2025年6月3日最高裁判決を受けて情報公開請求訴訟の審理充実を求める会長声明


最高裁判所は、2025年6月3日、 警察庁の保有する保有個人情報管理簿に記録された情報に関する国を被告とする情報公開請求訴訟につき、一体的に不開示情報該当性の判断をした東京高裁判決を破棄し、差し戻す判決(以下「本判決」という。)をした。


本判決は、不開示部分に情報として可分なものが含まれると推測される場合には、原則として公開するという情報公開法の趣旨に照らし、国に対して、区分された情報ごとにその概要と不開示事由該当性の説明を十分に尽くすよう、裁判所が適切に釈明権を行使することを求めるものである。


宇賀克也裁判長は、そのような国による説明の具体的方法として、できるだけ詳細なヴォーン・インデックス(不開示とした情報の項目と不開示とした理由について説明した文書)を提出すべきとの意見(以下「宇賀意見」という。)を述べている。


当連合会は、従前から情報公開請求事件の審理の充実のため、ヴォーン・インデックスを活用するよう求める意見を述べてきたが、実務上定着してこなかった。当連合会は、本判決及びこれに付された宇賀意見を受けて、改めて、国の行政機関及び地方自治体(以下「行政機関等」という。)並びに裁判所に対し、情報公開請求訴訟の審理の充実を求める。具体的には、行政機関等に対しては、原則としてヴォーン・インデックスにより情報の区分及び区分ごとの不開示事由を明らかにすることを求める。また、裁判所に対しては、ヴォーン・インデックスの提出がない場合には行政機関等に対して釈明権を行使してその提出を積極的に求め、これを実務上定着させることを求める。


併せて、当連合会は、不開示部分を実際に見分することのできない裁判所において行政機関等による不開示部分の区切り方の合理性を判断することには相当に困難な面があること、2009年1月15日最高裁決定が立法によればインカメラ審理(裁判官が不開示情報を見て審理することを可能とする制度)を採用できると認めたことを踏まえ、2006年2月17日付け「情報公開法の改正に関する意見書」及び2010年4月30日付け「「情報公開制度の改正の方向性について」に対する意見」で提言し、2011年の情報公開法改正法案(後に廃案)に盛り込まれたインカメラ審理を導入する法改正を行うことを改めて求める。



2025年(令和7年)9月19日

日本弁護士連合会
会長 渕上 玲子

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