1.国際機関等との連絡調整事務の目的
増大する電波需要に対応するためには、適切な技術基準の策定を通じて、周波数利用効率の高い技術を導入していくことが求められます。加えて、近年の電波利用のグローバル化を背景に、我が国の無線技術を国際標準化することも重要です。
このため、我が国の周波数ひっ迫事情を反映した周波数利用効率の高い無線技術について、その国際標準化を積極的・戦略的に進め、国際的に調和の取れた技術として技術基準を策定できるように、「周波数ひっ迫対策のための国際機関等との連絡調整事務」を実施しています。
2.国際機関等との連絡調整事務の概要
国際的に調和の取れた、周波数利用効率の高い技術を技術基準として策定するため、以下の事務を実施しています。
- 国際標準化連絡調整事務
重点的に国際標準化を行うべき技術項目の調査、国際会議への出席及び主要国への働きかけ等
- 我が国の無線システムの円滑な運用確保に必要な連絡調整事務
外国主管庁との周波数調整会議への出席や、国際電気通信連合(ITU)への周波数使用に係る各種申請及びその準備
3.国際機関等との連絡調整事務案件の一覧表
| 案件名 | 概要 |
|---|---|
| ① 次世代移動通信の国際協調のための国際機関等との連絡調整事務 | 次世代の移動通信システム(IMT)の周波数をはじめとする陸上移動通信システムについて、各国の検討状況や動向を調査するとともに、各国との調整、国際標準化活動への提案を通じて、我が国の周波数事情・開発技術と国際標準化との調和が図れるよう、国際機関や関連諸国等の動向把握や連絡調整を行う。 |
| ② NTN利用拡大を見据えた宇宙通信分野における電波利用技術の国際機関等との連絡調整事務 | 衛星及び科学分野の無線通信システムで利用される周波数の分配に関して、関連する電波利用技術等が、我が国の周波数事情や既存無線システムの保護等も踏まえた形で国際標準化されるよう、国際機関や関連諸国等の動向把握や連絡調整を行う。 |
| ③ 協調型自動運転の実現に向けたV2X通信技術の国際協調のための国際機関等との連絡調整事務 | 日本国内において、5.9GHz帯 V2X通信やV2N通信を用いた実証実験が進むなど自動運転の社会実装に向けた検討が加速している中、国際標準と齟齬が生じないよう国際機関や関連諸国等の動向等を把握し、日本の技術・検討状況等を適切に国際標準に反映させるための連絡調整を行う。 |
| ④ WRC-27に関する航空無線通信の国際協調のための国際機関等との連絡調整事務 | 新たな航空システムに関連する無線システムに関し、周波数を効率的に利用する我が国の技術が国際標準として採用されるよう、国際機関や関連諸国等の動向把握や連絡調整を行う。 |
| ⑤ Society5.0時代における固定無線システムの大容量化のための国際機関等との連絡調整事務 | 主要国における固定無線システム等の技術動向や標準化に向けた取組等の情報収集を行い、国内の関係団体と連携を図りつつ、技術条件に関する国内意見の集約及び国際標準への反映に向けた連絡調整を行う。 |
| ⑥ ワイヤレス電力伝送システムによる無線通信の保護のための国際機関等との連絡調整事務 | 主要国におけるワイヤレス電力伝送システムの技術動向や標準化に向けた検討状況を調査し、我が国の技術条件等を国際標準に反映させるべく、国際機関や関連諸国等の動向把握や連絡調整を行う。 |
| ⑦ 衛星ダイレクト通信に関する周波数分配及び技術基準の国際協調に向けた国際機関等との連絡調整事務 | 低軌道衛星(衛星コンステレーション)を活用した地上のスマートフォンによる衛星との直接通信(衛星ダイレクト通信)が各国で検討される中、我が国の衛星ダイレクト通信が国際的に整合性の取れたものになるよう、国際的な周波数分配の確保に向けて、国際機関や関連諸国等の動向把握や連絡調整を行う。 |
| ⑧ 電波利用環境維持のための高周波利用設備等に関する国際機関等との連絡調整事務 | 良好な電波利用環境の維持のため、妨害源となり得る機器に関する国際無線障害特別委員会(CISPR)規格の許容値や測定法を国内法令へ反映させ、国内基準をCISPR規格へ盛り込むため、国際機関や関連諸国等の動向把握を行う。 |
| ⑨ 船舶の無線航行の安全性・効率性向上のための無線システムの高度化に関する国際機関等との連絡調整事務 | 次世代GMDSS技術のうち、HF/MF帯及びVHF帯の海上移動通信用周波数の利用改善及びVDESの性能基準の作成等に向けて、我が国の提案がITU及びIMO等の基準に反映されるよう、国際機関や関連諸国等の動向把握を行う。 |
| ⑩ 地上デジタルテレビジョン放送高度化技術や新しい放送関連技術等の国際標準化のための国際機関等との連絡調整事務 | 日本国内の地デジ高度化方式の規格化の動向や、通信放送連携サービスや高度没入型感覚メディアシステム、AI技術の活用等の新しい放送関連技術の進展を踏まえ、我が国の地デジ高度化技術等を適切に国際標準に反映するべく、国際機関や関連諸国等の動向把握を行う。 |
国際標準化連絡調整事務の適正な実施のための評価体制
国際標準化連絡調整事務は電波利用料を財源としていることから、その実施に当たり透明性・実効性を高めるため、「電波利用料による研究開発等の評価に関する会合」(以下「評価会」という。)を開催し、事前評価、継続評価及び終了評価を実施しています。
評価会での評価は、各国際標準化連絡調整事務案件について、
- 予算要求段階における新規案件の企画・立案に当たり、国際標準化活動実施の必要性及び国際標準化に向けた活動の実施可否等を判断するために実施する評価(事前評価)
- 実施中の国際標準化連絡調整事務について、国際標準化に向けた活動の実施状況及び次年度の実施計画等が効率的か否かに関する評価(継続評価)
- 国際標準化連絡調整事務の終了後に、当該期間を通して得られた成果について実施する評価(終了評価)を実施しています。
なお、各評価における具体的な評価の観点は以下のとおりです。
- <事前評価>
-
- 国際標準化活動を行う必要があるかどうか
- 対象とする技術に関し国際標準化活動を実施することが合理的かどうか
- 実施体制が妥当であるか
- 予算額が妥当であるか
- 上記を踏まえ、総合的に有益と考えられるか
- <継続評価>
-
- 実施年度の目標がどの程度達成されたかどうか
- 今後の実施計画及び体制等が妥当か
- 上記を踏まえ、総合的に適切に実施されているかどうか
- <終了評価>
-
- 事前に設定した成果目標に対する達成度
- 実施体制が妥当であったかどうか
- 資金の使用が効率的であったか否か
- 国際標準の技術基準への反映がなされた(なされる見込み)かどうか
- 上記を踏まえ、総合的にみて有益であったか否か
評価会の構成員一覧(五十音順、敬称略)
| 氏名 | 所属 |
|---|---|
| 井家上 哲史 | 明治大学 |
| 岩井 誠人 | 同志社大学 |
| 大柴 小枝子 | 京都工芸繊維大学 |
| 加藤 寧 | 東北大学大学院 |
| 笹瀬 巌 | 慶應義塾大学 |
| 太郎丸 眞 | 福岡大学 |
| 橋本 修 | 青山学院大学 |
| 長谷山 美紀 | 北海道大学大学院 |
| 前原 文明 | 早稲田大学 |
| 山尾 泰 | 電気通信大学 |
過去の評価会での議事概要
- 事前評価
- 令和2年度(令和元年7月18日開催)
- 令和3年度(令和2年8月4日及び30日開催)
- 令和4年度(令和3年7月21日開催)
- 令和5年度(令和4年7月25日開催)
-
- 該当案件なし
- 令和6年度(令和5年7月20日開催)
- 継続評価
- 令和2年度(令和2年3月13日開催)
- 令和3年度(令和3年3月12日開催)
- 令和4年度(令和4年3月8日開催)
- 令和5年度(令和5年3月7日開催)
- 令和6年度(令和6年3月1日開催)
- 終了評価
- 平成30年度(令和元年8月28日)
- 令和元年度(令和2年8月31日開催)
- 令和2年度(令和3年6月25日開催)
- 令和3年度(令和4年7月25日開催)
- 令和4年度(令和5年6月22日開催)
-
- 該当案件なし
4.国際機関等との連絡調整事務の結果
- 平成30年度終了案件リンク先PDFファイルを別ウィンドウで開きます
- 令和元年度終了案件リンク先PDFファイルを別ウィンドウで開きます
- 令和2年度終了案件リンク先PDFファイルを別ウィンドウで開きます
- 令和3年度終了案件リンク先PDFファイルを別ウィンドウで開きます
- 令和5年度終了案件リンク先PDFファイルを別ウィンドウで開きます
担当:総合通信基盤局電波部電波政策課国際周波数政策室