic Product(国内総生産)」を略したものです。
この説は、モノやサービスを生産する際の「生産性」向上がバブル経済崩壊後に弱まったことが、文字通り生産活動の総合計であるGDPの伸びで示される、経済成長率低迷の原因であるとし、解決するには生産力を弱めているもともとの原因を取り除かなければならない、と考えます。
→ 詳細)「主流派経済学」のいかがわしさ
(2)「ゾンビ企業」生存説
(1)の一類型と言えるかもしれませんが、生産性の低い産業や企業(=ゾンビ産業 or 企業)が生き延びていることに着目し、その延命を可能としている保護的な行政の在り方等を問題視する説です。
→ 詳細)「主流派経済学」のいかがわしさ
(3)不良債権足かせ説
バブル崩壊後に多額の不良債権を抱えたことにより、銀行の資金供給力(貸出能力)が低下したことが、経済活動の停滞をもたらしている、とする説です。
「不良債権を抱えている=ゾンビ企業を延命させている」という観点から不良債権を問題視する説は、ここでは「『ゾンビ企業』生存説」のバリエーションに分類することにします。
→ 詳細)「主流派経済学」のいかがわしさ
(4)新興国経済成長説
中国をはじめとした新興国で生産された低価格品の国内流通量が増えたため、国内産業が圧迫され、経済不振やデフレをもたらしている、という説です。
(5)バランスシート不況説
バブル期に過剰な借金を抱え込んだ家計や企業が、お金の使い道として消費や投資よりも借金返済を優先しているため、経済活動が停滞している、という説です。
→ 詳細)バランスシート不況説の問題点
(6)人口減少説
国内人口、特に生産年齢人口(統計上は15〜64歳)の減少が、消費活動をはじめとする経済の停滞をもたらしている、という説です。
→ 詳細)「人口減少説」はトンデモ説の典型
(7)金融緩和不足説
日本銀行の金融緩和が不十分であることが、貨幣的な現象であるデフレを招き、経済の停滞をもたらしている、という説です。
→ 詳細)金融政策と財政政策
(8)財政支出不足説
政府が財政支出を抑制していることが、所得の流れを滞らせ、経済の停滞をもたらしている、という説です。
→ 詳細)金融政策と財政政策
とまあ百家争鳴状態で、「経済学者」「エコノミスト」と呼ばれている人々の間でも、議論が全くかみ合わないケースもしばしば見られます。
従って、「経済学者の言っていることだから」と思って信じてしまうと、かなりの確率で誤った結論を導き出してしまう訳です。これは「経済学が学問として役に立たない」という意味ではありません。
経済学とは「ある前提を立てた上でそれをモデル化し、そこから論理的な結論を導き出す」というスタイルで成り立って、学派によってはまるで異なる前提を用いているので、「現実と合致しない前提を立ててしまえば、いくら論理的に正しくても、現実の問題解決にはまるで役に立たない結論が導き出されてしまう」ということなのです(これはケインズが「一般理論」で指摘したことでもあります)。
まさしく、「経済学を学ぶ目的は、経済問題に対する出来合いの対処法を得るためではなく、そのようなものを受け売りして経済を語る者にだまされないようにするためである」(イギリスの経済学者、 ジョーン・ロビンソンの発言)という訳です。
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