○しろまる 概要
1.概要
両側の多発性鼻茸と粘調な鼻汁により、高度の鼻閉と嗅覚障害を示す、成人発症の難治性副鼻腔炎である。抗菌薬は無効であり、ステロイドの内服にのみ反応する。鼻腔内に鼻茸が充満しているため、鼻副鼻腔手術で鼻茸の摘出を行うが、すぐに再発する。鼻閉と嗅上皮の障害により嗅覚は消失する。嗅覚障害のため風味障害を含めた味覚障害を来す。気管支喘息、NSAID-exacerbated respiratory disease (N-ERD: アスピリン不耐症、NSAID不耐症)を伴うことが多い。鼻閉のための口呼吸が喘息発作を誘発し、著しい呼吸障害を起こす。また中耳炎を伴うこともあり、好酸球性中耳炎と命名されている。この中耳炎は、難治性で聴力障害は進行し、時に聾に至る。鼻粘膜には多数の好酸球浸潤を認めるが、中耳炎を伴うと耳漏にも多数の好酸球浸潤が認められる。経口ステロイドは、本疾患が良性疾患のため、主治医は継続使用にためらいを感じ、数か月で投与を中止すると増悪をする。上気道感染によっても症状が増悪するため再度経口ステロイドを投与せざるを得ない状況となる。
2.原因
原因は不明。鼻茸はType 2炎症が主体であるともに、凝固系が亢進し線溶系が抑制されており、フィブリン沈着が認められる。
3.症状
多発性鼻茸と粘調な鼻汁による高度の鼻閉と口呼吸。鼻閉と嗅上皮の障害による進行する嗅覚障害が生じ、最終的には嗅覚は消失する。味覚障害も起こす。成人発症であり、病側は両側である。気管支喘息を合併することが多く、口呼吸により誘発される喘息発作を起こすと、ひどい呼吸困難に陥る。粘調な耳漏や難聴を呈する難治性中耳炎を伴うこともあり、進行すると聾に至る。
4.治療法
経口ステロイドが唯一有効。手術により鼻腔に充満した鼻茸を摘出すると、鼻閉は一時的に改善するが、すぐに再発し、鼻腔を充満する。鼻茸スコア5以上の場合には、ヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクロナール抗体が有効であり、保険適応がある。
5.予後
軽症から重症を含めて、内視鏡下鼻内副鼻腔手術を行った場合、術後6年間で50%の症例が再発する。特にアスピリン喘息に伴う好酸球性副鼻腔炎では術後4年以内に、全例再発する。
経口ステロイドの内服で軽快をみても、感染、体調変化などにより増悪し、これを生涯繰り返す。ヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクロナール抗体も投与を止めると鼻茸は再度増大する。
好酸球性副鼻腔炎には、重症度が存在する。軽症では、手術で改善することもあるが、重症では、極めて難治性である。
○しろまる 要件の判定に必要な事項
1. 患者数(令和元年度医療受給者証保持者数)
9,211人
2. 発病の機構
不明
3. 効果的な治療方法
未確立(経口ステロイドにて軽快。中止すると増悪)
鼻茸スコア5以上の場合には、ヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクロナール抗体の保険適応がある。中止すると増悪する。
内視鏡下鼻副鼻腔手術(一時的に鼻閉が改善する。)
4. 長期の療養
必要
5. 診断基準
あり(研究班作成の診断基準あり)
6. 重症度分類
1)又は2)の場合を対象とする。
1)重症度分類で中等症以上を対象とする。
2)好酸球性中耳炎を合併している場合
○しろまる 情報提供元
「好酸球性副鼻腔炎の診断基準」班
研究代表者 福井大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科 教授 藤枝重治
<診断基準>
Definiteを対象とする。
好酸球性副鼻腔炎の診断基準
<診断基準:JESRECスコア>
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研究班名 | 好酸球性副鼻腔炎のQOL調査とQOLに基づいた治療ゴールの設定班 研究班名簿 |
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情報更新日 | 令和6年4月(名簿更新:令和7年8月) |