VOL.203 MAY 2025
[SPRING SPECIAL ISSUE] VARIOUS VARIETIES OF CHERRY BLOSSOMS IN JAPAN (PART 2): ADMIRING THE CHERRY BLOSSOMS AT CASTLES IN JAPAN
世界文化遺産の姫路城と桜が織りなす絶景
姫路城を背景とした桜は格別の景色。
1993年にユネスコ世界文化遺産に登録された国宝・姫路城。白壁が美しい名城として知られている。春には桜の大回廊と言われる1,000本を超える桜が咲き誇り、美しい光景を生み出している。姫路城の管理に当たる担当のかたに桜の時期の姫路城の魅力について話を聴いた。
姫路城は、京都府、大阪府に隣接する兵庫県の南西部に位置する姫路市の中心部にあり、新幹線の停車駅であるJR姫路駅から徒歩約20分の距離にある。天守閣は姫山という小高い山の上に建っているため、市街地からもその優美な姿を望むことができる。
現存する天守は、1609年に姫路藩藩主の池田 輝政によって築かれたものである。その後、入念な修復を繰り返し約400年に渡り維持されてきた。姫路城と桜の景観について、姫路城管理事務所の久内 拓馬さんはこう話す。
「姫路城は、その白漆喰1の美しい外観と、優雅にそびえ立つ天守の姿が、鳥のシラサギ(白鷺)2が翼を広げたように見えることから、「白鷺城」という愛称で親しまれています。また、壁だけでなく、屋根瓦3を留める隙間や継ぎ目にまで白漆喰を使用していることや、光の加減によっては屋根瓦が白く輝くことも天守全体がより白く見える理由です。どの角度から見ても美しく、八方正面と称されます。城の周辺には桜が多く植えられており、散策しながらさまざまな角度からお城と桜の景観を楽しんでいただけます」。
姫路城周辺には、約1,000本の桜が植えられており、例年3月末ごろから見ごろを迎える。ソメイヨシノ、ヤマザクラ、ヤエザクラやシダレザクラ4など、さまざまな品種が咲き誇り、天守の白壁と桜が美しい景観を生み出している。
「桜の開花時期には国内外から多くのかたが訪れ、城内は大変混雑します。城を背景に桜を撮影するなら、早朝の来場がおすすめです。また、海外からのお客様向けに、有料区域内のパンフレットは多言語化されており、解説板には英語の解説も併記されています。英語や中国語を話せるスタッフもおりますので、お困りの際はお声がけください」と久内さんは話す。
特に、伝統技術で造られた木造の和船5に乗って、姫路城の内堀を周遊するアクティビティも人気だ。水上から眺める桜や天守も、地上とは違った風情がある(写真参照)。また、桜の開花時期に合わせて「姫路城観桜会」というお花見イベントが開催され、箏や和太鼓といった和楽器の演奏や、日本舞踊、合唱などが披露される。おもてなしコーナーとして、お茶席が開かれ、地元のお酒や食べ物なども味わうことができる。
世界遺産ともなっている優美な白亜のお城と桜のコラボレーション。春の姫路城でしか味わえないさまざまな体験を満喫してほしい。
- 1. 壁・天井などに使用される白い塗料。石灰に煮た海藻、植物繊維、粘土などをねり合わせた天然素材。
- 2. 日本に生息するサギ類の総称で、特に羽毛が白いサギを指す。
- 3. 建物の屋根を覆い、雨や風から守るための焼き物の建材。
- 4. ヤマザクラは日本では北海道以外に分布する野生種。ヤエザクラは花びらが幾重にも重なって咲く桜の総称。シダレザクラは枝が柔らかく垂れ下がる桜の総称。
- 5. 日本の伝統的な木造船。姫路城で見られる和船は河川で用いられる船底が平らで広い小型船。
By TANAKA Nozomi
Photo: PIXTA