月刊 経団連2022年5月号
特集 人権を尊重する経営の促進
巻頭言
スタートアップエコシステムの強化に向けて
今後10〜20年の世界におけるメガトレンドが、デジタルトランスフォーメーション(DX)とグリーントランスフォーメーション(GX)であることに議論の余地はない。その中で、今後日本経済が持続的な成長を実現していくためには、言うまでもなくイノベーションの創出が不可欠である。
特集
人権を尊重する経営の促進
「人権の尊重」は人類共通の不可欠な価値観である。「誰一人取り残さない」人間中心の経済社会の構築を目指す、持続可能な開発目標(SDGs)を達成するためにも、すべての国、組織、人々が人権を尊重する必要がある。
企業には、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」を踏まえ、人権を尊重する経営が求められており、人権への取り組みは顧客との信頼関係や投資家による評価、採用競争力に影響するとの認識も高まりつつある。また、特定の地域での人権侵害を理由として経済制裁や貿易制限措置が行われている中で、レジリエントなサプライチェーン構築の観点からも、人権への取り組みの重要性が高まっている。
座談会:企業価値向上に資するビジネスと人権への取り組みとは
- 安永 竜夫 (経団連副会長、開発協力推進委員長/三井物産会長)
- 二宮 雅也 (経団連審議員会副議長、企業行動・SDGs委員長/SOMPOホールディングス特別顧問)
- 遠藤 信博 (経団連サイバーセキュリティ委員長/日本電気会長)
- 濵本 正太郎 (京都大学大学院法学研究科教授)
- ■しかく 企業が「ビジネスと人権」に取り組む意義
- 「ビジネスと人権」における競争条件の平準化への挑戦
- 人間の安全保障とSDGsを見据えた取り組みの深化
- 人権DDによりグローバルサプライチェーンの付加価値を創造
- 人権の尊重は価値創造集団にとっての最重要課題
- ■しかく 企業価値や競争力向上に向けた具体的な取り組み
- 自社の価値観を具体化する人権の実践
- サプライチェーンの「見える化」による安心の提供
- 人権尊重を価値創造の原点とする企業文化
- ■しかく 政府の役割として期待するもの
- 人権DDの義務付けも今後の論点
- 人間社会を進化させるものには規制緩和を
- 国益を踏まえた地政学リスクへの対処を
- 政府によるガイドラインの策定と情報収集力の強化を
- ■しかく マルチステークホルダーとの連携による課題解決
- 課題解決型の対話と連携の強化
- 業種横断的ネットワークの構築とサプライヤーとのコミュニケーション
- 業種やセクターを横断する認証制度の活用
- 市民社会との対話の重要性
- ビジネスと人権を巡る世界の動き
- 国連「ビジネスと人権に関する指導原則」とは
- 国際的に認められた人権とは
企業行動憲章 実行の手引き「第4章 人権の尊重」─改訂の視点
上脇 太(経団連企業行動・SDGs委員会企画部会長/積水化学工業取締役専務執行役員)
- 指導原則が求める人権尊重の取り組み
- 積水化学グループにおける人権の取り組み
ビジネスと人権分野における日本政府の取り組みと企業への期待
中谷 元(内閣総理大臣補佐官(国際人権問題担当))
「ビジネスと人権」を巡る立法措置の国際的潮流
―様々な立法アプローチの整理と展望
梅津 英明(森・濱田松本法律事務所パートナー弁護士)
- 様々な立法のアプローチ
- 各国の主要な立法措置の潮流
- 今後の立法措置の展望と企業に求められる姿勢
ソニーにおけるビジネスと人権
―多様な事業特性に応じた取り組み
神戸 司郎(ソニーグループ執行役専務)
- 人権デュー・ディリジェンスの実施
- 多様な事業特性に応じた取り組み
住友金属鉱山グループにおける「ビジネスと人権」の取り組み
―「2030年のありたい姿」の実現に向けて
金山 貴博(住友金属鉱山常務執行役員人事部長(サステナビリティ推進部担当))
- 2030年のありたい姿
- 先住民の権利
- サプライチェーンにおける人権
サプライチェーンを中心とした人権への取り組み
大塚 友美(トヨタ自動車執行役員 Chief Sustainability Officer)
- 現場で働く一人ひとりへの思いをベースに
- 移民労働問題への取り組み
- ビジネスパートナーとともに
- ステークホルダーの期待に応えたカイゼン
デジタルの力で、人権の推進に寄与する
―Googleの取り組み
https://about.google/intl/ALL_jp/human-rights/
Google
- 人権
- 上級管理職による監視と取締役会によるガバナンス
- 人権プログラム
- 透明性
ステークホルダーからの期待
労働組合の視点から
グローバルサプライチェーンにおける建設的な労使関係の構築に向けて
安河内 賢弘(日本労働組合総連合会副会長/ものづくり産業労働組合(JAM)会長)
投資家の視点から
人権に前向きに取り組む企業姿勢が見える開示を
荒井 勝(日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)会長
/Federated Hermes EOS上級顧問)
消費者の視点から
次世代を中心とした消費者の大きな変化
―人権問題に向き合う企業が生き残る時代へ
河野 康子(日本消費者協会理事)
市民社会の視点から
市民社会とともに取り組むビジネスと人権
若林 秀樹(ビジネスと人権市民社会プラットフォーム(BHRC)代表幹事)
一般記事
【提言】
戦略的なインフラシステムの海外展開に向けて
―2021年度版を公表
https://www.keidanren.or.jp/policy/2022/023.html
安永 竜夫(経団連副会長、開発協力推進委員長/三井物産会長)
遠藤 信博(経団連開発協力推進委員長/日本電気会長)
- 新型コロナウイルス感染症への対応の継続・強化
- 国内の脱炭素化に向けた取り組みと連動したグリーン戦略の推進
- 地政学上・人権上のリスクを踏まえたサプライチェーンの強靭化
- 国際標準化・国際ルール整備への関与
- 有事への対応を含むファイナンス等支援の強化
- 官民一体となった案件形成
連載
-
あの時、あの言葉
国営航空会社のグレートキャプテンからの耳を疑う言葉
草開 千仁(ウェザーニューズ社長) -
Essay「時の調べ」
音楽の価値を巡って
須藤 岳史(ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者)