「マレーシア・イスカンダル開発地域の2025年低炭素社会実行計画」がマレーシア政府により承認されました
(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時配付)
独立行政法人国立環境研究所
社会環境システム研究センター
主任研究員:藤野 純一
准特別研究員:須田 真依子
持続可能な発展を目指すイスカンダル開発地域の2025年の二酸化炭素排出量を、現状推移ケースに比べて40%削減する低炭素社会実行計画の策定を、日本の低炭素社会実行計画づくりの経験を生かして学術的側面から支援しました。
地域レベル(日本の県レベルに相当)の実際的な低炭素社会計画づくりとしてはASEAN諸国で初めての例で、アジア諸国の低炭素都市づくりのモデルケースとなることが期待されています。
マレーシア政府外局のイスカンダル地域開発庁が主催。
イスカンダル経済特区に関わる公共団体の活動や戦略立案、投資をモニタリング、調整する機関。
1 事業概要
本プロジェクトでは、現地の研究機関であるマレーシア工科大学、行政機関であるイスカンダル地域開発庁と日本の研究機関である京都大学、岡山大学、国立環境研究所が協力して、科学技術振興機構(JST)と国際協力機構(JICA)による地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)の支援により、2011年からマレーシア・イスカンダル開発地域を対象とした低炭素社会シナリオ作りを行ってきました。
今回のAIC承認によって、ようやく制度的な裏付けを得ることになります。産業、商業、農林業、家庭、交通、土地利用など、その地域からの温室効果ガス排出の起因となる全分野を横断し、それらの社会経済的活動の将来シナリオとそれに起因する温室効果ガス排出およびその抑制方策を統合的かつ定量的な方法で解析し、さらにその結果に基づき低炭素社会実行計画を策定・実施する例としては、ASEAN諸国初の取り組みとなります。
国立環境研究所はマレーシア工科大学と共同で、昨年11月にポーランド・ワルシャワで行われた気候変動枠組条約第19回締約国会議(COP19)および京都議定書第9回締約国会合(CMP9)においてサイドイベントを行い、本研究の最新の成果について発表しました。交渉をサポートするべく、アジアから、低炭素社会に向けた具体的な道筋および実行プロジェクトについて報告しました。
2 イスカンダル開発地域の概要
マレーシア・イスカンダル開発地域は、マレー半島の最南端に位置し、人口140万人、クアラルンプール地域に次ぐ第二の経済都市圏です。マレーシアは、2006年にこの地域を経済特区に指定し、総合的な地域開発事業を行ってきましたが、この開発に伴う温室効果ガス排出量の急速な増大が危惧されていました。そこで、日本で培ってきた低炭素社会シナリオ作りの経験を、当該地域に適用させることは、アジアの発展、さらにはイスラム教国家でもあるマレーシアであるため中東の発展に、低炭素社会の視点を入れ込むのに有効だと考えています。
3 これまでの取り組み
「マレーシア・イスカンダル開発地域における2025年に向けた低炭素社会ブループリント」(以下「ブループリント」という。)の政策決定者向け要旨は、2012年11月から12月にカタール・ドーハで行われた気候変動枠組条約第18回締約国会議(COP18)および京都議定書第8回締約国会合(CMP8)において、イスカンダル開発庁のイスマイル長官自らが発表し、世界各国の温暖化政策担当者および研究者から高い評価を得ました。
また、同年12月11日ナジブ・マレーシア首相は、ブループリントを説明する記者会見を行い、「ブループリントは、2020年までに2005年比で温室効果ガス排出強度を40%削減するというマレーシアの取り組みに合致するもの」、「イスカンダル低炭素社会ブループリントが、マレーシアへの投資家の関心をさらに促すだろう」と述べ、マレーシア国内のテレビおよび新聞に大きく報道されました。
(参考)国立環境研究所の低炭素社会に向けた貢献
国立環境研究所は、2004年から日本低炭素社会研究プロジェクトの一環として、京都大学や東京大学を含む約60名の研究者とともに2050年までに二酸化炭素排出量を70%から80%削減させるようなシナリオ作りを行い、日本の温室効果ガス排出量目標値づくりに貢献してきました。現在、日本の2020年、2030年を見据えたエネルギー・温暖化シナリオ作りを行っています。
また、2009年からアジア低炭素社会研究プロジェクトを展開し、マレーシアを含むアジア各国(中国、インド、韓国、タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナム、カンボジア、バングラディッシュ等)、各地域(アーメダバード、ボパール、プトラジャヤ、コンケン等)の低炭素シナリオ作りを現地の研究者や政策決定者と行っています。
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2014年3月31日(月)JSTプレスリリース
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英語版(English)
31 April 2014 JST Press release
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