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偉大な父に追いつき、追い越せ―。ハンドボールの強豪、豊田合成(愛知県清須市)のルーキー、松中大輝(23)はソフトバンクで活躍した松中信彦氏(現中日打撃統括コーチ)の長男だ。「平成唯一の三冠王」としてプロ野球界にその名を刻んだ父とは違うフィールドを選んだ息子もまた日本のトップチームでハンドボールの道を究めようとしている。

故郷福岡に近い佐賀での試合となったリーグ戦の佐賀戦で松中はベンチ外で試合を見つめた。豊田合成は日本リーグ4連覇、日本選手権5連覇中の強豪。明大卒業後、日本代表を複数抱えるトップチームに入団し「入ったときは圧倒されたというか。何もできなかった。日々勉強というか、昨日より一つでも成長しようという気持ちで1年間やってきました」と必死でついていく毎日だった。

昨年11月の富山戦でリーグ戦デビューを果たし12月の琉球戦では初得点も決めた。ルーキーとして着実に前に進んでいる。松中のポジションはコート左端からゴールを決めるレフトウイング(LW)。同じポジションには佐賀でリーグ通算得点1084得点をマークしリーグ記録を17年ぶりに塗り替えた小塩豪紀(33)ら実力のある選手がそろっている。「すごい先輩方がそろっていて大変なんですけど、吸収できるところはどんどん吸収していきたいです」。

松中は西南学院中に入学してハンドボールを始めた。小学生の頃は父と同じ野球をしていたが、部活動の体験入部でハンドボールに面白さを感じた。「ボールを投げることには自信があった。やってみたら楽しかったし先輩も優しくて顧問の先生も熱心に誘ってくれたんです」。ハンドボールを始めたと聞いた父は最初驚いていた。「ハンドボール?何それ?みたいな感じだったんです。僕が中2の時に父が現役を引退して、中3のときに出た全国大会に父が初めて見に来てくれて、そこから父がハンドボールにはまった感じになりました」。ハンドボールにはまった父はその後ハンドボール協会の理事を務めるまでになった。

競技は違うが同じアスリートとして父を尊敬している。高校時代に言われたことは「人が休んでいる間も練習しなさい」。「父もすごく練習してきたんだと思うんです。人の2倍やれとか、とにかくたくさん練習しなさいと言われてきたので、それは今でも大事にしています」。父はアマチュア時代にアトランタ五輪で銀メダルを獲得。プロで19年間現役生活を続け、2004年の三冠王をはじめ数々のタイトルを取り球界を代表する打者となった父の言葉には重みがあった。

奇しくも父は今季から同じ愛知県が本拠地の中日のコーチに就任した。近くにいる父に機会があれば試合を見てもらいたいと思っている。「父が野球で活躍して僕もすごくいい景色を見せてもらったし、いい思いをたくさんさせてもらった。今度は父の近くで僕が活躍して恩返ししたいとちょっと意気込んでいるところです」。ハンドボールで一流選手になることが父への何よりの親孝行になる。

1年目は自分の武器を模索してきたが、持ち味はスピードとスタミナだとわかってきた。「チーム内の測定でスピードとスタミナで1位を取ることができたんです。自信になったのでそれを生かして勝負していきたい。父とは逆なんですけど」と笑った。実績十分のベテランとのポジション争いに加わるためにさらに実力をつけ「来シーズンは1分1秒でも長くコートにいたい。将来は松中がいたから勝てたといわれるような選手になりたいです」。常勝ホークスをバットで引っ張った父のように、常勝軍団でひときわ輝くハンドボールの星を目指す。(前田泰子)

2004年7月、当時2歳の長男・大輝君を抱き上げるソフトバンク松中

オールスターでベストプレー賞を受賞した父とハイタッチ【写真】...次ページ

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前田 泰子

前田 泰子

記者

高校野球、大学野球、社会人野球などアマ野球を中心にスポーツ全般を取材。 1992年、日刊スポーツ新聞社西部本社に入社。 2012年にフリーとなり西日本新聞、西日本スポーツのほか雑誌、ネット媒体などで執筆。 甲子園取材では担当チームが春夏通算6度優勝し、全国高校サッカーと全国高校ラグビーでも3度ずつ、担当チームの優勝を経験。記者仲間からは「強運記者」と言われるが、その運が自分に向けられたことはない。 「九州高校野球界の黒柳徹子」を目指し日々取材中!

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