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中日の良き伝統が知らぬ間に...元スカウトが提言『組織としての育成論』ドラフト"後"も担当スカウトが積極関与を

2025年11月30日 11時45分

仮契約し、岡野スカウト(右)と笑顔を見せる中西=横浜市港北区の新横浜プリンスホテルで


◇中田宗男の「スカウト虚々実々」
スカウト歴38年、元中日の中田宗男さん(68)が今回のテーマに選んだのは新人の育成論だ。調査、指名、交渉を経てチームの一員になった"金の卵"をいかにふ化させるか。「ドラフト会議後」こそ、スカウトには重要な任務があると力説した。
今年もドラフト会議が無事終わりました。中日は1位で中西聖輝(青学大)を単独入札。智弁和歌山高時代には馬力があり、ポテンシャルが高いというイメージです。ただ、以前のように候補者を自分の目で見ているわけではありません。その選手の長所も短所も一番知っているのは、1年間追ってきたスカウトなのです。
「会議まで」が重要なのはもちろんですが、今回お伝えしたいのは「会議後」です。指名、交渉、入団。これは一区切りですが、スカウトにはここからも大切な仕事が待っています。それは「見守る」ことです。1月の合同自主トレに始まり、キャンプ、オープン戦はあっという間に終わり、開幕すれば待ったなし。試合はもちろん、練習からファンや報道陣に注目されます。皆さんも新入生や新入社員のころを思い出してください。環境が大きく変わると、心身ともに疲れたはずです。
プロでの生活は、それまでに経験したことがない体の張りをもたらします。そんな時にコーチからフォームを矯正されたり、体に異常が出たりすれば...。吉見一起、大野雄大、今季の金丸夢斗。故障を持っていると分かっている新人ならばいいのです。「大丈夫。これくらいならできる」という軽微な異常こそ怖い。かばっているうちにフォームのバランスを崩し、アマチュア時代の輝きを取り戻せなかったケースを見てきました。
新人の「ベスト」を知っているのはスカウトです。短所も把握しています。異変を誰よりも早く察知し「実は...」という本音を聞き出せるのもスカウトだと思います。星野仙一監督はよくこう言っていました。
「スカウトが判断しろ」「おまえらが見て、言ってこい」。体力強化から投球練習、さらに実戦デビューとステップアップするGOサインをわれわれに委ねてくれていたのです。もちろん、今のスカウトも自主トレからキャンプとしっかり見ています。ただ、ドラゴンズの良き伝統は、知らぬ間になくなっているように感じます。よく言えば現場に預ける。言い換えれば、口を出さない。そうした雰囲気になってしまったことは元スカウト部長の私にとって、最大の反省点の一つです。
スカウトがほれ込んだ「ベスト」で駄目なら仕方ありません。しかし、未知の環境に飛び込むと焦りもあれば自信も失います。今までできていたことができない...。そこで自分を見失わせてはいけません。「いい時はこうだった」と伝えられるのがスカウトの強み。よく「即戦力」という言葉が使われますが、スカウトからすれば「1年目」に使えるかどうかだけを考えるなんて、あり得ません。組織としての育成論を考える上で、スカウトが積極的に関与することが大切だと考えます。(中日ドラゴンズ・元スカウト)
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