イワシ
イワシ(鰯・鰮)は、生物的に弱く、単体では生存の難しい魚類の総称である。
一般的に煮干として使われることの多いカタクチイワシやキビナゴ、熱帯魚として人気を博すネオンテトラ 、グッピー、映画『ファインディング・ニモ』で一躍有名となったカクレクマノミ、世界最小の魚として知られるポトコリヌス・スピニケプス等の小魚がイワシと呼ばれている。
分類[編集 ]
日本での分類[編集 ]
前述の通り、イワシという呼び名は生物的に弱い魚類の総称なので、明確な分類は存在しない。
しかし日本では便宜上、農林水産省によって以下のものをイワシと呼称するように定められている。
- 体長が30cm未満である
- 群れを作って生活する
- 自らを捕食する生物が20種以上存在する
曖昧な分類による社会問題[編集 ]
イワシと呼称する魚類の条件については一応上記のように定められてはいるものの実際にはあまり認知されておらず、主に水揚げに携わる漁師と卸売業者の間では「小さければイワシ」という考え方が主流であった。
しかし近年、相次ぐ食品の偽装表示事件によりデリケートになった多くの販売店より、「イワシと呼ぶべきでないものがイワシとして売買が成立してしまうと、結果として販売店での偽装表示になってしまうのではないか」との指摘が相次いだ。
事態を重く見た各地の漁業組合により2007年10月より日本の主要な漁港において水揚げされたイワシが本当にイワシと呼ぶべきものかを鑑定するイワシ専門の相談員を配置する動きが見られるようになった。
名前の由来[編集 ]
日本語における「イワシ」の語源には諸説あるが、その多くはイワシが弱い魚であるため「弱し(よわし)」が訛って「いわし」と
なったという考えが根底にある。
上記の諸説の中で最も有力なものとして魚好きの侍と忍者の立合いの話が挙げられる。
室町時代、魚好きで知られる若い侍と忍者がひょんなことから諍いを起こし、それぞれ刀に見立てた大魚と手裏剣に見立てた小魚を武器として立ち合った。
一昼夜戦った結果、侍が勝ち、「所詮は雑魚。小魚など弱し」と発言したものの侍が台詞の途中で噛んでしまい「弱し」が「いわし」に聞こえたことから「イワシ」となったと言われている。
また、カタクチイワシを漢字で表記すると、「片口鰯」となるのであるのだが、これは頭の方についている口としっぽの方についている口のうち、片方が目立つからであるのである。
また、余談だが立会いの際に刀に見立てて使われた大魚を太刀魚と呼ぶようになったのもこの頃からである。
利用[編集 ]
食用利用[編集 ]
日本を含む世界各地で漁獲され、多くは食用に利用される。
周囲を海に囲まれた島国である日本では、比較的手間がかからず且つ大量に獲れるイワシは貴重なタンパク源であり、特に重宝されてきた。
食用以外の利用[編集 ]
稀にメキシコ湾からの暖流に乗り、日本の領海では普段見ることのできない種類のイワシが水揚げされることがある。
その多くは観賞用として熱帯魚ショップに並び、アクアリウムマニアの目を楽しませることになる。
食用・観賞用に適さない一部のイワシは乾燥させた後、細かくすり潰したものを薬草と混ぜ、漢方の精神安定剤として用いられる。
これはイワシの骨に多く含まれるカルシウムがイライラ等の症状の抑制に効果的だという理由からである。
文化[編集 ]
日本の一部の地域ではイワシの頭には魔除けの効果があると言われており、節分が近くなると家の門の前にイワシの頭を山盛りにした皿を置く風習が残っている。
これには鬼がこれを(というかこのような狂った行いをする家人を)恐れて家へ近づかなくなるという意味がある。
また、上記の風習より生まれた「鰯の頭も信心から」ということわざもあり、これには「どんなに周囲からつまらないと思われている人間でも信仰心によっては恐ろしい人間へと変わる」という意味がある。