博士
おやおや、少し暗くなってきたの。それじゃわしの天文台にいってみようかの。秋から冬にかけては空気がすんでおる。とてもきれいに星が見えるぞ。
りか
わあ、うれしい。星ってやっぱりロマンチックよね。
ゆうき
そうだね。
でも博士、星と「循環型社会」って関係があるの?
博士
そこが大事なところじゃが、とにかく見てみることじゃの。「論より証拠」なんて言葉は聞いたことがあるかの。まず観察して、それから考えることじゃ。考えもつかないようなことが自然の中にはたくさんあるんじゃよ。
さあ、着いたぞ。さっそく見てみることにしよう。
りか
ずいぶんおもしろい造りの建物だわ。
博士
二人ともこっちに来なさい。ほれこの望遠鏡は特別なんじゃ。わしの発明した装置がいろいろ付いておるからの。さて、まずは月から観察してみよう。
ゆうき
学校の望遠鏡でも見たことがあるけど、でこぼこばかりだね。丸いのはクレーターだし。太陽があたって輝いているのに、なんか元気がないみたいに見えるよ。
りか
昔の人はウサギがお餅をついているところだって想像していたって本で読んだことがあるけど、ウサギはいそうにないわね。
博士
この間、月に行ったアポロ宇宙船の話をしたじゃろう。宇宙飛行士たちは生き物や、生き物がいた証拠を探したんじゃが、見つけることは出来んじゃった。地球にたくさんある水もなかった。もちろん、空気もない。体を守ってくれる宇宙服がなければあっという間に命がなくなる死の世界なんじゃ。
りか
かぐや姫の話だってあるし、映画だって小説だって、月がやさしく語りかけてくれるし、空に輝いている月はロマンチックなのに、本当の姿は死の世界だなんて、悲しくなっちゃうわ。
博士
そこなんじゃよ。なぜ月が死の世界で、地球にはこんなにたくさんの生物が生きておるのか。宇宙の中で一番近い星である月と、地球はなぜ違っているのか。ここに生命の秘密と、循環型社会を考える大きなヒントがあるんじゃ。
そこで質問じゃが、月の次に地球に近いのはなんという星かな。
ゆうき
火星かな、金星かな。
博士
そう、太陽を回る惑星で地球より太陽に近いのが金星で、外側にあるのが火星じゃ。中でも金星は地球とほとんど同じ大きさで、地球の兄弟星と呼ばれておるんじゃ。まず金星から見てみよう。
りか
小さいわね。ぼんやりしてて月みたいにはっきり見えないわ。
博士
それじゃあスイッチを切り替えて、ウルトラズームシステムで見てみるかな。
りか
なんなのウルトラズームシステムって?
博士
金星や火星には既にいろいろな探査衛星が飛行しておる。貴重なデータをたくさん地球に送ってきてくれた。これをコンピュータで処理して、望遠鏡の中に合成してくれるのじゃ。遠い世界でも、遠い過去でも、まるで宇宙船で旅するように見ることができる。とにかく、理屈よりも見ることが大事じゃ。切り替えるぞ。
ゆうき
うわー!! これが金星なの。雲ばかりね。何も見えない。
博士
地球の温度は平均すると15度、ところがこの金星は表面の温度が480度もあるんじゃ。もう少し近づいて見よう。
ゆうき
表面がどろどろだ!!
博士
大気はほとんどが二酸化炭素で、酸素はないんじゃ。月のように冷たくはないが、いささか暑すぎるかの。昔の人が想像した地獄とはこんな世界だったのかもしれん。とにかく、ここも生命の住めない場所であることははっきりしておる。
りか
金星は美の女神、英語ではビーナスって呼ばれてるのよ。女の子の憧れの星が熱い地獄のような場所だなんて、どんどんロマンが壊れてゆくわ。
博士
すまんのう、りかちゃんの夢を壊すつもりはないんじゃが、現実は現実じゃからもう少しガマンしてくれんかの。
りか
それじゃあ、火星はどうなの?
博士
火星は赤い星じゃ。これは肉眼でもはっきりわかる。昔の人は赤い血を想像して、戦いの神として恐れたといわれておる。直径は地球の二分の一じゃが、金星よりも地球に似ているんじゃ。大気は二酸化炭素ばかりで、酸素はない。気温は氷点下58度。寒い寒い世界なんじゃが、水がないから氷も雪もない。ごらん、赤い砂漠のような世界じゃ。いつも砂嵐が吹き荒れておるんじゃ。
ゆうき
火星には生命がいるのかな? 火星探査計画もあるよね。
博士
ゆうきくんが大人になるころには、もしかすると、アポロ計画と同じように、火星に人を送り込む計画が実現しておるかも知れんな。そしたら、生命がいるかいないかははっきりとするじゃろ。
りか
わたしも行ってみたい!!
博士
そうか、火星ならまだロマンがあるかの。
ゆうき
火星人がいたりするんじゃないのかな。
博士
とにかく現在わかっているのは、地球以外の星に生命は見つかっていないということじゃ。
ゆうき
地球には青い海もあるし、空気もあるし、火星や金星とはぜんぜん違っているからかな。
博士
確かに現在の地球を見れば生命がいるのに不思議はない。しかし、地球が出来たばかりのころは、想像もつかないような別の世界だったんじゃ。それじゃ、スイッチを過去に切り替えて、46億年前の地球に行ってみよう。