2025年末インタビュー:Nさん
まずお一人目はNさんのご登場。
長らくひきこもり生活を送っていたNさん。
回復したい!との強い想いから
しおりの門を叩いてくださいました。
つながって約1年。
Nさんは今、どんなお気持ちなのか伺っていきましょう。
施設長:
N
さんはしおりにつながって約 1 年ね。
しおりにつながって、ご自分の中でどのような変化を感じてるかってとこから伺いましょう。
Nさん:
つながる前は、やっぱ人が怖かったです。
人に何か言われるんじゃないかとか、何かされるんじゃないかとか、そういう意味で怖さがありました。
でもしおりに来てから、しばらくの間は怖いままでしたけども、
だんだんとこの場所では怖いこと、怖い人はいないなっていうのが分かってきて
うん。
少しずつ怖さが克服されてきました。
それは自分の中で変化として 1 番大きく感じています。
施設長:
人が怖いって、N さんがそもそも引きこもり歴が長かったのが理由なんだろうか。
それとも人が怖かったから引きこもるようになったのか。
どう思われますか。
Nさん:
ひきこもった初めの頃は、人が怖いっていう自覚はなかったです。
だけどだんだんと世に出ようかなって思い始めたら時に、
「あ、ちょっと人が怖い」って思いました。
施設長:
自覚はなかった、人が怖いっていう。
Nさん:
はい、全くなかった。
あ、全くではないです。それほど強くはなかった。最初は引きこもった当初は。
でも、世に出ることを考えると、あ、怖いんだ。怖いってなりました。
施設長:
人が怖かったからひきこもったわけではないってこと。
Nさん: 多分そうだと思います。
施設長:
じゃあそもそもの理由って何だったんだろう?
Nさん:
体調が悪くって家にこもった。
体調が悪かったっていうのが 1 番大きいです。病気のせい。
それがきっかけで家にいることが多くなった。
施設長:
その時点で人が怖いという認識はなかったと。
Nさん:
なかったですね。
また世の中に出てやっていけるはずだって思ってたんですけど。
でも実際に出ていくことを考えたら人が怖いって。
私、人が怖いんだって。
施設長:
そう認識していたにも関わらず、人がたくさんいるしおりにつながろうって思ったってのはどういうことなんだろう?
Nさん:
克服したかった。
なんとかしてどうにかして克服したかった。人が怖いっていうのを克服したかった。
施設長:
したかった理由って?
Nさん:
また世の中に出たいって思ったから。
施設長:
世の中に出るって具体的にどういうことかな?
Nさん:
またお勤めを始めるとか、仲間以外の人と関わりを持つっていうこと。
施設長:
なるほど。じゃあそもそもだけど、人が怖いって、怖い思いをさせられた経験があるってことね。
Nさん:
やっぱ子どもの頃から嫌なこと言われたり、ひどいことを言われたり、されたり。
それが積み重なって私の頭にこびりついてて。人って怖いものだって。
もう同じ目にあいたくないって思いがあります。
施設長:
でもひきこもる時には人が怖いという認識はなかったのよね。
Nさん:
なかったですね。
それが気づいたのが精神科のお医者さんに「あなた人が怖いのね」って言われたのがきっかけです。
施設長:
それはいつの話?
Nさん:
ひきこもって 3 年ぐらいして言われて。
その時に「あそうなのかもな」って考えて。
それがなかったら多分今も人が怖いのかよくわかんなかったと思います。
施設長:
なるほど。
それでだんだん体調が良くなってきて、世の中に出たいなと思ってから実際に出るまでは少し期間があるの?
Nさん:
出たいなと思ってから実際に出るまで。1 年ぐらいですか。
施設長:
出たいな、どうしようかなって思いながら 1 年。
それで出てすぐつながったところはしおりじゃなかったよね?
Nさん:
そうです。別の場です。
施設長:
そこではどうだったの?
Nさん:
ただ居場所っていう感じで通ってました。人との交流はほとんどなかったので。
施設長:
人が怖いっていう思いにそこでは変化はあったのかな?
Nさん: ないです。
施設長:
じゃ、相変わらず人って怖いなと思いながらそこに通ってたんだ。
Nさん:
はい。
施設長:
どのくらい通ってたの? その思いで。
Nさん:
1年くらい。
もうなんとか「人が怖い」を克服したかった一心です。
施設長:
これからどうなるのかしらとか思わなかった?
Nさん:
思いました。不安、不安でした。
このままずっと怖いのかしらって。
施設長:
よく続けたね。
で、そこからしおりにつがるまでって?
Nさん:
そこに通いながら「しおりっていう場所があるよ」って精神科のお医者さんに教えてもらって。
で、すぐに翌日に電話して。
もうどこでも誰でもいいから「助けてください」っていう思いでした。
施設長:
それでしおりのトライアル通所を始めたんだよね。
その時どうしてここにつながってみたいと思った?
しおりメンバーになろうっていうのの決め手とか。
Nさん:
まずは施設長が信頼できそうだなって思った。はい。
あと皆さんが挨拶をしてくれたんですね。私からじゃなくてメンバーさんの方から。
それで「あ、なんかここでなら私もやっていけるんじゃないか」って。
施設長:
しおりは先にいるメンバーが新しく来た人に自己紹介するんだよって、誰かから聞いた?
Nさん:
はい。いや、聞いたわけじゃないけど。そういうことなんだなって。
施設長:
うん。そう、そう。
新しい人が 1 番勇気を持ってきてるわけだから、メンバーの、しかもしおり歴の長い人から声をかけましょうねってことになってるから。
それが良かったってことだ。
Nさん:
それ良かったです。はい。
施設長:
それはよかった。
で、施設長は信頼できそうと思った?最初なんてチラリと会っただけでしょ?
Nさん:
はい。
最初は正直怖い人なのかなって思ったんです。印象は。
施設長:
そうよね(苦笑)
Nさん:
でも おせ辞とかおべんちゃら、なんて言うんだろう?
そういうのがない人だと感じたんです。直感で。
この方なら大丈夫じゃないかって、なんか直感で思いました。
施設長:
で、 1 年付き合ってみてどう?
Nさん:
思った通りの方でした。私の直感は当たってたと思います。
施設長: それはそれは何より(笑)
Nさん: はい。
施設長:
他には何がありますか?つながって感じた変化。
Nさん:
初めは人の目を見られなかったんですけども。
皆さんに話かけられなかったですけど、だんだんと目を見られるようになって、自分からも話しかけられるようになって。
人の輪の中に入れなかったのがだんだん入れるように。
スローペースなんですけどもできるようになってきたと感じています。
施設長:
その変化はご自分にどういう影響を与えているかな?
Nさん:
えっと、孤独感でいっぱいだったんですけれども、ひきこもってる間は。孤独感が薄れてきました。
施設長:
その孤独感を数値で表すと?
Nさん:
前が10としたら今は4。
6 減りました。
施設長:
言葉で言い表すとどういうことなんだろう。
Nさん:
世界で私 1 人だっていう風に誰も人と繋がってないって思ってたんですけれど。
その孤独感が減ったっていうのは うん。
人との繋がりが私にもちょっとだけできたんじゃないかっていう。
だけどまだ完全に人を信じきれてないところがあるので 4 にしました。
施設長:
じゃあ何がどうなったら4 が3,2,1となってきそう?
Nさん:
それは時間がかかる。
時間が解決してくれるんじゃないかと思っています。
今すぐにこうだからこうしたらこうなるとかじゃなくて。
また 1 年 2 年ってたって、時間がいつの間にか解決してくれてるんじゃないかって思います。
施設長:
しおりにいなかったらまた違う?
Nさん:
違いますね。
もしかしたらまた人が怖いマックス 10 に戻っちゃうかもしれない。
施設長:
あ、その懸念はあるんだね。
Nさんはこの1年に変わったこともっともっとあるけど、ここでもう一つくらいあげるとしたら?
Nさん:
自分のこと人に話せるようになった、自己開示ができるようになったっていうことが大きいです。
施設長:
自己開示できるようになって何か気づきあった?
Nさん:
あ、自己開示していいんだって思いました。
施設長:
しちゃダメだと思ってた?
Nさん:
私はダメだと思ってました。
人はいいけど私はダメだと。
誰かにダメって言われてるような気がして。
施設長:
その理由は?
Nさん:
分からないです。
分からないけど、人はいいけど私は自己開示しちゃダメな人と思ってた。
施設長:
ちっちゃい頃からそうなの?
Nさん:
今思うと小さい頃からそうでした。
気づいてはいなかったけど。
施設長:
学生時代とか社会人の若い頃とかそういう認識はあった?
Nさん:
なかったです。
だから人とうまく付き合えてなかったんです。
色々言われたり
何か意地悪なこと言われたり、されたりしてたんじゃないかなって。
全然心開かないから。
施設長:
思い出してきた。
Nさんがしおりにつながった最初の頃、しおりでも言われてたよね。
Nさん:
はい。秘密主義者だって言われて。
施設長:
そうだね。確かに。
で、最近ないもんね。そういうの全然。
Nさん:
ないですね。
意識して自分のことを言うようにしてます。
言っていいんだっていう何か気づきがあった。
私も言っていいんだなっていう風に思えたので。
もうどんどん、うん、しおりでは言うようにしてます。
施設長:
自己開示するようになってコミュニケーションが変わったことって?
Nさん:
はい。コミュニケーションが少しずつ取れてるんじゃないかって思ってます。今のところ。
施設長:
つまり自己開示をしたらコミュニケーションが取りやすくなってきたってこと。
Nさん:
はい。
施設長:
ほぉ、昔はしてなかったってことよね。
で、コミュニケーションもうまく取れなかった。
今は意識して自己開示するようになって、コミュニケーションも取れてるじゃんってなってきたと。
Nさん:
うん。すごく苦しかったんですけど、自己開示してなかった時は。
でもするようになってから気持ちが楽になってて。
施設長:
へえ。自分のことを聞いてもらうっていうか。
Nさん:
聞いてもらっても安全だって思ってるので、しおりでは。
すごく楽です、気持ちが。
施設長:
それは生きやすさに
1つつながる。
Nさん:
はい。つながってます。ちょっとだけ。
施設長:
それは、それは素晴らしい。
では次の質問。
あなたにとってしおりとは?
Nさん:
行けば仲間や施設長やスタッフさんに会える場所。
心の寄り所です。
施設長:
そのみんなに会えるっていうのは、Nさんにとってどういう意味があるの?
Nさん:
意味はとっても大きいです。
仲間に会えるという。
自分にもこういう場所ができたんだっていう喜びが大きいです。
今ではなんか落ち着く。
みんなに会えるとかそういうの、思ったことなかったんですけど。
行けばみんながいるって。私も行ってもいい場所だって思える。
みんな誰も嫌な顔しないで私と話してくれる。
なくてはならないものの 1 つです。
施設長:
では最後に、今これを読んでる方へのメッセージを。
Nさん:
しおりという存在を知っていて、行こうか行かないか迷ってる方がいれば、まずは勇気を出して行くことをお勧めします。
もし合わなければまた別なところを探せば良いと思うし。
まずはやっぱり1回行ってみることを強くお勧めします。
人生が変わるかもしれないと思います。
私は最初、「絶対に自分は変わらない、変われない」と思ってしおりに来たんですけども、
その私がこんなに変化しました。
しおりへ行く価値はあると思います。
Nさん、どうもありがとう。
これでインタビューを終わります。