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デジタルストレス軽減、表情明るく

バレーボール女子元日本代表アタッカーの長岡望悠(SAGA久光スプリングス)が、年明けからコートに立つ機会が増えてきた。1月11日の埼玉上尾メディックス戦で約2カ月ぶりとなるプレーを披露すると、同25日のSVリーグ女子オールスターゲームにも出場。そんな33歳には近頃、コート外でもうれしい発見があったという。「みんなにお勧めしたいぐらいです!」と弾むような声だったので、尋ねてみた。

SVリーグ女子のオールスターゲームで
ピースサインを決めるSAGA久光スプリングスの長岡望悠
(写真提供:SV.LEAGUE)

「携帯デトックスをしたくて、設定を変えたら『(高齢者向けの)らくらくホン』みたいにできたんです。厳選したアプリが携帯の画面にポン、ポン、ポン! と表示されて、箇条書きみたいに上から並んでいます」

要約すると、そんな感じの返答だった。デジタル系のツールから受ける「ストレス」を軽減するために、あえて機能が絞られる状態にしたらしい。

「携帯を触る時間が極端に減りましたね。えっ、夜寝る前に見てしまうんですか? それはやめた方がいいですよ」。明るい表情の理由を聞くつもりが、のっけから日常会話の延長のようになった。だったらと、流れに乗ってみた。

SVリーグ女子のオールスターゲームでスパイクを放つ長岡望悠
(写真提供:SV.LEAGUE)

「携帯の文字をもっと大きくするのもいいかなと思っていて...。大きい文字でメールを打つと、一画面に表示される文字数が少なくなりますよね。短文になる分、質の高い言葉を選んで相手に届けようと、工夫するようになるんじゃないかなと。文章や表現を考える作業って面白いなあ、と感じています」

もともと大きめの文字を使っていたそうで、同期入団の野本梨佳さん(2021〜22年シーズン限りで現役を引退)に「ミユ(長岡の愛称)、おばあちゃんやん!」と笑われていたほど。それはともかく、さらりと触れた「質の高い言葉」は長岡のバレー観にも通じる。跳躍力を生かした空中での美しいフォーム。そこから繰り出すスパイクやジャンプサーブ。磨き上げた「強み」をコートで表現し、ファンを魅了する姿と重なった。

SVリーグ女子のオールスターゲームで
笑顔で記念写真に収まる(左から)長岡望悠、岩崎こよみ、和田由紀子
(写真提供:SV.LEAGUE)
「逆に使われるような感覚って、ありませんか?」

逆に長岡から聞かれた。「携帯を使うつもりが、逆に使われるような感覚って、ありませんか? 私、いろんな検索をしているうちに、びっくりするほど時間がたっていた...とかよくあったんです。それがデトックスをしたことで生まれた『余白』のおかげで、私の中で『ああ、これをやりたいと思っていたんだ!』と気付く機会が増えました」

体調を崩して戦列を離れた昨秋には、読書欲のスイッチが入った。携帯デトックスで生まれた時間を活用して、ページをめくっている。「この前は新幹線移動のときに中川(美柚)から『これ、面白いですよ』と教えてもらった本を、電子書籍で買っちゃいました。本は読みたいときが読みどきなので」

笑顔でハイタッチする長岡望悠(撮影・永田浩)

東九州龍谷高(大分)から「勝負の世界」に飛び込んで、15シーズン目を過ごしている。チームの日本人選手ではキャプテンでセッターの栄絵里香、ミドルブロッカーの渡邊彩とともに最年長。リーグ全体でも長岡より年上の選手は数えるほどしかいない。16年リオデジャネイロ五輪ではエースとして「日の丸」を背負った。その後は、膝の度重なる大けがで選手生命の危機に何度も見舞われながら、不屈の闘志で乗り越えてきた。

今季のリーグ戦はここまで9試合でユニホームに袖を通し、14セットでプレー。ライト側からの決定力のあるアタック、コートに立ったときの存在感は不変だ。常に変化する「体」と向き合い、内なる「声」と対話を繰り返しながらモチベーションを保っている。

1月11日の埼玉上尾メディックス戦で
スパイクを放つSAGA久光スプリングスの長岡望悠
(写真提供:SV.LEAGUE)

「自分の心から湧き上がってくる感情って、本当にさまざまなんです。それを見ないふりだけは絶対にしません。その方が自分にとっていいと思っています。自分で感じ取って、消化して、シンプルにするように努めています」

心身のコンディションは整っている。オールスターゲームでは、ファン投票のオポジット部門で最多の得票数を集めた。躍動する背番号「1」を誰もが見たいのだ。「ありがたいです。けがで出ていない時期も長かったのに、変わらずに応援してくださる方がいる。会場での声......届いています。しっかり伝わっています。元気をもらえるんです。ありがたいですね」。長岡は「ありがたい」と2度、口にした。

トークショーで笑顔を見せる長岡望悠=2024年9月
最近心の底から笑ったことは...

ささやかな日常の一つ一つが今を生きる原動力になっている。「天気が良くないなと思っていたら、やっと今日晴れました。そうそう、日も長くなりましたよね」。何げない毎日にも喜びを見いだしながら、体と心をフラットにしてバレーボールに打ち込んでいる。

携帯も、打ち込む文字も、バレーも、そして生き方も...。長岡のスタイルは「シンプルイズベスト」なのだ。最後に尋ねた。最近心の底から笑ったことは?

「この前、ステファニー(・サムディ)と吉武(美佳)のオポジットの3人でグループ練習をしていたんです。そのときにめちゃめちゃ面白いことがあったんですよ。3人で笑い転げました。あっ、でも、なんで笑っちゃったのかなあ」。理由を聞いても「アハハ、そういうのって、案外覚えていないじゃないですか」と、シンプルに切り返された。長岡が愛される理由がまた一つ分かったような気がする。(西口憲一)

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西口 憲一

西口 憲一

編集委員

立命館大学でアメリカンフットボールに打ち込み、「人の心を動かし、心に残るような記事を書きたい」とスポーツ記者を志しました。 1993年西日本新聞社入社。 運動部からスタートし、以来、福岡→大分→福岡→東京→福岡→東京→福岡。 主にプロ野球(ダイエー、ソフトバンク、西武)やソフトボールを取材。1999年ダイエー初優勝、2008年北京と2021年東京の両五輪でのソフトボール金メダル獲得に心が震えました。 現在はバレーボールSVリーグ女子のSAGA久光スプリングスの記事も書いています。福岡市出身。

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