150th ANNIVERSARY

ご挨拶

渕上玲子氏

2025年(令和7年)11月
日本弁護士連合会会長

渕上玲子

2026年(令和8年)2月22日に、弁護士制度が150年を迎えます。1876年(明治9年)の同日に代言人規則が公布され、弁護士の前身と言われる代言人が誕生しました。

2025年(令和7年)2月1日に、佐賀県が主催する江藤新平の没後150年を記念した式典に参加しました(九州弁護士会連合会の行事が同県で開催されたご縁で招待されたものです。)。江藤新平は1871年(明治4年)に司法省の初代長官となり、「司法職務定制」を定め、それまで府県の権限で個々に行われてきた裁判事務を司法省に統一するとともに、全国への裁判所設置や判事・検事・代言人(弁護士)制度を導入した人物です。また、同氏は、立法、行政、司法がそれぞれ独立することによって権力の濫用を防ぎ、国民の権利と自由を保障する「三権分立」の仕組を提言したとされています。

代言人は、江藤新平の没後、1876年(明治9年)に公布された代言人規則により誕生したものですが、私たち弁護士の生みの親として、弁護士制度が100年を迎えた1976年(昭和51年)に日弁連が刊行した記念誌「弁護士百年」においても、江藤新平を最初に取り上げていたことから、改めて紹介させていただきます。

その大著「弁護士百年」から50年を経て、司法制度は大きく変容し、デジタル化という新しい波が押し寄せています。このたび150年を迎えるにあたり、記念企画としてウェブサイトに「弁護士制度150年特設ページ」を公開して、多くの皆様にその歴史を知っていただくこととしたのも新しい時代にふさわしいと考えてのことです。「弁護士百年」で取り上げたものも含めて、この150年の弁護士の歩みをご覧いただければと思います。

この特設ページでは、直近の50年の歩みとして、「法の支配を社会の隅々に」という理念のもとに行われた司法制度改革や、法科大学院制度を中核とする法曹養成制度改革、裁判員裁判の導入を含めた刑事司法改革などをテーマとして取り上げ、社会の変化に伴う法律や制度の変遷、経済の発展や国際化による弁護士の活動領域の拡大や弁護士像の変化などについて、特集という形でご紹介しています。

特集で取り上げたテーマのうち、取調べの全過程における録音・録画制度の導入や、弁護人の立会権など、未だに取り残された課題がありますが、なかでも、1983年(昭和58年)以降、免田事件を含む死刑再審4事件に再審無罪判決が出されたにもかかわらず、再審法改正がされないまま40年以上が経過しています。2024年(令和6年)はいわゆる袴田事件においても再審無罪判決が出され、2025年(令和7年)には再審法改正案が国会に上程されるなど、山場を迎えており、早急な改正が望まれるところです。

また、年表をご覧いただくと、この150年の前半は戦争が繰り返されていたことがわかります。2025年(令和7年)は戦後80年にあたり、同年6月に開催した日弁連定期総会では、「被爆80年に際して「核兵器のない世界」の実現を目指す決議」を採択し、また、12月に長崎市で開催する人権擁護大会では、戦争は最大の人権侵害であるとして、恒久平和主義を基本原理とする日本国憲法の価値を改めて確認する宣言を採択すべく審議予定です。

この50年で、日弁連における人権関連の委員会等は3倍以上増え、近年では、ジェンダー平等や多様性を尊重する社会の実現にも大きな役割を果たしています。日本最大の人権擁護団体である日弁連は、これからもさまざまな人権課題に取り組んでいかなければなりません。

これから先の50年、100年も、基本的人権の擁護と社会正義の実現を旨とする弁護士が法の支配の担い手として、十全な活躍ができるよう祈念して、ご挨拶とさせていただきます。

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