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金田 いえ。1年以上、利用していないと思います。
鎌田 1年ならまだよいほうで、なかには「もう5〜6年は銀行に行っていない」というお客様も少なくありません。でも、ご家庭では、お子様の教育資金とか、夏休みの旅行費用をどうするかなど、家族でお金の話をする場面は日常的にあるのではないでしょうか。ただ、そうしたお金に関する話題が、残念ながら銀行とつながっていない。
そこで、銀行が持つデータを分析することでお客様のお金の不安や悩みにいち早く気づき、アプリやウェブサイトなどのデジタル上の接点を通じてカスタマイズされたアドバイスを提供していくなど、これまで人手だけでは十分にカバーし切れていなかったお客様一人ひとりの潜在的な金融ニーズに先回りしてお応えするような金融体験をデジタル上で提供していく。これが攻めのデジタルです。これを実現することで、生涯にわたるお客様とのエンゲージメントを向上させていきたいと考えています。
金田 そうですね。感情の機微を含めて、いままで把握できていなかった部分もデータでとらえられるところまで進化してきました。
Takuya Kaneda
プレイド
Sales Team Head
顧客の行動や感情をデータでとらえるだけでなく、サービスや体験に反映させる施策を打ち、その結果からまたフィードバックやインサイトを得て、さらにチューニングしていくことが重要です。御行の場合、そのトライアル・アンド・エラーの数とチューニングの速度が、突出していると感じます。
商品軸だったマーケティング組織を顧客起点で再設計
MUFGは、銀行、信託、証券、クレジットカードなど多様な金融サービスの展開を通じて、約3400万人もの個人顧客とつながっている。その顧客一人ひとりとのエンゲージメントをどう強化していくのか。話題はその核心へと及んでいく。
金田 御行では2021年4月にマーケティング組織を再編しましたが、顧客エンゲージメントの向上に向けた取り組みを進めるうえで、やはり組織体制を見直したことが大きいのですか。
鎌田 はい、非常に大きかったと思います。従来は預金やローン、投資といった商品・サービスごとにマーケティング機能を配置していたのですが、2021年4月に組織編成を見直し、商品横断的にマーケティングとデータ分析を担う「データ・マーケティング室」を立ち上げました。
これによって、特定の商品・サービスに囚われることなく、顧客軸でお客様一人ひとりのニーズや検討状況を反映した施策の優先順位の決定・実行の速度がぐんと上がりました。また、マーケティング機能の集約によって人材、スキル、ノウハウを共有し、そこに積極的なキャリア採用を通じて得た新たな知見を取り入れることで、全体のレベルアップを図りました。さらに、マーケティング予算も集約し、商品・サービス横断で機動的な予算配分ができるようになったことも大きなメリットの一つでした。
データ・マーケティング室では、デジタルマーケティング施策を展開するに当たって、あらためて顧客ニーズを把握することから始めた。そのうえで、自社のウェブサイトやアプリなどオウンドチャネルを活用した、ワン・トゥ・ワンのコミュニケーションを強化するステップを踏んだ。
鎌田 顧客エンゲージメント向上に向けて何をすべきかを明確にするため、まずは顧客ニーズを把握するための調査から始めました。NPS(ネット・プロモーター・スコア)調査の手法を参考にしながら、事業成果と相関の強いエンゲージメント指標を独自に設定し、その指標の向上につながる優先課題を抽出していきました。
結果的には、「ホームページの内容とわかりやすさ」「メールなどでの情報提供のわかりやすさ」といった基本的な部分が、エンゲージメント指標の引き上げ効果が大きいとわかりました。当初は、デジタルを使ってエッジの利いた施策を打つのが有効ではないかといった仮説もあったのですが、多くのお客様が実感できる体験を改善していくことがエンゲージメント向上につながるとわかりましたので、まずはそこから取り組みを進めました。
金田 顧客全体のエンゲージメントを底上げするには、長期的な視点が必要です。短期的な成果を望む商品サイドとの摩擦はありませんでしたか。
銀行および信託銀行で、「グループ経営」「B2Cビジネス」「デジタル」の3つを軸とした職務を歴任。2021年4月より現職。データ分析、デジタルコミュニケーション設計、コンテンツ制作など個人顧客ビジネスのマーケティング施策全般を担当。
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