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コラム
中東カタルシス
中東に関してしばしば耳にするのが、事情が「複雑でよくわからない」という嘆きです。そうした中東事情に関しての見通しをよくするための交通整理を行い、少しでももやもやした気持ちを解消していただければと用意したのが本コラムです。本コラムを読んで中東に関する理解をより深めてほしいと思います。
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第2回 アサド政権崩壊後のトルコにおけるシリア難民──帰還の可能性についての考察 / ダルウィッシュ ホサム・今井 宏平 2024年12月のアサド政権崩壊は、シリア紛争(シリア内戦)の展開とその地域的帰結において、画期的な転換点となった。その影響が最も顕著に見られたのは、世界最大規模のシリア難民を受け入れてきたトルコである。シリア紛争が勃発した2011年3月の翌月からシリア難民を受け入れてきたトルコには、最も多い時期で370万人以上の認定難民が存在していた。2025年8月時点でも、認定されたシリア難民が300万人以上、未認定の難民がおよそ100万人、さらに2023年までに約24万人がトルコ国籍を取得していた。アサド政権が崩壊して以降、シリアに戻ったシリア人は40万人ほどである。40万人という数字は、かなり多くの人数であることは確かだが、トルコに滞在するシリア人の規模から考えると、予想されたほど多くはない。すなわち、シリア人がトルコに逃れた主要因であったアサド政権が崩壊し、シリア紛争が終結したにもかかわらず、帰還の動きは一部に限られている。 2025年12月05日
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第1回 PKKの解散は順調に進むのか――2009年との比較を通して / 今井 宏平 2025年5月12日、クルディスタン労働者党(PKK)が武装解除と解散を発表した。少なくとも双方合わせて4万人以上が亡くなるなど、1984年から約40年以上にわたりトルコ政府と熾烈な抗争を続けてきたPKKの武装解除と解散は、世界中で驚きをもって報じられた。クルド人はトルコ、イラク、イラン、シリアという4カ国に跨って居住しており、さらに、ヨーロッパを中心に多くのクルド人がディアスポラとして暮らしている。その事実に鑑みれば、PKKの武装解除のインパクトは中東地域にとどまらない大きなものとなることが予想される。 2025年10月03日