なぜ働き方改革で労働時間が短縮されても、業務負荷は高まるのか
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(写真はイメージです) Photo:PIXTA
長時間労働是正に向けた動きが
もたらした「真の影響」とは
連載第1回は、2016年から2020年までの働き方について、その成果と課題について検証しました。今回はその中から、成果と課題が表裏一体の関係にある、「労働時間の短縮化」というテーマを掘り下げて考えていきます。
"過労死"という日本語が海外でも通じるほど長かった日本の労働時間は年々短くなり、2020年の年間就業時間は1811時間となりました。長時間労働者の割合も就業者では5.6%まで減少しました(図表1参照)。
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2017年、政府は日本の労働制度と働き方に関する3つの課題「正規、非正規の不合理な処遇の差」「長時間労働」「単線型の日本のキャリアパス」と、これらを解決するための9つの検討テーマを「働き方改革実行計画」で示しました。中でも「長時間労働の是正」への取り組みは盛んであり、2018年6月に成立した「働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)」の多くの法令が、これにかかわっています。
2019年4月以降、順次施行された「働き方改革関連法」のうち特に効果が大きかったのが、改正労働基準法です。時間外労働の上限規制の導入や5日間の有休取得の義務化などが盛り込まれ、実効性が高かったと考えられます。2020年は法令の効果に加え、新型コロナウイルス感染症の影響で、一部の業種において休業や短時間勤務を求められたこともあり、労働時間の縮減が明確な形で数字に表れました。
労働時間の短縮化は進み
休暇取得は増える
第1回で紹介した日本の働き方を総合的に可視化する指標「Works Index」の中で、「働き方改革関連法」施行らの動きを最もよく反映しているのはIndexIII「ワークライフバランス」です。構成要素であるIndicatorを見ると、労働時間をもとに作られているIndicatorIII-1「残業がない・短い」は67.3pt(2016年)から71.4pt(2020年)と、年々上昇しています(対2016年比+4.1pt)(図表2参照)。
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休暇の取得状況を表すIndicatorIII-2「休暇が取得できている」も56.6pt(2016年)から64.1pt(2020年)と右肩上がり(同+7.5pt)で推移しており、休暇が増え、労働時間の短縮化が進んでいる様子がうかがえます。これらはIndexIII「ワークライフバランス」の水準を押し上げている要因でもあります。
しかし、目に見える労働時間の縮減や休暇の拡充が進む一方で、新たな課題も表面化しました。
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