久米島応援プロジェクト

2009年10月06日

一般に南西諸島で見られる赤茶色の土や灰色の土のほか、脆くて崩れやすい泥岩など、粒子の細かい土壌等はまとめて「赤土等」と総称されます。世界遺産に登録されているあの首里城(那覇市)の赤瓦にも赤土が使われたという位、久米島の表土の多くは正に赤い色を呈しています。このため、大雨のときは陸地から流れ出て、河川や沿岸域を真っ赤に染めます。その様子は、川や海に生息する生き物に対して何か悪い影響を与えているのではと心配にさせるほどです。しかし、実際のところ、どの場所からどれくらいの赤土が流れ出ていて、それによって川や海の生き物たちはどのような影響を受けているのか。赤土の流出量とその被害については、まだまだ分かっていないことが多いのです。久米島応援プロジェクト「川の調査」では、儀間川を対象とした赤土流出調査を行い、農地を主な対象とした効果的な流出対策を実施することで、久米島固有の河川や海の生物たちの保全や再生を図ることを目標としています。

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大規模な降雨の際の儀間土地改良区排水路の様子(2010年6月15日撮影)

最初の調査は、いま現在どのくらいの赤土が流れ出ているのか、その実態を可能なかぎり正確に測定することです。具体的な取組として、まず、儀間川の下流と儀間川に流入する農業用排水路の2箇所に、河川水位と濁度(水の濁り具合の指標)を自動で連続的に測定する装置を今年の2月に設置。現在も測定を行っています。測定された河川水位から流量を、濁度から赤土の濃度をそれぞれ換算し、流量と濃度を掛け合わせることで、どれ位の量の赤土が河川や水路に流れ込んでいるか連続して測定する仕組みです。これまでに回収した測定データから、やはり、大雨の時に非常に大量の赤土が流れ出していることが分かってきました。

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儀間川での河川水位と濁度自動連続観測

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儀間土地改良区排水路での河川水位と濁度自動連続観測

では、どこから赤土は流れ出てくるのでしょうか。それを明らかにすることが、次の課題になります。上記の儀間川や排水路の流域(雨が降るとこれら河川や水路に流れ込む陸地の範囲)の主な土地利用は農地で、主要作物はいずれもサトウキビです。ですから、サトウキビ畑が赤土流出にどのように影響しているのか、まずは考える必要があると思われます。しかしながら、一言でサトウキビと言っても、春植え、夏植え、株出しと異なる栽培方法があります。また、農家の方達によるサトウキビ畑から赤土の流出を防止する取組も様々です。そこで、まず、調査対象である流域内のサトウキビ栽培方法や赤土流出の防止策の実施状況について情報を集め、整理します。さらにそれを活用することで、今現在、雨が降ると赤土が流れやすくなっている地域を判別する予定です。このような地域に対して、より積極的な赤土流出対策を行うことで、流域全体として赤土流出量の削減にはっきりとした効果が期待できると考えています。

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晴天時の儀間土地改良区排水路の様子(2010年5月12日撮影)

最後に、大雨の時に大量に流れ出ている赤土は、河川や沿岸域に生息する生き物にどのような影響を与えているのでしょうか。私たちは、儀間川や白瀬川を対象に、エビやカニといった甲殻類や魚類、水棲昆虫などについて、どのような種類がどれ位生息しているのか、どういう組合せで異なる種類の生物が共存しているのか、明らかにする調査を予定しています。そして、調査地点での、河川の水深や流速、水温といった物理環境や水の汚れ具合、川底への赤土の堆積状況も併せて測定することで、赤土流出を含めた様々な人為的要因が生き物の暮らしにどのような影響を及ぼしているのか明らかにしたいと考えています。また、30年ほど前に行われた同様の調査結果と比較することで、当時から今に至るまでの農業形態や人々の生活様式の変化が、河川の生き物の種類や分布にどのように影響してきたのか、調べてみたいと考えています。

(独)国立環境研究所 林

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