VOL.206 AUGUST 2025
THE APPEAL OF YOSHOKU: JAPANESE-STYLE WESTERN CUISINE (PART 1)
洋食の普及を支えた「ファミリーレストラン」
ファミリーレストランで食事を楽しむ家族の様子。
日本には、提供時間が早く、手頃な値段で様々な料理が食べられる「ファミリーレストラン」という外食形態がある。その成り立ちについて外食産業の業界団体の担当者に話を聴いた。
「ファミリーレストラン」は、チェーンストア方式1を取り、比較的安価に洋食、和食、中華などの様々な料理からデザートまで楽しむことができるのが特徴のレストランだ。ファミリーレストランの歴史について、外食産業の約800社が加盟し、業界全体をサポートしている日本フードサービス協会の担当者はこう語る。
「1970年に日本初のファミリーレストラン「すかいらーく2」1号店が東京都府中市にオープンしました。アメリカのロードサイドにあるダイナー3をお手本にしたこの店は、家庭では味わえないご馳走を手頃な価格で幅広いメニューから楽しめる「ファミリーレストラン」という新しいスタイルの外食店として人気となりました。当時の日本は高度経済成長期4で人々の暮らしが豊かになり、自家用車の所有が一般家庭にも普及し始めた時期でした。こうした生活様式の変化に対応するため、次々と郊外の広い敷地に駐車場付きのファミリーレストランが誕生しました」
1970年の「すかいらーく」に続いて翌年以降各地に様々なファミリーレストランが開業した。ファミリーレストランは、家族が車で訪れる外食スタイルを定着させ、今では「ファミレス」5の名で親しまれるようになった。
Photo: すかいらーく
Photo: すかいらーく
「以前はホテルや高級レストランでしか味わえなかった洋食を、家族皆で手頃に楽しむことができるようになった背景には、ファミリーレストランの発展が大きな役割を果たしています。心地良い接客や清潔で明るく快適な空間づくりなど、小さな子ども連れでも気軽に家族で入りやすい雰囲気やサービスとともに、おいしくて手頃な価格で料理を提供する。こうした各社の取組もあってファミリーレストランは成長していきました」と担当者は語る。
家族連れのみならず、学生や高齢者、一人でも気軽に利用でき、幅広い層に支持されているファミリーレストラン。豊富なメニューを揃えているため、宗教等により食事の制限がある人でも食べられるメニューが見つけやすく、また複数人でいろいろな料理を分け合って食べるという楽しみ方もできる。さらにランチやティータイム、お酒を飲みながらの夕食など様々なシーンで利用できる便利さがある。たくさんの種類の飲み物を好きなだけ楽しめるドリンクバーも人気だ。
「ファミリーレストランは、海外のチェーンストアを参考にして、日本ならではの形に進化していきました。その魅力は、洋食を始め、和食や中華など豊かな食を手頃に楽しめる点にあります。日本のファミリーレストランでの体験が、海外から訪問した方々の心に残り、自国でその思い出を広めてもらえることを願っています」
ファミリーレストランで提供される料理の一例。洋食を始め、和食や中華など様々な料理を楽しめる。
Photo: ISHIZAWA Yoji
- 1. ブランドや経営方針、サービス内容などを統一し、多店舗展開を行うアメリカで生まれた経営形態。
- 2. 日本最大級のファミリーレストランチェーン。「ガスト」、「ジョナサン」など複数のブランドを有する。現在は創業時の主力ブランドであった「すかいらーく」という店舗はなく、会社名として残っている。
- 3. 主に北米地域で見られる大衆的な飲食店。
- 4. 日本が急速に経済成長を遂げた1955年頃から1973年頃の期間。
- 5. ファミリーレストランの略。親しみを込めて短縮形で呼ばれることが多い。
By TANAKA Nozomi
Photo: Skylark; ISHIZAWA Yoji; PIXTA