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2010年04月21日
【5/7追記】「公共の水を取り戻すネットワーク」グローバル戦略セミナー報告
「公共の水を取り戻すネットワーク」グローバル戦略セミナー参加報告
堀内葵(AMネット事務局長)
2010年2月1日から3日にかけて、「公共の水を取り戻す(RPW)ネットワーク」が主催したグローバル戦略セミナーのために、80人近いコミュニティー活動家、公共水道事業者、労働組合員が30カ国からブリュッセル(ベルギー)に集まりました。日本からは全日本水道労働組合近畿東海地方本部書記長の辻谷貴文氏とAMネットの堀内が参加しました。
RPWネットワークは「水を公共の手に」を合言葉に2005年秋に創設されたネットワークです。今回のセミナーは、民主化や事業者同士および他セクターとの恊働(パブリック・パブリック・パートナーシップ、公公連携)によって公営水道の役割を強化するために必要な知識共有の場です。中でも、研究やキャンペーン、次の共同作業のステップの戦略について重点的に議論されました。すでに加速的に進んでいる水危機をさらに悪化させている気候変動の影響もテーマに含まれていました。
全体会合の中で、オー・ド・パリ(フランス・パリの公営水道企業)のディレクターであるアン・ル・ストラ氏は、パリで新たに設立された公営水道企業のポジティヴな結果について発表しました。パリの水供給は、長年の私営化を経て、2010年1月1日をもって再公営化されています。
国際公務労連研究部門(PSIRU)のディレクターであるデヴィッド・ホール氏は、水の私営化に反対する動きが世界中で起きていることを豊富な事例を使って発表しました。しかし同時に、多くの私営化の失敗にも関わらず、私営化は政治的課題から外されてはいない、と警告していました。
このことは、地域情勢の発表の中でも確認されました。アフリカ、ヨーロッパ、アジア、そして南北アメリカでは、多くの政府が水の私営化を後押ししており、しばしば国際金融機関から支援を受けています。しかし、この5年の間に水の私営化への代替案を推進する重要な成果があったことは明らかです。ラテンアメリカなどのいくつかの地域の政府は水の私営化を取りやめ、公による水供給という前進的で新しいモデルを推進しています。北側の開発援助資金提供者(ドナー)は水の私営化に肯定的な言説を縮小せざるをえません。そうしたドナーは公公連携のような代替案を徐々に取り入れ始めています。
これらの展開におけるRPWネットワークと水の正義を求める地域的なネットワークの役割は高く評価されています。今回のセミナーでは、これまでの前進と主要な分野における新たな挑戦についての共通の理解を得るためにワークショップが開催されました。これらはすべて次のステップの戦略の基礎となるものです。9つのワークショップの中で、参加者は将来の共同作業に向けた具体的な戦略と計画を練り上げました。「公公連携を推進する」など、共通のアクションを実施するためにいくつかのワーキンググループが新たに設立されました。
開催されたワークショップは以下の9つです。
(1)民主化経験:公公連携と再公営化
(2)水への人権、グローバルコモンズとしての水を守ること
(3)新たな形の水の私営化および商業化
(4)国および地域レベルでの公公連携プラットフォーム
(5)水への人権の実現
(6)オルタナティブ、集団的学び、アウトリーチの位置づけ
(7)公営水道への公的支出
(8)グローバル水事業者パートナーシップ連盟(GWOPA)について
(9)農村部の水危機・水資源をめぐる抗争
RPWネットワークはこれらのワークショップの成果を活用しつつ、共同作業計画を具体化すること、および次の5つの優先課題について合意されました。
・EU水資金(公公連携への資金)、GWOPA(公公連携を推進するグローバル・ガバナンス)のような、直近の、および戦略的な政治的機会に向けた活動を行なうこと
・代替案の位置づけや集合的学びのプロセスを構築すること
・ローカル/ナショナルおよびリージョナルなレベルでの勃興しつつある具体的な代替案を支援すること
・RPWネットワークがその課題を前進させることのできる主要なイベントを見極めること
・テーマ別ワーキンググループの努力を支援するための「ネットワーク・サポート/ファシリテート・チーム」を創設すること
RPWネットワークは水の私営化への代替案を推進することに全力を傾けています。水の私営化に抵抗するためのより広いグローバルな運動の一部として、そして、すべての人に水を届けるための開かれた水平的なネットワークです。
日本でもこのような議論を盛り上げていく必要性を感じたセミナーでした。幸い、AMネットが各地域のNGOや研究者の方と培ってきたネットワークで水問題に取り組もうという動きが出てきています。ここに、さらに多くの方々が加わってくれることを望みます。そして、世界中の前進的な公共水道事業社、労働組合員、活動家、研究者が議論に参加してくれることを期待しています。
より詳しい情報は、岸本聡子さん(トランスナショナル研究所)までご連絡ください。
satoko[@]tni.org
以下のウェブサイトもご参照ください。
http://www.waterjustice.org/
http://www.tni.org/project/water-justice
セミナーでの議論に触れるには、以下のビデオをご覧になることをお進めします。
ネットワークのなかでも活動的なメンバーが自然、役割、「成果」そしてRPWネットワークが将来抱える困難について議論しています。
Round Table Discussion (23分)
http://www.tni.org/multimedia/reclaiming-public-water-10-years-after-water-war
短いバージョンも用意されています(6分)。
http://www.tni.org/multimedia/reclaiming-public-water-10-years-after-water-war-short-version
ラウンドテーブル・ディスカッションはセミナーの終了直後に行なわれました。
また、中国、フィリピン、タンザニア、インドから参加した活動家のインタビューを4本収録しています。
http://tni.blip.tv/
インタビューは、彼ら彼女らが市民、労働者、コミュニティーと共同でいかにして地域での代替案を確立したかを描き出しています。
その他に、チェンジ・マネジメント・チーム(インド・タミルナドゥ州)から活気にあふれ示唆に富むビデオ・メッセージも届いています。これはセミナーの冒頭で上映されました。チェンジ・マネジメント・チームは、Center Of Excellence for Change(CEC、変革のための中心)というナショナル・プラットフォームを設立しました。
http://www.tni.org/multimedia/message-tamil-nadu
http://www.waterandclimatefuture.com/
堀内葵(AMネット事務局長)
2010年2月1日から3日にかけて、「公共の水を取り戻す(RPW)ネットワーク」が主催したグローバル戦略セミナーのために、80人近いコミュニティー活動家、公共水道事業者、労働組合員が30カ国からブリュッセル(ベルギー)に集まりました。日本からは全日本水道労働組合近畿東海地方本部書記長の辻谷貴文氏とAMネットの堀内が参加しました。
RPWネットワークは「水を公共の手に」を合言葉に2005年秋に創設されたネットワークです。今回のセミナーは、民主化や事業者同士および他セクターとの恊働(パブリック・パブリック・パートナーシップ、公公連携)によって公営水道の役割を強化するために必要な知識共有の場です。中でも、研究やキャンペーン、次の共同作業のステップの戦略について重点的に議論されました。すでに加速的に進んでいる水危機をさらに悪化させている気候変動の影響もテーマに含まれていました。
全体会合の中で、オー・ド・パリ(フランス・パリの公営水道企業)のディレクターであるアン・ル・ストラ氏は、パリで新たに設立された公営水道企業のポジティヴな結果について発表しました。パリの水供給は、長年の私営化を経て、2010年1月1日をもって再公営化されています。
国際公務労連研究部門(PSIRU)のディレクターであるデヴィッド・ホール氏は、水の私営化に反対する動きが世界中で起きていることを豊富な事例を使って発表しました。しかし同時に、多くの私営化の失敗にも関わらず、私営化は政治的課題から外されてはいない、と警告していました。
このことは、地域情勢の発表の中でも確認されました。アフリカ、ヨーロッパ、アジア、そして南北アメリカでは、多くの政府が水の私営化を後押ししており、しばしば国際金融機関から支援を受けています。しかし、この5年の間に水の私営化への代替案を推進する重要な成果があったことは明らかです。ラテンアメリカなどのいくつかの地域の政府は水の私営化を取りやめ、公による水供給という前進的で新しいモデルを推進しています。北側の開発援助資金提供者(ドナー)は水の私営化に肯定的な言説を縮小せざるをえません。そうしたドナーは公公連携のような代替案を徐々に取り入れ始めています。
これらの展開におけるRPWネットワークと水の正義を求める地域的なネットワークの役割は高く評価されています。今回のセミナーでは、これまでの前進と主要な分野における新たな挑戦についての共通の理解を得るためにワークショップが開催されました。これらはすべて次のステップの戦略の基礎となるものです。9つのワークショップの中で、参加者は将来の共同作業に向けた具体的な戦略と計画を練り上げました。「公公連携を推進する」など、共通のアクションを実施するためにいくつかのワーキンググループが新たに設立されました。
開催されたワークショップは以下の9つです。
(1)民主化経験:公公連携と再公営化
(2)水への人権、グローバルコモンズとしての水を守ること
(3)新たな形の水の私営化および商業化
(4)国および地域レベルでの公公連携プラットフォーム
(5)水への人権の実現
(6)オルタナティブ、集団的学び、アウトリーチの位置づけ
(7)公営水道への公的支出
(8)グローバル水事業者パートナーシップ連盟(GWOPA)について
(9)農村部の水危機・水資源をめぐる抗争
RPWネットワークはこれらのワークショップの成果を活用しつつ、共同作業計画を具体化すること、および次の5つの優先課題について合意されました。
・EU水資金(公公連携への資金)、GWOPA(公公連携を推進するグローバル・ガバナンス)のような、直近の、および戦略的な政治的機会に向けた活動を行なうこと
・代替案の位置づけや集合的学びのプロセスを構築すること
・ローカル/ナショナルおよびリージョナルなレベルでの勃興しつつある具体的な代替案を支援すること
・RPWネットワークがその課題を前進させることのできる主要なイベントを見極めること
・テーマ別ワーキンググループの努力を支援するための「ネットワーク・サポート/ファシリテート・チーム」を創設すること
RPWネットワークは水の私営化への代替案を推進することに全力を傾けています。水の私営化に抵抗するためのより広いグローバルな運動の一部として、そして、すべての人に水を届けるための開かれた水平的なネットワークです。
日本でもこのような議論を盛り上げていく必要性を感じたセミナーでした。幸い、AMネットが各地域のNGOや研究者の方と培ってきたネットワークで水問題に取り組もうという動きが出てきています。ここに、さらに多くの方々が加わってくれることを望みます。そして、世界中の前進的な公共水道事業社、労働組合員、活動家、研究者が議論に参加してくれることを期待しています。
より詳しい情報は、岸本聡子さん(トランスナショナル研究所)までご連絡ください。
satoko[@]tni.org
以下のウェブサイトもご参照ください。
http://www.waterjustice.org/
http://www.tni.org/project/water-justice
セミナーでの議論に触れるには、以下のビデオをご覧になることをお進めします。
ネットワークのなかでも活動的なメンバーが自然、役割、「成果」そしてRPWネットワークが将来抱える困難について議論しています。
Round Table Discussion (23分)
http://www.tni.org/multimedia/reclaiming-public-water-10-years-after-water-war
短いバージョンも用意されています(6分)。
http://www.tni.org/multimedia/reclaiming-public-water-10-years-after-water-war-short-version
ラウンドテーブル・ディスカッションはセミナーの終了直後に行なわれました。
また、中国、フィリピン、タンザニア、インドから参加した活動家のインタビューを4本収録しています。
http://tni.blip.tv/
インタビューは、彼ら彼女らが市民、労働者、コミュニティーと共同でいかにして地域での代替案を確立したかを描き出しています。
その他に、チェンジ・マネジメント・チーム(インド・タミルナドゥ州)から活気にあふれ示唆に富むビデオ・メッセージも届いています。これはセミナーの冒頭で上映されました。チェンジ・マネジメント・チームは、Center Of Excellence for Change(CEC、変革のための中心)というナショナル・プラットフォームを設立しました。
http://www.tni.org/multimedia/message-tamil-nadu
http://www.waterandclimatefuture.com/
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