○しろまる 概要
1.概要
メンケス(Menkes)病は、銅輸送ATPaseの1つであるATP7A遺伝子異常で、X染色体劣性遺伝性疾患であるので、患者は原則男児である。腸管での銅輸送障害のため、摂取した銅は腸粘膜に蓄積し、体内に輸送されない。その結果、重篤な銅欠乏により、銅酵素活性が低下し、重度の中枢神経障害、血管異常・膀胱憩室・骨粗鬆症等の結合織異常、特徴的頭髪異常などが出現する。神経症状は母体由来の銅が消失する生後2〜3か月からは発症する。治療としてヒスチジン銅の皮下注射が行われているが、治療開始が神経症状出現後では神経障害に対して全く効果がない。
2.原因
ATP7A遺伝子異常によるものとされているが病態が不明な点もある。
3.症状
重度の中枢神経障害、血管異常・膀胱憩室・骨粗鬆症・骨折等の結合織異常、血管異常による硬膜下出血、特徴的頭髪異常、繰り返す尿路感染症などを認める。
中枢神経障害は、母体由来の銅が消失する生後2〜3か月頃から発症する。
4.治療法
現在、ヒスチジン銅の皮下注射が行われている。神経症状が出現する前の新生児期に治療を開始すれば、神経障害は予防ないしは軽減できる。しかし、治療開始が、神経症状発症後の場合は、神経障害は全く改善しない。
5.予後
神経症状が出現する前の新生児期に治療を開始すれば、神経障害は予防ないしは軽減できる。しかし、治療開始が神経症状発症後の場合は、神経障害は全く改善せず、難治性痙攣があり寝たきりで発語も見られない。結合織異常はヒスチジン銅の皮下注射では改善しない。血管異常による出血、呼吸器感染による呼吸障害、膀胱憩室破裂などが致命的になる。多くは幼児期に死亡する。
○しろまる 要件の判定に必要な事項
1. 患者数
100人未満
2. 発病の機構
不明(遺伝子異常が関与。)
3. 効果的な治療方法
未確立(ヒスチジン銅の投与でも神経症状が残存することが多い。)
4. 長期の療養
必要(進行性である。)
5. 診断基準
あり(研究班作成の診断基準あり。)
6. 重症度分類
Barthel Indexで85点以下を対象とする。
○しろまる 情報提供元
「Menkes病・occipital horn症候群の実態調査、早期診断基準確立、治療法開発班研究班」
研究代表者 帝京大学病院小児科 客員教授 児玉浩子
<診断基準>
Definite、Probableを対象とする。
メンケス(Menkes)病の診断基準
A.症状
いずれも乳幼児期から発生する症状であるとする。
1. 重度の中枢神経障害(著明な発達遅延)
2. 難治性痙攣
3. 頭髪異常(少ない毛、縮れ毛、色素減弱)
4. 硬膜下出血
5. 骨粗鬆症・骨折
6. 繰り返す尿路感染症
7. 筋力低下
B.検査所見
1. 血液・生化学的検査所見
1血清銅値:30μg/dL以下、セルロプラスミン値:15mg/dL以下
2血清乳酸・ピルビン酸の上昇
2. 画像検査所見
1MRAで血管蛇行、MRIで脳萎縮、硬膜下出血のいずれか
2骨粗鬆症、骨折のいずれか
3膀胱憩室
C.特殊検査
培養皮膚線維芽細胞の銅濃度の高値
D.鑑別診断:以下の疾患を鑑別する。
ミトコンドリア遺伝子異常症
E.遺伝学的検査
ATP7A遺伝子の変異
<診断のカテゴリー>
Definite:Aのうち3を含む2項目以上+Bのうち1の1を含む2項目以上を満たしDの鑑別すべき疾患を除外し、C又はEを満たすもの。
Probable:Aのうち3を含む2項目以上+Bのうち1の双方または、1の1及び2の3項目のうち2項目以上を満たしDの鑑別すべき疾患を除外したもの。
Possible:Aのうち3を含む2項目以上+Bのうち11を含む2項目以上
<重症度分類>
Barthel Indexで85点以下を対象とする。
質問内容
点数
1
食事
自立、自助具などの装着可、標準的時間内に食べ終える
10
部分介助(例えば、おかずを切って細かくしてもらう)
5
全介助
0
2
車椅子からベッドへの移動
自立、ブレーキ、フットレストの操作も含む(歩行自立も含む)
15
軽度の部分介助又は監視を要する
10
座ることは可能であるがほぼ全介助
5
全介助又は不可能
0
3
整容
自立(洗面、整髪、歯磨き、ひげ剃り)
5
部分介助又は不可能
0
4
トイレ動作
自立(衣服の操作、後始末を含む、ポータブル便器などを使用している場合はその洗浄も含む)
10
部分介助、体を支える、衣服、後始末に介助を要する
5
全介助又は不可能
0
5
入浴
自立
5
部分介助又は不可能
0
6
歩行
45m以上の歩行、補装具(車椅子、歩行器は除く)の使用の有無は問わず
15
45m以上の介助歩行、歩行器の使用を含む
10
歩行不能の場合、車椅子にて45m以上の操作可能
5
上記以外
0
7
階段昇降
自立、手すりなどの使用の有無は問わない
10
介助又は監視を要する
5
不能
0
8
着替え
自立、靴、ファスナー、装具の着脱を含む
10
部分介助、標準的な時間内、半分以上は自分で行える
5
上記以外
0
9
排便コントロール
失禁なし、浣腸、坐薬の取り扱いも可能
10
ときに失禁あり、浣腸、坐薬の取り扱いに介助を要する者も含む
5
上記以外
0
10
排尿コントロール
失禁なし、収尿器の取り扱いも可能
10
ときに失禁あり、収尿器の取り扱いに介助を要する者も含む
5
上記以外
0
※(注記)診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続す
ることが必要なものについては、医療費助成の対象とする。
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