憲法記念日を迎えるに当たっての会長談話


本日は、日本国憲法が施行されてから78年目の憲法記念日です。


日本国憲法は、国民主権、基本的人権の尊重、恒久平和主義を基本原理とし、憲法第9条に基づき戦争が回避されてきました。


しかし、近年、政府が恒久平和主義に背を向けた方向に進んでいることが懸念されます。政府は、2015年9月に集団的自衛権の行使等を容認する閣議決定に基づいて安全保障法制関連法を成立させました。2022年12月には新たな国家安全保障戦略、国家防衛戦略及び防衛力整備計画を閣議決定し、敵基地攻撃能力ないし反撃能力の保有に向けた取組を進めています。このような動きにあわせて、防衛費も急増しています。


また、政府は、本年3月7日、現在の日本学術会議を廃止して特殊法人として新設する改正法案を閣議決定しました。この改正法案では、日本学術会議の使命が「わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献」すること等にあるとうたった格調高い前文が削除され、政府を含む外部の介入を許容する新たな仕組みが幾重にも盛り込まれています。これは、日本学術会議が科学者コミュニティの戦争協力への反省を背景として設立されたという経緯を軽視し、学問の自由(憲法第23条)に由来する日本学術会議の独立性・自律性を損なうおそれを孕むものです。


当連合会は、1950年5月に広島で開催された全国弁護士平和大会において、「日本国憲法は世界に率先して戦争を放棄した。われらはこの崇高な精神に徹して、地上からの戦争の害悪を根絶し、各個人が人種国籍を超越し、自由平等で且つ欠乏と恐怖のない平和な世界の実現を期する」と宣言して以来、一貫して、恒久平和主義の堅持に尽力してきました。


今年は、戦後80年を迎えます。平和は基本的人権の基礎であり、戦争は最大の人権侵害です。当連合会は、引き続き、日本国憲法の基本理念を実現するための活動を積極的に行ってまいります。



2025年(令和7年)5月3日

日本弁護士連合会
会長 渕上 玲子

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