遅発性内リンパ水腫とは、突発性または発症時期がわからない高度の難聴が先に発症し、その数年から数十年の後にぐるぐる回るめまい(回転性めまい)を繰り返す病気です。
調査研究班が2020年に実施した全国疫学調査では、約962名と推計されており、患者さんの頻度は人口10万人あたり0.8人程度と推定されています。
調査研究班の実施した疫学調査によると、遅発性内リンパ水腫を発症した患者さんの約半数が9歳以下に高度難聴を発症していました。また、先行する高度難聴の原因としては、原因不明の場合が多く次いで突発性難聴やムンプス難聴の頻度が高いことが明らかになりました。従って、子供の頃から片方の耳が全く聞こえない人、ウイルス感染による内耳炎や突発性難聴になった人に多いと考えられます。一方、成人期になってから発症する患者さんでは先行する高度難聴の原因としては、突発性難聴の割合が多いことが明らかになりました。
原因は分かっていません。以前に発症した難聴が、長い年月を経て内耳に内リンパ水腫を引き起こして発症すると考えられています。
遅発性内リンパ水腫は遺伝性の病気とは考えられていません。
片側または両側の耳に高度難聴が発症し、その数年から数十年の後にバランス感覚を担う器官である前庭に内リンパ水腫が生じ、その結果回転性めまいを繰り返すと考えられています。
根治できる治療法はありません。しかし、めまい発作を予防するために利尿薬などの薬物を服用します。また、ストレスがめまい発作を引き起こしやすくしている場合は、日常生活の環境を改善してストレスを軽減することも有効とされています。これらの保存的な治療でめまい発作が制御できない場合は、中耳加圧治療や手術を行います。
めまい発作の後、初期には軽いふらつきにまで回復しますが、めまい発作を繰り返すと持続するふらつきが残ります。さらにめまい発作を繰り返して後遺症期になると、めまい発作は止まりますが高度で持続するふらつきが持続し、日常生活に大きな支障が生じます。
過労や介護などの問題によりストレスを抱えている場合や、睡眠不足や不規則な生活を送っている場合には、めまい発作が起こりやすくなります。生活環境を改善し、ストレスの軽減を図ることが大切です。
該当する病名はありません。
日本めまい平衡医学会ホームページ「診療ガイドライン等」
https://www.memai.jp/
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