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VOL.206 AUGUST 2025
THE APPEAL OF YOSHOKU: JAPANESE-STYLE WESTERN CUISINE (PART 1) 日本の食卓に定着した洋風調味料トマトケチャップ

トマトケチャップの一例。

日本の代表的な洋食に欠かせない調味料の一つにトマトケチャップがある。その日本での普及の歴史や、日本独自のおいしさの秘密などについて、トマトケチャップの製造・販売をいち早く手掛け、日本に広めた食品メーカーに話を聴いた。

完熟トマトを主原料に、砂糖、塩、酢、香辛料を加えて煮詰めて作られる調味料であるトマトケチャップは、洋風調味料として、欠かせない存在になっている。1908年に日本初のトマトケチャップを発売したカゴメ株式会社のマーケティング本部食品企画部の田口たぐち 雄一朗ゆういちろうさんは、トマトケチャップの歴史についてこう語る。


創業者の自宅の納屋でトマトの加工業に乗り出した当時の様子。
提供:カゴメ

「19世紀末後半、創業者の蟹江かにえ 一太郎いちたろうが軍隊にいた時に、上官からこれからの農業は西洋野菜だと言われたことをヒントに、退役後西洋野菜であるトマトの栽培に取り組んだのが始まりです。トマトは当時、まだ一般に知られていない野菜だったため、売れ行きはかんばしくありませんでした。解決策を探る中で、西洋ではトマトをソースにして食べることを知り、加工に乗り出したことが国産トマトケチャップの誕生のきっかけでした。まず、1903年に今でいうトマトピューレ1を開発し、西洋料理店におろしました。その後、海外で普及していたトマトケチャップに目をつけ、アメリカにも赴いて研究を重ね、1908年に商品化されました。現地ではパンや卵料理、ソーセージなどにかける卓上の調味料として使われ、甘めの味付けが主流でした。しかし、そのままの味だと日本の米食には合わないため、酸味や香辛料を工夫し、炒めたときに香りとコクが引き立つ味わいになるようこだわって試行錯誤を重ねました」

しかしその当時、洋食はまだ外食で楽しむものであり、家庭で作られることが少なかったため、トマトケチャップが現在のように家庭に広く普及するまでには、時間を要したという。

「西洋料理をご飯に合うように日本風にアレンジした、日本独自の文化である「洋食」の発展と共に、トマトケチャップも徐々に日本の食卓に溶け込んでいきました」

と田口さんは話す。20世紀前半に作られた、今でいうレシピ本である「トマトケチャップ 料理のしおり」には、「鶏肉のケチャップ煮込み」などのレシピが残っているという。


1934年頃の細口の瓶に入ったトマトケチャップ。
提供:カゴメ

1966年に発売されたチューブ入りのトマトケチャップ。
提供:カゴメ

また、トマトケチャップが家庭に広まった大きな転機となったのが、実は容器の変更だった。

「従来、トマトケチャップといえば瓶詰めが主流でしたが、1966年に世界で初めてプラスチックチューブ容器を開発し発売すると、軽くて、最後まで絞り出せる形状により使い勝手が格段に良くなりました。この変更が、家庭でも洋食を調理したいというニーズに応えたことで、トマトケチャップは一般家庭に広く定着していきました」

こうして、調理に使いやすい容器となったトマトケチャップは日本の家庭の常備調味料としての座をものとした。同社の食品企画部で業務用商品の担当をしている白山 裕己(しらやま ひろき)さんはこう続けた。

「現在でも、日本各地の飲食店が応募した自慢のレシピの中から一般の方の投票によって、日本一のスパゲッティ ナポリタン2やオムライス3を決定するイベントを企画、主催しています。こうしたイベントは、食品メーカーとして、トマトケチャップが欠かせない洋食の代表である、スパゲッティ ナポリタンやオムライスの魅力の再発見や、プロのシェフの技やこだわりなどを知ることができる大事な機会と捉えています。多様な日本の食文化の魅力や可能性を探求し、イベントを通じてそれらを発信し続けていきたいです」

日本を訪れた際には、日本独自のトマトケチャップのおいしさを日本の洋食を通じて味わってみてはいかがだろうか。


トマトケチャップの原材料となる加工用トマト。生食用とは品種も栽培方法も異なる。生食用よりも栄養成分が優れているのが特徴。
提供: カゴメ

By TANAKA Nozomi
Photo: KAGOME CO.,LTD.; PIXTA

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