金属の接着性を安定させる金属表面改質技術
ものづくりを行う上で欠かせないのが、モノとモノをくっつける「接合」の技術。世の中には様々な接合の技術がありますが、その中の一つに「接着」があります。日常の中でも、水糊や木工用接着剤などを使用されると思いますが、ここでは主に金属を接着する技術について紹介します。
KOBELCOでは、接着剤自体を作っているわけではありませんが、接着剤の性能を最大限発揮するための表面処理技術を開発しました。では、一体どんな技術なのでしょうか。
金属は接着が難しい?
接着では、強度と耐久性が製品の性能や信頼性に関わる重要なポイントとなります。この性能を左右するのが金属と接着剤との密着性で、密着性が悪いと、一見、ちゃんとくっついたように見えてもすぐに剥がれてしまいます。そこで密着性を上げるための工夫として、接着表面に前処理を施します。接着材は樹脂でできているため、金属材料との相性は必ずしもよいとは言えず、金属の接着ではこの前処理がとても重要になるのです。前処理によって、金属表面の汚れを落とすだけでなく、表面の性状を接着に適した状態に変えることで、接着性能を高めることができます。しかしながら、従来、樹脂が金属に接着するメカニズムは複雑で理解が難しく、経験則で対策が講じられてきました。接着接合の強度が発現するメカニズムが十分に理解されていないため、完成した製品の強度や信頼性を予測する手段が十分に確立できておらず、信頼性が要求される部位への適用は困難でした。
接着剤の性能を最大限引き出す表面処理技術とは?
KOBELCOでは、スーパーコンピュータでの解析結果を活用した界面構造のモデリングやSPring-8を活用した最先端の分析技術を駆使し、金属材料の表面状態をナノレベルで制御することで、接着剤との化学的相性に優れた理想的な表面状態の設計に成功しました。これにより、接合寿命を従来の10倍程度まで向上させることができる性能※(注記)を実現しました。
また、この表面状態を生成するための工程を極めてシンプルに設計し、さらに従来の化学処理で使用されるような有害な酸や重金属などの薬剤の使用も排除したことで、適用へのハードルを大幅に下げています。
- ※(注記)特定の引っ張り荷重を与えた条件下で、当社表面処理未使用の一般材と比較した試験結果
この技術はどこで使われるの?
接着剤による接合は、他の接合方法に比べ、高い気密性や水密生、振動の抑制効果を有しています。また、高い寸法精度が要求される小型部品やシール性が必要な部品にもつかえること、さらには、アルミやステンレスなど、金属の種類を選ばず、金属と樹脂といった異種材料でも接合できることから、近年、あらゆる分野で接着剤の適用が検討されています。
ここに、KOBELCOが開発した表面処理技術が加わることにより、接着剤の性能を最大限引き出し、高い信頼性と強度を付与することによって、自動車や航空機などの輸送機における構造設計の軽量化をはじめ、建築・土木、エレクトロニクスなど、接着剤の可能性を大きく広げることに成功しました。
なぜ、KOBELCOは表面処理技術を開発できたの?
KOBELCOでは、金属の接着力の支配要因である、金属材料と接着剤の界面で生じる化学反応や力学特性に関して、それらを解析する最先端の材料評価/分析/解析技術や、素材表面の物性を制御する改質技術といった素材メーカーならではの研究開発力を⻑年培ってきました。これらの技術を最大限活用し、”技術と技術のかけ算”によって、接着剤との相性に優れた材料表面改質技術を開発することができました。