3三角戦法
先手番による3手目△しろさんかく7七角
3三角戦法(さんさんかくせんぽう)は、将棋の戦法の一つである。主に後手番が用いる指し方。
初期の角交換を可能にするため、角道を閉じずに早期に3三に角行を移動することを特徴としている。戦法としては柔軟性があり、角交換の有無にかかわらず、向かい飛車もしくは居飛車ポジションになる可能性がある。
先手が使用する場合、「3手目7七角戦法」と呼ばれる。
この戦法に相手が▲さんかく6六歩(7七角戦法相手なら△しろさんかく4四歩)から角道を止めて囲いを築いたとしても、形勢や後の進行の優劣はともかく主導権を握れ、戦術の言い分は通ることになる。
4手目△しろさんかく3三角
[編集 ]最も一般的なバリエーションであり、一部の棋士が使用するバリエーションは、「4手目△しろさんかく3三角戦法」である。これは先手の初手▲さんかく7六歩から△しろさんかく3四歩とし、以下▲さんかく2六歩に対して△しろさんかく3三角と4手目に角を上がり、角交換を迫る。
2010年10月に女流プロ棋士の清水市代 女流王将(当時・先手)とコンピュータ将棋の「あから2010」(後手)が対戦し、後手番のあからが勝利したが、その際の戦型が本項の戦法であった[1] 。
1. ▲さんかく7六歩△しろさんかく3四歩、2。▲さんかく2六歩。
2... △しろさんかく3三角。後手の角行は、局面4手目の動きで、角道を開いたまま3三地点に移動する。
この動きは、後手の左の桂馬によってのみ守られている角行を交換するように先手を誘っている。
そして先手は▲さんかく同角成△しろさんかく同桂を見送る他の手では、例えば▲さんかく4八銀には△しろさんかく2二銀とし、一局ながら後手としては居飛車党で矢倉戦に持ち込むならば満足な序盤戦となる。これは通常の矢倉戦に比べて飛車先を保留している、角の活用が一手早い(三手角になるなら)など多くの利点がある[2] [3] 。
以下は、先手の指し手に合わせて△しろさんかく7三角か△しろさんかく8四角か使い分けが可能。
角交換なら△しろさんかく3三桂型を強制できたという意味で、△しろさんかく2二銀が入ると▲さんかく3三角成には後手に△しろさんかく同銀と形よく応じられる。ただし後手としては2二に銀を上がって、▲さんかく3三角成△しろさんかく同銀が入らない場合で、以下振り飛車にしたい場合は、この銀が活用しづらくなるので、普通は居飛車、特に矢倉か角換わり、角を交換するか5一から7三などと活用して3三銀型にする構想を目指す場合にこの進行は適しているが、もし後手側が強く振り飛車を考えているのであるならば、△しろさんかく2二銀のところで他の指し方、例えばすぐ△しろさんかく2二飛や△しろさんかく3二銀、△しろさんかく4二銀も有る。こう指した方が自然な振り飛車に構えることが出来る。
先手には▲さんかく3三角成、▲さんかく2五歩、▲さんかく5八金右、▲さんかく7八金、▲さんかく6八玉、▲さんかく6六歩などの手段がある。
▲さんかく3三角成の変化は△しろさんかく同銀と応じて手損の無い角換わりの局面となるが、この進行の場合であると先手が▲さんかく2六歩と飛車先を突いているのに後手は飛車先不突になっている。通後手の方からこの様な進行に持ち込もうとした場合4手目△しろさんかく8八角成▲さんかく同銀△しろさんかく2二銀▲さんかく4八銀△しろさんかく3三銀とした進行や後手一手損角換わりと違って後手が手損をしないことになる。
普通の角換わりや一手損角換わりの4手目△しろさんかく8八角成の形と比べると、先手は飛車先の歩を2六で保留している。後手は飛車先不突きとなっている、先手は▲さんかく4八銀と形を決めてしまって▲さんかく2七銀から棒銀に出る筋が無い、後手は左銀を3三まで上がっているが、左金と右銀が動いていないため△しろさんかく4二飛や△しろさんかく2二飛で振り飛車にすることもできる、どちらも手損はしていない、といった特徴がみられる。ほかのの戦型と比べてこの進行は後手が得をしていることになる。先手としては相手左銀が上がった後での▲さんかく3三角成はあまり得にならないのである。
ただし後手が振り飛車にした場合、進行的にはほとんど同じような形になり、さらに後手の一手損では有るものの▲さんかく8八同銀とさせた事が、先手が居飛車穴熊にすんなり組むのを邪魔する意味も有る。後手の得を主張するならば、振り飛車では無く、相居飛車で角換わりにした方が良いことになる。振り飛車としては居飛車穴熊の駒組みを牽制できるなどの理由から公式戦でも採用され、現在は本格的な戦法としても認識されている。
このため、先手は相手が振り飛車を志向しているなら、角交換せず、△しろさんかく2二飛の後も▲さんかく6八玉とする進行が実戦でもみられる。先手▲さんかく2五歩は保留しておいても、この後△しろさんかく2四歩になった場合角交換後の3三桂型もしくは△しろさんかく4四角〜△しろさんかく3三桂で、後に△しろさんかく2五歩▲さんかく同歩△しろさんかく同飛の形の仕掛けが生じているが、実際は先手から角交換しなければ、△しろさんかく3三桂型には組みにくく、一方で後手から△しろさんかく8八角成〜△しろさんかく3三桂ならば先手が2手得をしており、△しろさんかく4四角-△しろさんかく3三桂型も角が目標になる可能性がある。このため以下後手は△しろさんかく4二銀とひとまず▲さんかく6五角の筋を完全に消し、▲さんかく7八玉△しろさんかく6二玉▲さんかく5八金△しろさんかく7二玉と進行とみられるが、先手は、▲さんかく5六歩から6六歩と居飛車穴熊を目指すもしくは▲さんかく4六歩から角交換に備える指し方もみられる。
いずれにしても、そのまま進行しては先手の角が玉を堅く囲うには邪魔になっていくが、先手から角交換すると例えば4手目△しろさんかく8八角成からの進行よりも、先手の手損である。
角を交換する先手
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6手目 △しろさんかく同桂
先手が▲さんかく3三角成と交換、後手は△しろさんかく同桂とする。もし先手が角交換せず他の手を指した場合、それはそれで1局。
角交換のあとは、進行例として図のように▲さんかく2五歩に△しろさんかく2二飛と、向かい飛車。以下▲さんかく6五角には、△しろさんかく4二銀▲さんかく8三角成とわざと成らして、△しろさんかく5五角。これに先手が▲さんかく8八銀なら△しろさんかく2五桂〜3七桂成などの指し方がある。
△しろさんかく2五桂からの2筋逆襲△しろさんかく2五桂ポンの他に△しろさんかく4五桂▲さんかく4八銀△しろさんかく5五角もあり、香取りの△しろさんかく9九角成が受からない。したがって、△しろさんかく2二飛にいったん▲さんかく9六歩として、△しろさんかく9四歩ならそこで角交換から6五角とし、以下△しろさんかく4五桂▲さんかく4八銀△しろさんかく5五角に▲さんかく9七香から▲さんかく7八銀を用意する手もある。4八の銀で飛車の横利きが止まっているため受けにくく、香を取られると場合によっては△しろさんかく8二香や△しろさんかく4四馬〜△しろさんかく2六香などの筋も残っている。
こうして▲さんかく2五歩に△しろさんかく2二飛は鬼殺し向かい飛車に合流する。この向かい飛車については島朗九段の代表著書『島ノート 振り飛車編』(2002年)の第1章鬼殺し向かい飛車でも狙い筋を秘めた指し方が紹介されている。この順は初手▲さんかく2六歩の出だしにおいても△しろさんかく3四歩に▲さんかく7六歩△しろさんかく3三角の他に、△しろさんかく3四歩▲さんかく2五歩△しろさんかく3三角に▲さんかく7六歩とする場合においても△しろさんかく2二飛とすることで合流ができる。
▲さんかく2五歩に代えて、手の広い局面であるが、▲さんかく6八玉が本筋とみられる。他に▲さんかく7八金もあり、これは相居飛車を警戒した手で、△しろさんかく4四角に▲さんかく8八銀の受けを用意した手である。相手としては悪形となってありがたい手であるが、ゆっくりした指し方にしたい場合に適している。
角交換後▲さんかく4八銀には後手△しろさんかく2四歩や△しろさんかく2二飛などを指そうとしている。△しろさんかく2四歩に▲さんかく2三角には△しろさんかく4五角〜△しろさんかく3二銀、△しろさんかく2二飛に▲さんかく6五角は△しろさんかく5五角。
つまり後手は上のそれぞれの手に対して△しろさんかく2二飛、△しろさんかく2二銀、△しろさんかく3二銀、△しろさんかく4二銀、△しろさんかく3二金、△しろさんかく4四歩、△しろさんかく5四歩、△しろさんかく9四歩、△しろさんかく4二飛等、組み合わせだけでも数十通り以上におよぶ。ただし後手としても△しろさんかく4四歩、△しろさんかく5四歩、△しろさんかく9四歩、△しろさんかく4二飛といった手を選ぶのなら普通は△しろさんかく3三角と上がらず指す事が多い手である。
▲さんかく4八銀△しろさんかく2二飛と進んだ場合、ここで先手は▲さんかく6八玉、▲さんかく2五歩などが考えられる。プロ棋士の実戦では、ほとんどが以下▲さんかく6八玉△しろさんかく4二銀の進行がみられる。
▲さんかく6五角が成立しないので▲さんかく3三角成△しろさんかく同桂には▲さんかく6八玉がもっともな進行とみられるが、このように進むのならば▲さんかく4八銀は慌てて指す必要がなく、そして後手が手損無しに△しろさんかく2二飛と回るのを拒否出来ることになる。また先手としても▲さんかく2五歩は△しろさんかく4二銀からお互い玉を囲い合った後で、後手から△しろさんかく2四歩▲さんかく同歩△しろさんかく同飛もしくは△しろさんかく同角の仕掛けや△しろさんかく2五桂ポンの仕掛けなどが残るので、わざわざ一手使って反撃目標となる2五まで歩を伸ばす意味は乏しく、一方で後手から△しろさんかく2四歩と伸ばされても、あまり損になることが少ない。
他にも窪田は石田流に組み替える形なども紹介している他、立石流にした場合に△しろさんかく4四飛〜3四飛に組まれないよう先手が▲さんかく7七角として後手の浮き飛車を阻止する動きには、窪田は△しろさんかく6一金もしくは△しろさんかく3二金を3四にまで繰り出す手で先手を押さえ込む。角交換保留して▲さんかく2五歩型に対しては、向かい飛車から△しろさんかく2四歩▲さんかく同歩△しろさんかく同飛と振り飛車から強気に迫り、▲さんかく同飛と先手が素直に飛車交換に応じるのは△しろさんかく2八飛と下ろした後、△しろさんかく9六歩からの端攻めがある。▲さんかく2五歩と飛車交換を避けるのも、△しろさんかく2二飛▲さんかく8八銀△しろさんかく6五歩から角交換を挑み、△しろさんかく7七角成を取る駒に応じて△しろさんかく6九角や△しろさんかく3九角で後手十分となる[4] 。
対ゴキゲン中飛車
[編集 ]図は △しろさんかく3三角まで
脚注
[編集 ]- ^ 松原仁 プロ棋士対コンピュータ将棋 子ども研究
- ^ 木屋太二『超阪田流角命戦法―阪田流向かい飛車を超えた新戦法! (森内優駿流棋本ブックス)』1999年
- ^ 『我が道を行く定跡の裏街道 (週将ブックス)』2004年の第2章
- ^ 『変幻自在!! 窪田流3三角戦法』、2008
参考文献
[編集 ]- 藤井猛『相振り飛車を指しこなす本 3』浅川書房、2008年。ISBN 9784861370199。
- 藤井猛『相振り飛車を指しこなす本 4』浅川書房、2008年。ISBN 9784861370205。
- 窪田義行『変幻自在!! 窪田流3三角戦法』毎日コミュニケーションズ、2008年。ISBN 9784839930264。
関連項目
[編集 ]外部リンク
[編集 ]- 山純の将棋の基本オープニング:よんてめさんさん角戦報
- 山純の将棋の罠:
- 将棋・序盤の戦略:
- 後手4手目△しろさんかく3三角の序盤戦術表 (日本語)
- 先手3手目▲さんかく7七角の序盤戦術表 (日本語)