阪神・淡路大震災から30年を迎えての会長談話
1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災から30年を迎えました。本震災は震度7を記録する都市部の直下型地震で、死者は6434人に上り、住家被害は全半壊約25万棟に及ぶなど深刻な被害をもたらしました。兵庫県南部を中心に大阪府も含めて被害は広域に及びましたが、30年の歳月を経て、震災の爪痕は消えて、復興を成し遂げたようにも見えます。
しかし、震災をきっかけに生活困窮に陥った人々は少なくない上、神戸を中心とする地域経済圏が受けたダメージは未だ完全な回復には至っておらず、震災障がい者問題、借上復興住宅問題、災害援護資金貸付の返済免除問題、過大な都市再開発問題など、今なお影を落としている現実もあります。
阪神・淡路大震災では、神戸弁護士会(現・兵庫県弁護士会)が被災地弁護士会として法律相談を始め様々な活動を展開し、罹災都市借地借家臨時処理法に基づく紛争解決や被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法(被災マンション法)の創設など、新たな法的課題に取り組みました。また、全国の弁護士は被災地に駆け付けて応援ボランティアとして相談支援を行いました。近畿弁護士会連合会は、法律相談Q&Aの作成や裁判外紛争解決手続(ADR)を展開するなどし、当連合会も阪神・淡路大震災対策本部を設置して後方支援に力を尽くしました。
こうした一連の取組を機運として、当連合会は2007年4月1日に災害復興支援委員会を設置し、全国各地で発生した災害の場面で多様な法的支援を恒常的に行い、被災者生活再建支援法の改正運動など立法や法改正に向けた活動にも注力してきました。
また、こうした体制の下、改めて令和6年能登半島地震を始め近時の被災地をみると、災害救助法の硬直的な運用、災害ボランティアや災害ケースマネジメントの担い手の不足、被災者生活再建支援法や総合法律支援法の改正の未達など、未解決の課題が山積していることにも気付かされます。
阪神・淡路大震災における被災者支援活動を通じて得られた最大の教訓は、一人一人の人権を回復してしっかり生活再建を実現する「人間の復興」を最優先することでした。当連合会は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする弁護士の団体として、阪神・淡路大震災から30年の節目に当たり、改めて「人間の復興」の実現に向けて、災害により被害を受けた方々への支援活動に全力で取り組む所存です。
2025年(令和7年)1月17日
日本弁護士連合会
会長 渕上 玲子