黒柳 あずみ(Azumi Kuroyanagi)
・受賞理由 / Commendation
有孔虫環境指標に基づく過去・将来の海洋環境の精密推定に関する研究
Estimation of paleo and future marine environments based on foraminiferal environmental proxies
・主要論文 / A list of five major papers
- Kuroyanagi and Kawahata, 2004. Marine Micropaleontology 53, 173-196.
- Kuroyanagi et al., 2009. Marine Micropaleontology 73, 190-195.
- Kuroyanagi et al., 2011. Paleoceanography 26, PA002153.
- Kuroyanagi et al., 2019. Paleoceanography and Paleoclimatology 34, PA003539.
- Kuroyanagi et al., 2020. Marine Micropaleontology, 161, 101924.
・主な業績 / Major achievements
黒柳あずみ氏は有孔虫を用いた海洋環境の復元を行ってきた.同一種とされていた現生の有孔虫(G. ruber:グロビゲリノイデス・ルーバー)を異なる水深に生息する2形態に特定し,酸素同位体比等と組み合わせることで,表層と亜表層の海水温を追跡することを可能にした.この手法は古海水温復元で世界的に広く用いられている.また,環境をコントロールした有孔虫の飼育実験から,貧酸素環境での浮遊性有孔虫の生息可能条件を特定し,地質時代の海洋の酸化還元状態を化石種の組み合わせから復元できることを示した.またpH7.7が大型底生有孔虫の石灰化急減の閾値となることを見出した.現生の有孔虫の生態を手がかりとして,地質時代の海洋の環境変遷を明らかにするだけでなく,近未来の地球温暖化に伴う海洋酸性化や貧酸素水塊の発生などが及ぼす海棲生物への影響を予測するための重要な研究成果を挙げており,世界的に高い評価を受けている.
・推薦者/Nominator
高嶋 礼詩(Reishi Takashima)