テーマ3「こころ」(文芸・心性)の研究
研究分担者
テーマ3の研究分野
テーマ3の研究内容
古代における「こころ」(心性)のあり方を2側面から追究する。(1) 物語や伝承など各テクストがいかなる「こころ」の世界を立ち上げているか。民俗学や法制史学の成果を参照しつつ、古代社会における諸々の文化的規範や諸制度の面から考察する。(2) 文芸テクストが人々の心性を規制し、変化させていく様を分析する。諸文芸テクストの多くは、権力のもとに成立し、時代を越えて読まれ、「古典」としての地位を獲得する。権威をまとった文芸テクストが人々の価値観に影響を及ぼし、その心性を支配し変化させていく様子を記述する。
総じて、文芸テクストを分析する際には、隣接する韓国・中国・ベトナムの資料群(文物や諸伝承)に目を向け、それらとの比較を通して日本の古代テクストの特質を世界的視座からとらえていく。上記の研究に関わる明治大学所蔵および新たに購入する資料群について利用・活用できる環境を整え、データベース化することで、日本古代心性研究の基盤を整備し、世界に発信する。具体的には以下の研究課題を実施する。
1 文学作品の文字使用と表現: 『万葉集』が文字の使用によって、どのような「こころ」の世界を立ち上げたのか。
2 漢字世界としての古代: 古代における神話・歴史・歌などの文芸テクスト生成と漢字世界との関わり。
3 日本古代文学と琉球文学の発生: 琉球地方の旧記類と口承神歌の文化資源化。口承と心性の継承の研究。
4 王朝物語の構成要素: 『源氏物語』が立ち上げた心性世界と、それが後世に及ぼした影響。
5 平安時代仏教の研究: 平安時代僧伝史料の文化資源化と、仏教テクストの展開と心性の変容研究。
6 平家物語とその周辺資料を用いた古代心性研究: 『平家物語』に継承された古代の心性の掘り起こし。
以上の個別研究をアジアを視野に入れて推進しつつ、それぞれの成果を照らし合わせて、古代における「こころ」の世界の展開と変容を総体的に描き出す。
テーマ3の年次別計画
○しろまる平成26年度
【1】 1次・2次資料群の古代学上の活用
(1)和歌、伝承、物語など各種文芸テクストが立ち上げる「こころ」の世界についての研究(その1)
(2)韓国、中国、ベトナムにおける古代関係諸資料の予備的調査と比較文学的読解
(3)明治大学所蔵資料のうち、心性に関する資料の文化資源化に向けての研究。心性研究に必要な資料の選定とデータベース化にむけての準備。
【2】 総括的研究
・古代における諸テクストと「こころ」との相互反射的様態の研究を推進するために、プロジェクト参加者の間で必要と考えられる問題意識のすり合わせを行う。データベース化する資料とその方針を決定し、作業を開始する。古代における心性研究の統合と総合化に向けての調査と研究会を開く。
*研究方法や運営については3テーマ共同で会議体を組織して、毎年3回協議・点検・評価・改善を行う。
○しろまる平成27年度
【1】 1次・2次資料群の古代学上の活用
(1)和歌、伝承、物語など各種文芸テクストが立ち上げる「こころ」の世界についての研究(その2)
(2)韓国、中国、ベトナムにおける古代関係諸資料の調査と比較文学的読解(その1)
(3)和歌、伝承、物語など各種文芸テクストが立ち上げた「こころ」世界の機能と効果影響についての研究(その1)
【2】 総括的研究
・古代における諸テクストと「こころ」との関係性に関する試験的研究会を開催する。諸資料のデータベース化作業の開始する。その方向性について検証し、必要な場合は修正を行う。
○しろまる平成28年度
【1】 1次・2次資料群の古代学上の活用
(1)和歌、伝承、物語など各種文芸テクストが立ち上げる「こころ」の世界についての研究(その3)
(2)韓国、中国、ベトナムにおける古代関係諸資料の調査と比較文学的読解(その2)
(3)和歌、伝承、物語など各種文芸テクストが立ち上げた「こころ」世界の機能と効果影響についての研究(その2)
【2】 総括的研究
・古代における諸テクストと「こころ」との関係性に関する試験的研究会を開催する。諸資料のデータベース化作業について検証し、必要な場合は修正を行う。
○しろまる平成29年度
【1】 1次・2次資料群の古代学上の活用
(1)和歌、伝承、物語など各種文芸テクストが立ち上げる「こころ」の世界についての研究(その4)
(2)韓国、中国、ベトナムにおける古代関係諸資料の調査と比較文学的読解(その3)
(3)和歌、伝承、物語など各種文芸テクストが立ち上げた「こころ」世界の機能と効果影響についての研究(その3)
(4)和歌、伝承、物語など各種文芸テクストと「こころ」との相互交渉的関係に関する研究(その1)
【2】 総括的研究
・諸資料のデータベース化作業を行う。古代における諸テクストと「こころ」の編成に関する公開研究会(シンポジウム)を開催する。研究成果のまとめと公開に向けての意見交換と調整を行う。
○しろまる平成30年度
【1】 1次・2次資料群の古代学上の活用
(1)和歌、伝承、物語など各種文芸テクストが立ち上げた「こころ」世界の機能と効果影響についての研究(その4)
(2)和歌、伝承、物語など各種文芸テクストと「こころ」との相互交渉的関係に関する研究(その2)
(3)和歌、伝承、物語など各種文芸テクストと「こころ」との関係性に関する総合的研究
【2】 総括的研究
・諸資料のデータベース化作業を完了する。
古代における諸テクストと「こころ」の編成に関する総合的シンポジウムを開催する。研究成果をとりまとめ、ウェブ、電子媒体および、出版物として公表する。
期待される成果