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2019年6月18日の夜、山形県沖でマグニチュード(M)6.7(気象庁暫定値)が発生しました1)。被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。近年は2011年東北地方太平洋沖地震(M9.0)や2016年熊本地震(M7.3)など太平洋側の海域での巨大地震や日本列島の中の活断層による被害地震が相次ぎましたが、歴史的に見れば今回地震が発生した山形県沖でも1964年新潟地震(M7.5)や1833年庄内沖地震(M7.5)などが起こっており、他にも日本海の海域で発生した大地震や大津波によって大きな災害が繰り返されています(図1)。
例えば、36年前のことになりますが、1983年には秋田県沖を震源とする日本海中部地震(M7.7)が発生し、それに伴って発生した大津波によって、秋田県や青森県を中心に、日本海沿岸全域にわたって大きな被害を及ぼしました。当時私は岩手県のある小学校に通っていて、もうすぐで給食だと思っていた時に、地震で教室が大きく長く揺れたことを今でも覚えています。その地震では、海岸へ遠足に来ていた当時の私と同じくらいの小学生を含む100名以上の方が亡くなりました。さらに、その10年後1993年には北海道奥尻島沖を震源とする北海道南西沖地震(M7.8)が発生し、この地震でも地震発生直後に到来した津波によって200名以上の方が亡くなりました。日本海中部地震や北海道南西沖地震の例からも分かるように、日本海における地震と津波の特徴の1つは、地震発生から津波到達までの時間が非常に短いことです。それは、日本海において大地震と大津波を引き起こす地震断層が陸地の近いところに多く存在していることによります2) 3)。
21世紀に入ると、2005年福岡県西方沖地震(M7.0)や2007年に海陸境界域で発生した能登半島地震(M6.9)と新潟県中越沖地震(M6.8)などのマグニチュード6後半〜7クラスの地震が相次いで起こり、大きな被害をもたらしました。しかし、東北地方太平洋沖地震の翌日2011年3月12日に起きた秋田県沖での地震(M6.4)を最後に日本海ではマグニチュード6を超える地震が発生しない状況が続いていました。今回発生した山形県沖の地震は、日本海で発生した地震としては新潟県中越沖地震以降最も大きいマグニチュードの地震(M6.7)となります(2019年6月26日現在)。
日本海側での地震の評価・研究は太平洋側と比べると観測・調査が少ないため進んでいませんでしたが、2008年以降は国内の大学・研究機関が共同で「ひずみ集中帯における重点的調査・観測研究」4)や「日本海地震・津波調査プロジェクト」5)を実施し、JAMSTECもそれらのプロジェクトに参加して、深海調査研究船「かいれい」・海底広域研究船「かいめい」・海洋調査船「かいよう」を使った地殻構造探査6)を精力的に行ってきました。この調査では、ハイドロフォンを内蔵したストリーマーケーブルを曳航して、エアガンとよばれる音波を発して調査を行うマルチチャネル反射法地震探査と海底地震計を用いた地震探査を実施し、地震が発生している地殻構造全体を把握する調査観測研究をほぼ毎年行ってきました。その結果、日本海で発生する地震断層と地殻構造の関係が見えてきました。例えば、1964年新潟地震は大陸地殻(島弧)に発達した地震断層が作用した地震であったのに対して、1983年日本海中部地震は大陸地殻と海洋地殻の境界域に形成された地震断層が作用した地震であることが分かるなど、日本海の地震断層が地殻構造から見て、いくつかのタイプに分類されることが分かってきました(図2)4)。今回の山形県沖の地震は1964年新潟地震のタイプと同様で、大陸地殻の中に発達した地震断層が作用したとみられます。
しかし、今回の山形県沖の地震が発生した海陸境界域は調査が難しく、日本海の中でも調査研究が遅れています。そこで、今年8月に「日本海地震・津波調査プロジェクト」5)の一環として、JAMSTECは東京大学地震研究所と共同で、震源域近傍における海陸統合地震探査(日本海大和堆〜酒田沖〜庄内平野〜新庄盆地)を行い、今回の地震発生の背景となった地殻構造と地震断層の実態把握の研究を進めていきます。