VOL.203 MAY 2025
[SPRING SPECIAL ISSUE] VARIOUS VARIETIES OF CHERRY BLOSSOMS IN JAPAN (PART 2): ADMIRING THE CHERRY BLOSSOMS AT CASTLES IN JAPAN
復興が進む熊本城の桜を楽しむ
熊本城公園の行幸坂から見た桜と熊本城。
熊本城は、城下町として栄えた熊本市の象徴的な存在であり、春には桜が咲き誇る名所として知られる。熊本城を管理する担当に話を聴いた。
熊本城は、九州地方の中央、熊本県の北西部、有明海に面した熊本市の中心部に建っている。
熊本城は、16世紀後半から17世紀の始めにかけて活躍した加藤 清正1によって1607年に築かれた名城であり、当時の築城技術の粋を集めた堅固な防御構造を持つ城だ。中でも、敵の侵入を防ぐために下から上に向かうほど傾斜が急になる「武者返し」と呼ばれる石垣は、熊本城の特徴の一つとして挙げられる。
熊本城を擁する熊本城公園には多くの桜が咲き誇る。熊本市役所・熊本城総合事務所の担当者はその見どころについてこう話す。
「熊本城で最も有名なフォトスポットの一つが、南側にある行幸坂です。ここにはソメイヨシノの桜並木をご覧いただけます。また、ソメイヨシノは天守閣前にも植えられており、天守閣を背景に美しい桜を撮影できるため、多くの人が訪れます」
また、天守閣の西側にある二の丸広場から西大手門へ向かう通りでは、ソメイヨシノがトンネルのように咲き誇り、春の風景をより華やかに演出し、花を鑑賞しながら散策するのによいという。
熊本城周辺には、約560本の桜が植えられている。ソメイヨシノを中心に、ヤマザクラ、チハラザクラ、ギョイコウ2などを見ることができる。
「チハラザクラは熊本発祥のヤマザクラの一種で、地元の人々にも愛されている桜で白い花びらが特徴です。加藤清正像のそばに植えられており、人気のフォトスポットになっています。また三の丸公園では、黄緑色の花を咲かせるギョイコウも見ることができます」と担当者は語る。
Photo: 熊本城総合事務所
熊本城は2016年の熊本地震で甚大な被害を受けた。その後、復旧が進められ、2021年には天守閣の復旧が完了した。それ以外の場所では依然として復旧作業が続けられているが、多くのエリアが一般公開されている。
「熊本城の被災状況や復旧の過程も見学できる特別公開を実施しています。桜の美しさはもちろんですが、熊本地震からの復興が進む様子にも注目してほしいです」と事務所の担当者は語る。
Photo: 熊本城総合事務所
毎年、春には「春のくまもとお城まつり」が開催される。期間中は、太鼓の演奏などが披露され、歴史と文化を体験できる。また、3月下旬から4月下旬の夜間には桜のライトアップが行われ、幻想的な雰囲気の中で花見を楽しめる。
「夜桜のライトアップは特におすすめです。熊本城と桜が一体となる美しい風景を堪能できます」と担当者は語る。
復興が進む熊本城で、桜と歴史が織りなす春の絶景を楽しんでみてはいかがだろうか。
- 1. 1562年生まれ、1611年没。豊臣秀吉に仕えた武将で、1588年に熊本城主になったとされる。熊本の水田開発や貿易に力を入れた。築城や治水の名手として他の城を建てる仕事にも関わった。
- 2. チハラザクラ(千原桜)はヤマザクラの変種。発見された熊本市内の地名にちなんで名付けられた。花弁が大きく白いのが特徴。ギョイコウは黄緑色をした花が特徴。昔の貴族の衣服(御衣)に近い色をしているため、名付けられた。(HIGHLIGHTING Japan 2024年4月号「淡い緑色の花を咲かせる珍しいサクラ」参照)
- 3. 熊本城天守閣の北西隅に位置する木造三階建ての城郭建築。
By TANAKA Nozomi
Photo: Kumamoto Castle General Office; PIXTA