中国の「食糧安全保障」:穀物の基本自給堅持を強調しつつも、実態としては輸入重視が顕著に
世界人口の5.5分の1、世界の穀物生産の5分の1を占め、その動向が世界に大きな影響を及ぼす中国の2020年の食糧生産・輸入の動向と、食糧安全保障戦略を分析しました(中国では、「食糧」には穀物のほか豆類とイモ類が含まれます)。
昨年は、新型コロナの農業生産への悪影響が懸念されたほか、洪水や病虫害の多発もあったものの、二期作奨励、休耕の緩和等の作付面積増加策等により、史上最高の食糧生産が確保されました。一方、アフリカ豚熱からの養豚の急回復による飼料需要急増に生産回復が追いつかなかったトウモロコシに加え、小麦も過去最大の輸入量となりました。
2013年以降、中国政府は、食用食糧の絶対安全保障(完全自給)と穀物全体の「基本自給」を掲げつつ、食糧備蓄重視等と併せ、食糧全体は「適度な輸入」も戦略要素としており、大豆も含め、今後も輸入量増加や大きな変動に注意が必要です。
(2020年) 前年比 生産量
(2020年)
前年比 輸入量
(2020年) 前年比 安全保障・自給目標
史上最高 1億4,262万トン 28.0%増
史上最高 食用食糧については「絶対安全保障の確保」(完全自給)注(1)
史上2位 3,579万トン 99.8%増
史上最高 穀物は「基本自給」注(1)
史上最高 838万トン 140.1%増
史上最高 自給率100%注(2)
史上最高 穀物は「基本自給」注(1)
史上最高 1億0,033万トン 13.3%増
史上最高 食用食糧については「絶対安全保障の確保」(完全自給)注(1)
注(1) 2013年の中国共産党中央農村工作会議で、「穀物の基本自給と食用食糧の絶対安全保障の確保」が定められている。大量輸入が常態化している大豆も「食用は国内産により確保」と説明している。
(2) 2016年10月の「全国農業現代化規画(2016-2020)」で、「小麦とコメの自給率を100%とする」とされた。中国農業農村部は、小麦について、昨年のトウモロコシ不足の中で、「(相当量発生している)保管期限を超過した在庫小麦の飼料への充当は何ら問題ない」と述べるととともに、(国内産での自給は確保できており、あくまで)「輸入しているのは、調整材料としての高品質麦等」であると説明している。
この成果の詳細については、農林水産政策研究所Web サイトをご覧ください(以下参照)。
- 農林水産政策研究所レビュー No.101(2021年5月)
https://www.maff.go.jp/primaff/kanko/review/attach/pdf/210531_pr101_04.pdf
PDF版ダウンロード(PDF:570KB)
お問合せ先
企画広報室広報資料課
ダイヤルイン:03-6737-9012
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