天皇に悪いひとはいない
天皇に悪いひとはいない(てんのうにわるいひとはいない)とは、明治時代から第二次世界大戦敗戦前の日本において、一般的な日本人が抱いていた願望の一つ。
概要[編集 ]
万世一系と呼ばれるように、天皇家は記紀では2600年、学問的には1500年以上日本に君臨し、摂政や関白、将軍といった人臣を使役して日本を治めてきた。江戸時代の国学者の間ではこのことは日本の誇りであり、世界の国々と比較して日本は優れた国であるという思想を生み出すに至った。しかしやがて欧米の文化が流入し、欧米先進国が革命、あるいは民権意識の高まりによって民主主義、立憲主義を勝ち取り、発展してきたことが知られるようになると、日本は国民が天皇家に2600年隷属した奴隷根性の国であり、国民には自主性の欠片もないのだというコンプレックスを持つようになってしまった。やがて大日本帝国憲法が発布され、日本も立憲主義を受け入れたが、福沢諭吉が言ったように、それは日本人が天皇家から勝ち取った権利とは言いがたいものであった。そのような指摘に対し「天皇は皆名君で素晴らしい人格者ばかりなので革命や君臣の対立は起きなかった、起きる必要はなかった」と主張し日本人の(削除) ちんけな (削除ここまで)自尊心を守ろうとする者が現れた。これが「天皇に悪いひとはいない」という概念である。そしてこの考え方は戦前を通して一般的なものとなり「天皇に悪いひとはいない」という認識は初等教育から国民すべてが叩き込まれる常識となったのである。
ちなみに、なぜ「天皇に悪い人はいない」と書かないのかというと、これは言うまでもなく戦前の天皇は現人神とされ人間ではないとされていたからであり、また天皇の御名には大抵「仁(ひと)」の字が含まれるので「天皇に悪い仁はいない」という意味も込められているからである。
その例[編集 ]
天皇は内紛なんてしない[編集 ]
和をもって尊しとなす天皇家が身内で醜い争いを繰り広げるなどあり得ないことである。近江朝廷に反乱を起こして兄の息子から帝位を簒奪したりしていないし、我が子可愛さから他の女と夫との間にできた皇子を自殺させたりしていない。また女上皇に帝位を簒奪されて淡路島に流されたりしていないし、武士を味方につけて上皇と戦争したりしていないし、(これより軽いのなら、まだあるけど)皇位継承問題に介入して南朝と北朝に分かれて60年間争ったりもしていない。
天皇は人殺しなんてしない[編集 ]
法と徳をもって民を治める天皇が殺人などという凶悪犯罪を起こしたことがないのは当たり前である。自分の乳母の子供を殴り殺したりしていないし、木登りをしている人を弓で撃ち殺したりしていないし、妊婦の腹を割いて胎児を取り出したりしていない。また、天皇になるために兄弟・親族を次々と抹殺したりしていない。もちろん政権を握るために大臣を暗殺したりしていない。
天皇は謀反なんてしない[編集 ]
天皇が国家に対し反逆を企て、治安を乱すなどということが...あれ?とりあえず上皇が都を平城京に戻そうとして反乱を起こしたり、鎌倉幕府に弓を引いたり、挙句の果てに負けて流罪にされたりしていない。島流しになっても全く反省せず何度も何度も反乱を起こすしつこい天皇がいたりすることもない。天皇御謀叛 などという不敬な日本語は存在しない。
天皇は親子で仲違いなんてしない[編集 ]
国民に正しい道徳を示す天皇は常に親孝行であり、また子供を大事にするのは当然である。息子を蔑ろにして死後に起こる戦乱の原因を作ったり、親を憎むあまり死後に不名誉な諡号を贈ったりしていない。
天皇は性的倒錯なんてしない[編集 ]
幼い頃から厳格な教育を受け、常に正しい倫理観を持つ天皇が変態性欲に目覚めることなどあるわけがない。全裸の女に馬の交尾を見せ、漏らした者を殺すことを快楽とする等の(削除) 全く意味の分からない (削除ここまで)変態的な性癖を有したりしていない。
天皇は猥褻画像を他人に送りつけたりなんてしない[編集 ]
天皇は趣味も全く健全なものであり、父親にチンポが大きく書かれた手紙を送りつけたりしていない。
天皇はみだりにエッチな事なんてしない[編集 ]
敬虔な仏教徒である天皇は仏の教えたる不邪淫戒を誰よりも理解しており、チンポの大きい仏僧を侍らせて皇位を譲ろうとしたり、自分が出家したにもかかわらず貴族の娘の家に夜這いに行って、恋敵と勘違いされた貴族に弓を放たれたりしていない。
天皇は強姦なんてしない[編集 ]
儀式の最中に我慢できなくなり、近くにいた女官を無理やり帳の中に入れて強姦したりしていない。断じて即位式の時に馬命婦とヤッたりしてない。
天皇は奇行なんてしない[編集 ]
心身ともに健康でなければ天皇に即位できないのは言うまでもないことである。屋根の上に登って遊んだり、突然奇声を発して周囲を困惑させたり、八咫鏡を見るために桐の箱をあけたりしていない。
天皇はアホな悪戯なんてしない[編集 ]
くだらない遊びにうつつを抜かす眉毛の太いアホの子が即位するようなことなどありえないことである。廊下で侍女を滑らせてやろうと滑りやすい石を撒いておいたら自分が滑って頭を強打して死亡したりしていない。老人を池に突き落としたりなんてしない。
天皇は人を恨んだりなんてしない[編集 ]
内乱に敗れて島流しにされた上皇が「悪魔になって天皇家を滅ぼしてやる」と喚いたりしない。もちろん怨霊になった天皇もいない。頭に焼け石を乗っけて憤死した天皇もいない。
天皇は乞食なんてしない[編集 ]
聖人君子であり有徳者である天皇には自然と人が集まってくるものであり、お金が足りなくなって自分の即位費用やあまつさえ父親の葬式代が出せなくなったりはしない。その結果先帝の遺体が炎天下の中放置されて蝿がたかったりしない。また戦乱の時代に貴族が天皇を見捨てて地方に逃げたりしない。お金を集めるために諸大名にお願いしたり、官位や自分のサイン色紙を売ってお金を集めたりしていない。
天皇は外国との戦争に負けたりなんてしない[編集 ]
天皇を戴く神国である日本が外国に戦争で負けるはずがない。白村江で唐と新羅の連合軍にボコボコにされたり、アメリカをはじめとする連合軍に占領されたりはしない。
天皇はウンコしない[編集 ]
当時の認識[編集 ]
上記に反する事実は一切存在しないとされたため、当然ながら歴史教科書には何も書かれていない。しかし、裁判中に「明治天皇は謀反人の子孫」と叫んだ幸徳秋水は日本人の怒りに触れて死刑になった。
とりあえず[編集 ]
関連項目[編集 ]