夜遅く、あなたは家に帰る。1階に人の姿はなく、エレベーターだけがあった。
あなたがエレベーターのボタンを押すと、エレベーターの扉が開いた。中の薄暗い照明が四方の壁の金属光沢にちらつく。
ボタンが整然と並ぶ、一番上は13階。
あなたは中に入り、12階のボタンを押した。
あなたが住んでいる階だ。
エレベーターがゆっくりと動く。
2階。
3階。
4階。
5階。
6階。
7階。
8階。
9階。
10階。
11階。
12階。ドアが開き、あなたはエレベーターを出る。するとそのとき、あなたの携帯電話が鳴った。
1秒すると、携帯が鳴り止んだ。
あなたは携帯を手に取り、番号を調べた。
そして折り返し掛ける。すると向こうが電話に出たときになって気づいた。この番号は
あなたの家の電話番号だ。
だが、あなたは一人暮らし。
向こうは何も言わず、重く息切れする声だけが聞こえる。
あなたは電話を切り、それから自分の家へと向かう。ドアの前に着き、せわしなく鍵を開けて、中に入る。
暗い部屋、何も見えない。ドアを閉じ、電灯のスイッチを探る。
だがあなたが触れたのは手であった。
その手はあなたの口を塞ぎ、続いてあなたの首を絞めた。
あなたは必死にもがく、だがどうにもならない。両足が無意識に何かとぶつかる。家の電話のようだ。
「お掛けになった番号は現在......」
冷たい女の声。
すると後ろにいた者が異様に興奮してあなたを放すと、電話に駆け寄り電話を切った。
時間にして1秒間の出来事だった。
あなたはこっそり後ろへ手を伸ばす、そこだ、隠していた消音拳銃。
そして、シュッと音がして、そいつは倒れた。
それと同時に家の電話が鳴った。あなたは駆けつけて電話に出る。だというのに何かを突如理解したようだった。
あなたは何も言わない。だが、心臓は猛烈に脈打ち、呼吸はこれ以上なく重たい。
少しして、向こうが電話を切った。
あなたは自分が殺したあの死体のそばに寄る。暗闇に目が慣れた。
あなたの姿をしたそいつを、あなたは見た。
あなたは部屋を見回す。
数え切れないあなたの死体が横たわっている。そのどれにも銃創がある。
銃には1発しか入っていない、そんなのわかりきってる。
扉の外で鍵を開ける音が伝わってくる。
あなたは銃を捨て、部屋の隅へ、電灯のスイッチのそばへ立った。
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