VOL.203 MAY 2025
[SPRING SPECIAL ISSUE] VARIOUS VARIETIES OF CHERRY BLOSSOMS IN JAPAN (PART 2): ADMIRING THE CHERRY BLOSSOMS AT CASTLES IN JAPAN
市民が守り受け継ぎ100回目を迎える高田城「観桜会」
ライトアップされた新潟県上越市の高田城三重櫓と満開のソメイヨシノ
Photo: 公益社団法人 上越観光コンベンション協会
約4000本のソメイヨシノが植えられた新潟県上越市の高田城址公園では、日本三大夜桜1の一つと言われている花見祭り「観桜会」が毎年開催される。満開の桜の下に数多くの露店が立ち並び、たくさんの人でにぎわう。2025年に100回目を迎える「観桜会」について取材した。
今もなお城下町の面影を残す新潟県上越市。東京から新幹線で2時間ほどの、日本海に面する町だ。上越観光コンベンション協会の髙木さんによると、今は公園となっている高田城は、徳川幕府の初代将軍、徳川家康の六男・松平 忠輝2の居城として1614年に築城されたが、徳川幕府が滅亡する19世紀後半まで城主は幾度か交代したという。そして、高田城の城跡公園である高田城址公園に桜が本格的に植えられたのは、1909年のことだという。
「当時の高田周辺の役を離れた軍人、在郷軍人の集まり、在郷軍人団が募金によって経費を集めて城跡に2200本の桜を植えたのがこの公園での本格的な桜の植樹の始まりと言われています」
Photo: 公益社団法人 上越観光コンベンション協会
その後、1914年になると花がきれいに咲きそろうようになり、1917年には市民が構内に入ることが許可されたそうだ。
「当時は陸軍の一つの師団の兵営地となっていたため、現在の観桜会とは異なり、自由に散策はできず、露店が並ぶこともありませんでしたが、決められた範囲の中でゆっくりと静かに花を眺めて楽しんでいたようです。その後、1926年に地元の商工会議所などが主催して4月に第1回観桜会が開催されました」
Photo: 公益社団法人 上越観光コンベンション協会
今では高田城址公園に植樹されている約4,000本のソメイヨシノを眺めながら、飲食も自由に、花見を楽しむことができるようになった。
「観桜会が開催される3月28日から4月13日にかけては、公園をめぐる広大な内堀と外堀をはじめ、いたるところで桜が咲き競います。夜になると三重櫓と桜がぼんぼり3の明かりに映え、お堀の水面にうつる様は、よりいっそうの華やかさにつつまれます。約3000個のぼんぼりに照らされる桜の花の美しさは、日本でも有数のものとして知られており、上野恩賜公園、弘前公園とともに日本三大夜桜の一つに数えられています。特に今年は観桜会が第100回の節目を迎えるので、通常のライトアップに加え、プロジェクションマッピングを用いるなどさまざまな催しを予定しています」
100回目は記念植樹など「次世代につなぐ」をこのイベントのテーマにしている。
Photo: 桜プロジェクトJ事務局
高田城の桜は、市民ボランティアがこれまで代々大切に管理してきた。
「市民みんなで守り育てるため、樹木を保護するボランティア団体や公募市民とともに活動してきました。2014年からは、より一層桜の保全に力を入れるために、上越市と市民との協働の取り組み「桜プロジェクトJ」を発足させています。花見の時期が終わると、市民ボランティアの皆さんと桜への感謝の気持ちを込めて、花を咲かせるために使ったエネルギーを補うために栄養を与えます。ほかにも夏季の散水作業や秋の冬支度など、年間を通じて桜のお世話をしています」
上越市の大切な資産でもある高田城址公園の桜。100年後も元気な姿を目指して管理を続けているという。
「花見の季節は多くの方が上越市を訪れます。海外の方には、ぜひ高田駅前の商店街、雁木通りのレトロな街並みなど4公園周辺にも足を延ばしていただければと思います。公式の観光情報サイト内では特設ページで英語・中国語繁体語版の最新パンフレットを公開していますので案内をご覧いただければと思います。ぜひ上越市の人々が愛する桜の美しい姿を楽しみにいらしてください」
Photo: 公益社団法人 上越観光コンベンション協会
- 1. 新潟県上越市の「高田公園」、東京の「上野恩賜公園」、青森県弘前市の「弘前公園」を指す。夜のお花見が楽しめる桜の名所として、マスコミなどが紹介するようになった。
- 2. 1592年8月、徳川家康の6男として江戸城で生まれ、1610年2月、忠輝は福島城(上越市)の主となり、慶長19年(1614年)に高田城を築城した。
- 3. 紙または絹張りのおおいのある手燭。手燭は手元、足元の照明に用いる昔の灯火具の一種。
- 4. 参照:明治時代のお屋敷で暮らす | January 2022 | Highlighting Japan
By MOROHASHI Kumiko
Photo: Joetsu Tourism and Convention Association; Sakura Project J Secretariat; PIXTA