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未来のキャンパスのヒントを分野の異なる学生たちが提案 「(仮称)赤門脇トイレ」デザインコンペの表彰式とシンポジウムを開催

掲載日:2021年3月18日

東京大学は3月17日、赤門の脇に整備するトイレのデザインコンペティションの表彰式とシンポジウムを開催しました。

2020年11月13日に告知をしたこのコンペでは、小さなトイレからキャンパスを考えるための試みとして、デザインのアイデアを本学の学生・研究員から募りました。デザイン案に求められたのは、インクルーシブな社会を象徴し、これからのキャンパスにふさわしい施設としてのトイレ。この難題に総数63点の応募作品が寄せられ、8名の審査委員による2回の選考過程を経て、最優秀賞1点、優秀賞3点が選出されました。

コロナ禍のためオンラインで行われた表彰式では、審査委員長の隈研吾特別教授が、予想以上にレベルが高いデザイン案が集まった、と評価しました。「学生コンペで、しかもトイレというのは、私は世界でも聞いたことがない非常にユニークな試みだったと思う」と述べ、「デザイン的なもの、機能的なもの、インクルーシブネスに適合したものであるか、歴史的な文脈に適合したものか、といったことをバランス良く満たしたものがあるのか、当初は審査委員の中でも懸念が出ていましたが、最終的に選ばれた作品は見事に困難な課題に対する優れた回答になっていた」と話しました。

審査委員長を務めた隈研吾特別教授。自身にとっても多くの気づきが得られた重要な機会だったと今回のコンペを振り返りました。

最優秀賞を受賞したのは、新領域創成科学研究科修士課程1年の木村七音流さん、法学部4年の齋藤亘佑さん、そして医学部4年の川本亮さんという専門分野を横断した3人のグループです。隈先生が、学生とは思えない気配りのあるデザインで感銘を受けた、と講評した案は、機能も形も異なる3つの便房を組み合わせたトイレでした。「多目的トイレという型を一度バラし、実際の当事者の方にとってどういう場所だったら使いやすいか、何があったらいいだろうか」と考えた、と木村さんは振り返りました。木村さんたちのグループは、来年度の完成を目指す実施設計にも携わります。

表彰式に続いて開催されたシンポジウムでは、コーディネーターとして副審査委員長を務めた新領域創成科学研究科の出口敦教授(キャンパス計画室長)が司会・進行し、審査委員を務めた5人の先生が、今回のコンペについて、トイレが意味するもの、さらにはポストコロナのキャンパスのあり方などについて意見を交わしました。

工学系研究科の千葉学教授は、「テーマの設定も非常に個性的で、1つ1つの案がこんな可能性もあったのか、こんな風なキャンパスの捉え方もあったのかという、気づきを与えてくれる提案が大変多かった」と評価しました。

工学系研究科の加藤耕一先生は、キャンパスの歴史性をどう表現するかに取り組んだ提案が多くあったことに言及。キャンパスについて考えることは学生の帰属意識を高めることにもつながるのではないかと振り返りました。

先端科学技術研究センターの准教授で本学バリアフリー支援室長の熊谷晋一郎先生は、電動車椅子を利用する当事者としての立場から、障害を持つ人にとってトイレは生活全般に影響を与える特別な場所だと説明しました。「例えばご飯を食べる時、勉強している時、研究している時、安心できるトイレが身近にあるというそれだけでご飯を美味しく食べられる。そして勉強に集中できる。仕事にも集中できる。逆に安心できるトイレが身近にないということが分かっている状況では、頭の中の半分以上をトイレに行きたくなったらどうしよう、といったぐるぐるとした悩みにエネルギーを吸い取られてしまう」と説明しました。「インクルーシブなキャンパスを作ろうという時に、後回しにされがちなトイレという場所に着目し、そこに叡智を持ってチャレンジしたということ自体が素晴らしいと思いました」

隈先生は、今回のコンペがコロナ後の大学のキャンパスを考えるいいヒントになった、と振り返りました。「大学のキャンパスというものを、コロナの後もう1回再構成しなくてはと感じている」と述べ、「オンラインでできないものは何か、と考えたとき、キャンパスという実際の空間が大学の中で非常に重要な役割を果たしているのではないか。どんなコミュニケーションが生まれるとか、大学の歴史をどういう風に感じることができるかとか、建築以外のキャンパスについて考える非常にいいヒントになったと感じている」と語りました。

受賞作品などに関する詳細については、こちらをご覧ください。
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/articles/z0506_00008.html

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最優秀賞を受賞した「ひとのトイレ」。新領域創成科学研究科の木村七音流さん(写真右)、法学部の齋藤亘佑さん、医学部の川本亮さんがデザインしました。

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表彰式では、五神総長が最優秀賞と優秀賞を受賞した4組を称えました(表彰状は後日送付)。五神総長は、今回のコンぺに予想をはるかに超える学生からの応募があったことに触れ、「改めて、東京大学の最大の財産である若い力の存在を実感しました」と話しました。

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