2024年9月26日木曜日
職場訪問レポート(西南学院中学校の皆さんが来館されました)
先日(8月27日)、西南学院中学校2年生の皆さんが、福岡市博物館へ職場訪問に来られました。
様々な仕事の現場を訪れ、「働く意義」「社会貢献」「仕事に対する熱意」など、働く人の声を生徒さんが直に聞くという同校の取り組みの一環でのご来館でした。
5名の生徒さんをお迎えし、まずは、学芸課、運営課、それぞれの代表が、博物館の歴史や役割、働いている職員の数や仕事内容について説明を行いました。
皆さん、どんな業者さんが関わっているか、分かりますか?」
と運営課の企画調整係長。
皆さん、真剣に考えていらっしゃいましたが、なかなかの難題だったよう。
博物館は、警備、清掃、受付、監視など、様々な業種の皆さんに支えられて、日々安全に、皆さんをお迎えしています。
座学の後は、常設展示室へ向かいます。
「FUKUOKA アジアに生きた都市と人びと」をテーマに掲げた常設展示は、国宝「金印」の展示から始まり、約30,000年前から現代までの福岡の歴史を辿ります。
解説は、学芸課の学芸係長が行いました。
蒙古襲来の際、厳しい戦いが行われた鳥飼、赤坂、
今も数多くの埋蔵文化財が見つかる博多。
身近な福岡の地名を具体的に出しながらの説明に、皆さん、驚かれた様子でした。
この頃、すでに、現在の福岡の原型ができていたことが分かります。
(大幅に時間が押してはいましたが、常設展示室のツアーは続きます😅)
写真②西鉄ライオンズのユニフォーム。
ここでは、引率された先生も詳しい解説を加えてくださいました。
写真④常設展示室の最後は、博多出身のコメディアン故・小松政夫さんの映像に合わせ、「博多手一本」で締めました👏
そしていよいよ、皆さんが最も楽しみにしていた(?)博物館の裏側にも潜入します!🧐
これまで名だたるお客様をお迎えしてきた応接室(写真⑥)。
少しだけ収蔵庫の方へも…(写真⑦。残念ながら、あまりお見せできませんが…)。
最後は、質疑応答のコーナー。
皆さんからは、職員の一日のスケジュールについてや、仕事をする上で一番大切にしていること、館内でのもめごとの有無(!)まで、様々な質問が飛び出しました。
「保存するのに大変な資料はありますか?」との質問には、10月6日まで企画展示室4で展示中の「庚寅銘大刀(こういんめいたち)」が挙げられました。
金の文字が刻まれた古墳時代の大刀は、その刀身全体が錆びています。
これ以上錆びの進行を防ぐため、この大刀は窒素を充満させた特別な展示ケース内に納められています。この窒素を充填する作業を数年に一回行う必要があることが説明されました。
(※庚寅銘大刀は、10月8日から常設展示室で展示します)
生徒さんだけでなく、先生も、熱心に職員のお話しを聞き、展示を鑑賞されている姿が印象的でした。皆さん、博物館の内側をのぞかれたことで、より博物館を好きになっていただけたら嬉しいです😊
皆さんのまたのご来館、心よりお待ちしています!👋
2024年9月25日水曜日
特別展「大灯籠絵」を楽しむために その20 娯楽としての”歴史”とは? 講演会のご案内
11月4日(月・振休)まで
会場:福岡市博物館 特別展示室
特別展「大灯籠絵」、大好評開催中です。
さて、今週末の9月28日(土)には、
福岡市博物館 中野 等 総館長による講演会があります。
テーマ:大灯籠絵にみる娯楽としての”歴史”
日 時:令和6年9月28日(土) 午後1時30分~午後3時
会 場:福岡市博物館 2階 喫茶・談話室 定員:50名
事前申込・参加費は不要です。
※特別展の観覧券もしくは半券の提示が必要です。
※当日は午後1時に開場し、先着順でご入場いただきます。
今回の講演会は、普段と少し趣向をかえて、
講師との距離をぐんと縮めた会場を準備しています。
テーマも「娯楽としての”歴史”」
大灯籠絵を通して、”歴史”を思う存分楽しんだ人びとの様子を覗いてみませんか?
ご来場をお待ちしています。
(by おーた)
2024年9月20日金曜日
【別冊シーサイドももち】〈092〉え、今度はガメラとギャオスですか!?―屋根に穴があいた福岡ドーム(その1)―
埋め立て地にできたニュータウン「シーサイドももち」の、前史から現代までをマニアックに深掘りした『シーサイドももち―海水浴と博覧会が開いた福岡市の未来―』(発行:福岡市/販売:梓書院)。
この本は、博多・天神とは違う歴史をたどってきた「シーサイドももち」を見ることで福岡が見えてくるという、これまでにない一冊です。
本についてはコチラ。
この連載では【別冊 シーサイドももち】と題して、本には載らなかった蔵出し記事やこぼれ話などを紹介しています。ぜひ本とあわせてお楽しみいただければ、うれしいです。
第1回(「よかトピアに男闘呼組がやってきた!」)
第2回 (「ダンスフロアでボンダンス」)
第3回 (「よかトピアの「パオパオ・ロック」とは。」)
第4回(「開局! よかトピアFM(その1)KBC岸川均さんが育てた音のパビリオン」)
第5回(「思い出のマッスル夏の陣 in 百道」)
第6回(「最も危険な〝遊具〟」)
第7回(「開局! よかトピアFM(その2)1週間の全番組とパーソナリティー」)
第8回 (「ビルの谷間のアート空間へようこそ」)
第9回(「グルメワールド よかトピア」)
第10回(「元寇防塁と幻の護国神社」)
第11回(「よかトピアのストリートパフォーマーたち」)
第12回(「百道地蔵に込められた祈り」)
第13回(「よかトピアのパンドールはアジアへの入り口」)
第14回(「あゝ、あこがれの旧制高校」)
第15回(「よかトピアが終わると、キングギドラに襲われた」)
第16回(「百道にできた「村」(大阪むだせぬ編)」)
第17回(「百道にできた「村」(村の生活編)」)
第18回(「天神に引っ越したよかトピア 天神中央公園の「飛翔」」)
第19回(「西新と愛宕の競馬場の話。」)
第20回(「よかトピア爆破事件 「警視庁捜査第8班(ゴリラ)」現る」)
第21回(「博多湾もよかトピア オーシャンライナーでようこそ」)
第22回(「福岡市のリゾート開発はじまりの地?」)
第23回 (「ヤップカヌーの大冒険 よかトピアへ向けて太平洋5000キロの旅」)
第24回 (「戦後の水事情と海水浴場の浅からぬ関係」)
第25回 (「よかトピアへセーリング! オークランド~福岡・ヤマハカップヨットレース1989」)
第26回 (「本づくりの裏側 ~『シーサイドももち』大解剖~」)
第27回 (「開局!よかトピアFM(その3)今日のゲスト 3~4月」)
第28回 (「まだまだあった! 幻の百道開発史」)
第29回 (「開局!よかトピアFM(その4)今日のゲスト 5~6月」)
第30回 (「百道の浜に舞いあがれ! 九州初の伝書鳩大会」)
第31回 (「開局! よかトピアFM(その5)今日のゲスト 7月」)
第32回 (「聞き書きの迫力~西新小学校100周年記念誌を読む~」)
第33回(「開局!よかトピアFM(その6)今日のゲスト 8~9月」)
第34回 (「百道を駆け抜けていった夢の水上飛行機」)
第35回 (「開局!よかトピアFM(その7)ここでも聴けたよかトピア」)
第36回 (「幻の「百道女子学院」と須磨さんの夢」)
第37回(「開局!よかトピアFM(その8)『今日もリスナーさんからおたよりが届いています』」)
第38回(「西新町209の謎を解け!~建物からたどるまちの歴史~」)
第39回(「「地球をころがせ」を踊ってみた ―「よかトピア」オリジナル音頭―」)
第40回(「映える写真が撮りたい!~百道とカメラとモデルの雑史~」
第41回 (「よかトピアでアジア旅 ― 三和みどり・エスニックワールドのスタンプラリー ―」)
第42回 (「〔世界水泳2023福岡大会応援企画①〕スリルを楽しむ~百道の飛込台とハイダイビング~」)
第43回 (「〔世界水泳2023福岡大会応援企画②〕大海を泳ごう~かつての遠泳、いまはオープンウォータースイミング~」)
第44回 (「百道海水浴場はどこにある?」)
第45回 (「2100年のパナコロニーからPAF522便に乗船したら、こうなった―よかトピアの松下館(1)―」)
第46回(「百道テント村100年 大解剖スペシャル!」)
第47回(「トラジャのアランとコーヒーと ―よかトピアのウェルカムゲートはまるで宙に浮かんだ船―」)
第48回(「〔世界水泳2023福岡大会応援企画③〕世界水泳観戦記録 in シーサイドももち」)
第49回(「福岡市の工業を支えた九州松下電器は世界のヒットメーカーだった―よかトピアの松下館(2)―」)
第50回(「百道から始まる物語 ~「水泳王国・福岡」の夜明け前 ~」)
第51回(「よかトピアのトイレと日陰の話」)
第52回(「「百道海水浴場年表」を読む!~大正編~」)
第53回(「リゾートシアターは大忙し ―よかトピアのステージ裏―」)
第54回(「ピオネとピオネ ―百道海水浴場最後の海の家に隠された名前の謎―」)
第55回(「34年前のよかトピアではこれが当たり前の景色でした ―電話やカメラや灰皿の話―」)
第56回(「百道で行われた戦時博覧会「大東亜建設大博覧会」とは」)
第57回(「キャラクターが大集合した「いわたや(岩田屋)こどもかん」と、ついでによかトピアの迷子事情も」)
第58回(「「百道海水浴場年表」を読む!~大正後編①~」)
第59回(「巨大な鳥かごに入ってみたら、極楽鳥がであいを伝えてくれた ―よかトピアの「芙蓉グループ・バードカントリー」(1)―」)
第60回 (「西新町に監獄ができるまでの話」)
第61回 (「鳥のグッズを開封、そしてシンガポールからはバードショーもやってきた ―よかトピアの「芙蓉グループ・バードカントリー」(2)―」)
第62回 (「西新町の福岡監獄 建築見学ツアー〈前編〉」)
第63回 (「西新町の福岡監獄 建築見学ツアー〈後編〉」)
第64回(「よかトピアの海上レストラン ―マリゾン(1)―」)
第65回 (「「百道海水浴場年表」を読む!~大正後編②~」)
第66回 (「子象のタクシー、初乗り100円でシーサイドももちをご案内 ―よかトピアの象のはなし ―」)
第67回 (「船で、飛行機で、データで、電波で、人の手で、福岡と世界を結んだよかトピアのパビリオン ―マリゾン(2)―」)
第68回 (「よかトピアはドームつくりがち」)
第69回 (「シーサイドももちはMVステージ(その1)」)
第70回 (「シーサイドももちはMVステージ(その2)」)
第71回 (「百道松原を買った藤金作(その1)― 西新爆上がりの回 ―」)
第72回 (「百道松原を買った藤金作(その2)― 元寇防塁発見の回 ―」)
第73回 (「サザエさん通りの生い立ち ―「プレ・サザエさん通り」と波瀾万丈の元寇防塁 ―」)
第74回 (「最初の海の家「設備屋」の行方と西南学院のキャンパス」)
第75回 (「百道に計画されていた幻の国際飛行場」)
第76回 (「ガワラッパのネッキ、ミズチと戦う ―よかトピアの「河童館」は福岡市の弱点「水」を大特集したウォーターパビリオンだった(その1)―」)
第77回 (「ドラえもんが水のことを教えてくれた日 ―よかトピアの「河童館」は福岡市の弱点「水」を大特集したウォーターパビリオンだった(その2)―」)
第78回 (「修養の殿堂、百道に建つ~射撃場跡地にできた社会教育会館~」)
第79回 (「まっすぐ過ぎる道路~百道に残る四角い街区のナゾ~」)
第80回 (「シーサイドももちにはお金が置いてある ―ヤップカヌー外伝(その1)―」)
第81回 (「ルッパン船長とヤップのダンスチーム、よかトピアを飛び出してダイエーに行く ―ヤップカヌー外伝(その2)―」)
第82回 (「シーサイドももちの緑地さんぽ① ~地行浜&海浜エリア編~」)
第83回 (「小学校の体育用具倉庫で山笠のムルティをつくってほしい ―よかトピアで大活躍だったインド(その1)―」)
第84回 (「シーサイドももちの緑地さんぽ② ~百道浜エリア編~」)
第85回 (「あるときは少年が空中に浮き、あるときはバラタナティアムやカタックを舞う ─よかトピアで大活躍だったインド(その2)─」)
第86回 (「「この楽しさにあなたの首は耐えられますか?」─よかトピアの九州電力パビリオン(その1)─」)
第87回 (「スーパーシップ9、九州を乗せてフランスへ飛んでいく―よかトピアの九州電力パビリオン(その2)―」)
第88回 (「70年続く伝統の林杯ヨットレース ― 百道とヨット① ―」)
第89回 (「海水浴場の安全をまもった〝百道の王〟」)
第90回 (「スーパーシップ9の「9」は九州のキュー(たぶん)―よかトピアの九州電力パビリオン(その3)―」)
〈092〉え、今度はガメラとギャオスですか!?─屋根に穴があいた福岡ドーム(その1)─
よかトピア(1989年)が終わってすぐのころ、シーサイドももちがキングギドラに襲われたことを覚えていらっしゃるでしょうか。
1991年3月に公開された映画『ゴジラVSキングギドラ』(東宝)のなかでの話なのですが、前にこのブログでも紹介しました。
あのとき福岡上空に現れたキングギドラは、完成して間もない荒津大橋の方向から福岡タワーに近づき、タワーに一撃をくらわしたあと、天神・中洲方面に戻って、福岡のまちを破壊したのでした。
ただ幸い福岡タワーは倒れることはなく、まちづくりをはじめたばかりのシーサイドももちも壊されることはなく、難を逃れました(その代わりに天神・中洲方面が大変なことになりましたが…)。
キングギドラに見逃してもらったからというわけではないのですが、その後、実際のシーサイドももちではまちづくりが急速に進んでいきました。
駐福岡大韓民国総領事館(1990年)、ザ・レジデンシャルスイート福岡(1992年)、ふれあい橋(1993年)など、今もまちを代表する建物が次々と建てられています。
シーサイドももちの建物ができていく過程はこちらをご覧ください(『市史だよりFukuoka』第22号)。
そして何と言っても、1993年には福岡ドームが完成しました(現在のみずほPayPayドーム福岡)。
東京ドームについで国内2番目のドーム型、しかもその屋根は日本初の開閉式という、当時は誰もがその姿に驚いた福岡のランドマークの誕生でした。
ところが、このできたばかりの福岡ドームが壊される事件が起こりました…
また怪獣が福岡に現れたのです。
今度はガメラとギャオス。
福岡市民からすれば、キングギドラに続いて「え、またですか!?」という災難となりました。
これは1995年3月11日公開の『ガメラ 大怪獣空中決戦』の話。
ゴジラは東宝の制作でしたが、ガメラは大映(現 KADOKAWA)の人気特撮シリーズです。
ガメラシリーズは1965年から1980年まで、昭和の間に全8作品が作られてきましたが、その後しばらく途絶えていました。
ブランクを経て、平成に入っての復活第1作がこの作品。
そしてこのあとに立て続けに『ガメラ2 レギオン襲来』(1996年公開)、『ガメラ3 邪神(イリス)覚醒』(1999年公開)がつくられ、平成三部作として現在も人気が高いシリーズになりました。
映画の予告版でのキャッチフレーズは「超音速の大決闘。」
前売り券を買うと、暗闇で光るガメラステッカーがもらえたそうです。
では、平成ガメラの第1作『ガメラ 大怪獣空中決戦』のあらすじを追ってみます。
映画の映像とあわせて見ていただきたいところですが、権利の関係で載せられませんので、一部はうちにありましたフィギュアを使ってお届けします(余計に伝わらないかも…。ぜひ映画をご覧ください)。
なおフィギュアは、株式会社バンダイのガシャポン「HG(HIGH GRADE REAL FIGURE)シリーズ ガメラ HGガメラ壱」(2021年)で、この映画のガメラ・ギャオスをかたどったものです(とても高いクオリティー)。ちなみにドームの方は球場でのお土産物だと思うのですが、よく由来が分かりません…。
フランスのシェルブール港からプルトニウムを積んで日本に向かう「海竜丸」と、それを護衛する海上保安庁巡視船「のじま」。
航海は順調でしたが、ミンダナオ島の南西約200キロの南太平洋で突然、謎の環礁に座礁します。
すぐに環礁が船から離れていったことや、水深3000メートル以上の海域での不自然な座礁、漁船の乗員からしばしば聞かれる目撃例から、これは環礁ではなく、移動する巨大生物ではなかったかと疑う意見も出ました。
「のじま」に乗っていた米森(伊原剛志さん)は、この件を調べることになった損害保険会社の草薙(小野寺昭さん)と行動をともにします。
そして、ついに赤道海流から黒潮にのって移動する環礁を見つけ、上陸に至りました。
そこで石碑とたくさんの金属の勾玉を見つけるのですが、石碑に体温と鼓動を感じた直後に環礁は動きはじめ、米森たちは海に投げ出されてしまいました。
一方、長崎の五島列島では、姫神島で見つかった大きな鳥の雛を調査していた九州大学の平田教授(名前のみの登場)との連絡が途絶え、漁船も無線で「鳥やーッ」の叫び声を残し消息を断つ事件が起こっていました。
平田の教え子で福岡市動物園につとめる長峰(中山忍さん)は長崎県警の大迫刑事(螢雪次朗さん)とともに姫神島を訪れます。
そこで見たものは、破壊された島と消えた島民たち、そして残された巨大なペリット(鳥が吐き出す未消化物のかたまり)に混じった平田の持ち物でした。
姫神島では3羽の鳥が発見され、それは翼長が15メートルにも及ぶ巨大なものでした。
長峰は観察するなかで、この鳥が光に弱い性質であることに気づきます。
やがて巨大な鳥が稀少動物であることを理由に、閣議によって捕獲することが決まりました。
捕獲するのは自衛隊ですが、環境庁審議官の斎藤(本田博太郎さん)はその方法を考えるように長峰に伝えます。
巨大な鳥を閉じ込められる場所に頭を悩ます長峰と大迫。
すると大迫は机に置いたスポーツ新聞の1面から、開閉式の屋根を持つ福岡ドームに誘い込むことを思いつくのでした。
(なるほど、ドームを巨大な鳥かごに見立てたわけですね)
いよいよ捕獲の日。
夜、屋根を開けた福岡ドームのなかには、巨大な鳥を捕らえるための罠がしかけられました。
3機の自衛隊のヘリが、光を使いながら姫神島から福岡ドームまで鳥を誘導する作戦です。
ドーム内の司令部で鳥を待つ長峰たち。
ところが開いた屋根からドームに降り立ったヘリからは米森が降りてきました。
米森は推定60メートル以上の巨大生物(例の環礁)が、海から一直線にここへ向かっていることを伝えます。
しかし環境庁の斎藤は、「こっちは15メートルの飛行生物で手いっぱい」だとこれを突き放してしまいました。
(巨大鳥の捕獲やら、巨大生物の接近やら、福岡はもう大変なことになりました…)
しばらくすると、作戦通りに姫神島からヘリの光で誘導され、3羽の鳥がドームに舞い降ります。
ドームの屋根を閉めるよう指示する長峰。
そして動きはじめた屋根の下で、罠のエサに夢中な鳥にめがけ、筋肉弛緩剤がいっせいに射撃されました。
これにより2羽はしとめて檻に捕獲できたものの、屋根が締め終わる前に、1羽はドームの外に飛び去ってしまいました…
一方、博多港では巨大生物が姿を現し、石油コンビナートに上陸しました。
そこに現れたドームから逃げ去った鳥を一撃で払い落とす巨大生物。
これを目撃した自衛隊ヘリのパイロット(佐藤二朗さん)は驚くばかりでした。
テレビではキャスターが福岡に怪獣が出現したこと、博多湾沿岸の福岡市西区・中央区・早良区・博多区に避難勧告が出たことを伝えます。
巨大生物がすぐそばを通る倉庫街では、屋台の客がラーメンどんぶりをひっくり返しながら一斉に逃げ惑い、中洲では逃げる人びとで狭い橋がごったがえしました。
しだいにドームに近づいてくる巨大生物。
巨大生物があとわずか閉まりきらないドームの屋根を破壊したところで、2羽の鳥が麻酔から目覚め、口から放つ光線で檻を切断しドームの外に飛び出していきました。
光を放ち猛スピードで回転しながら飛び立ち、それを追う巨大生物。
巨大生物たちによって大きな被害が出た福岡。
翌日からの新聞や週刊誌には、「福岡市民、恐怖の一夜」「ドームに怪獣出現」「福岡ドーム崩壊!!」「博多港の海底から怪獣浮上…」「博多港コンビナート炎上!!」の見出しが躍るのでした。
これは映画のほんの序盤、福岡に関係するところだけですので、このあとの展開は映画でぜひお楽しみください(あっという間の上映時間95分です)。
福岡のシーンはまだどちらの怪獣も名前が知られていないときでしたが、このあと、環礁(巨大生物)で発見した碑文の解析によって、巨大生物をガメラ、巨大な鳥をギャオスと名付けることが政府から通達され、物語は進んでいくことになります。
この作品は、大映・イマジカ・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズからなる「ガメラ製作委員会」が組まれ、大映・日本テレビ・博報堂によって製作されました。
監督は金子修介さんです。
ガメラの平成三部作すべての監督をつとめられたほか、『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』(2001年)も撮られていて、怪獣映画の歴史では欠かせないお名前になっています。
ほかにも『デスノート』(2006年)など多数監督作があります。
怪獣シーンなどの特技監督は樋口真嗣さん。
平成ガメラ3作はもちろん、『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』(1997年)の実写部分の特技監督もつとめられました。
近年では、『シン・ゴジラ』(庵野秀明さん脚本・総監督、2016年)の監督・特技監督として有名ですね。
撮るだけなく、撮られることもある方で、『リリイ・シュシュのすべて』(岩井俊二監督、2001年)では秋葉原で高校生にかつあげされる大人を演じたり、テレビ版『私立探偵 濱マイク』の第6話「名前のない森」(青山真治監督、2002年)にも出演されています。
脚本は伊藤和典さんでした。
伊藤さんは『機動警察パトレイバー』シリーズ、『めぞん一刻』など枚挙にいとまがない人気脚本家さんです。
音楽は大谷幸さんのご担当。
アニメ『シティハンター』2・3、『新機動戦記ガンダムW』シリーズ、映画『免許がない!』(1994年)などたくさんのアニメ・映画音楽をつくられ、金子監督とは『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』でもご一緒されました。
主題歌は、爆風スランプの『神話』(サンプラザ中野さん作詞、ファンキー末吉さん・井上鑑さん作曲、ソニーレコード)で、物語ととてもよく合っています。
映画のサントラ盤も徳間ジャパンコミュニケーションズから発売されました。
怪獣デザインを担当された前田真宏さんは、アニメでも有名な方です。
ジブリ作品の『風の谷のナウシカ』(1984年)、『天空の城ラピュタ』(1986年)、『おもひでぽろぽろ』(1991年)、『紅の豚』(1992年)の原画などを担当されています。
『エヴァンゲリオン』シリーズにも参加されていて、話題となった『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の監督のお一人でもいらっしゃいました。
『シン・ゴジラ』のゴジラのイメージデザインも前田さんによるものです。
のちの作品でも活躍される、そうそうたる顔ぶれで製作されたこの作品は大変評価が高く、数々の賞に輝いています。
代表的なところだけでも、第38回(1995年度)のブルーリボン賞では監督賞・助演女優賞、第19回日本アカデミー賞では優秀助演女優賞(助演女優賞はいずれも中山忍さん)を受賞しています。
また、キネマ旬報ベスト・テン(第69回・1995年度)では、怪獣映画としては異例の6位に入りました。
ちなみにこの年のベスト10はこのような顔ぶれで、名作揃いのなかでのランクインでした。
キネマ旬報ベスト・テン(第69回・1995年度)
1位 『午後の遺言状』(新藤兼人監督)
2位 『東京兄妹』(市川準監督)
3位 『Love Letter』(岩井俊二監督)
4位 『幻の光』(是枝裕和監督)
5位 『写楽』(篠田正浩監督)
6位 『ガメラ 大怪獣空中決戦』
7位 『深い河』(熊井啓監督)
8位 『KAMIKAZE TAXI』(原田眞人監督)
9位 『マークスの山』(崔洋一監督)
10位 『TOKYO FIST 東京フィスト』(塚本晋也監督)
10位 『渚のシンドバッド』(橋口亮輔監督)
人気は今も衰えず、撮影のバックステージやシナリオを載せた『平成ガメラ パーフェクション』(KADOKAWA、2014年)が出されたり、ついこの前も金子修介監督の著書が増補されて『ガメラ監督日記 完全版』(小学館、2024年)とし出版されたばかりです。
映画として成功を収めた平成ガメラ第1作ですが、やっぱり福岡のシーンが気になって、すみずみまで見てしまいます。
今、このブログの(その2)として、福岡のシーンをシーサイドももち的・福岡市史的に見てみた編を準備中です。
気長にお待ちくださればと思います。
[Written by はらださとし/illustration by ピー・アンド・エル]
2024年9月18日水曜日
特別展「大灯籠絵」を楽しむために その19 常設展示室もお見逃しなく!!
11月4日(月・振休)まで
会場:福岡市博物館 特別展示室
とうとう特別展「大灯籠絵」が開幕しました!!
会場は福岡市博物館の特別展示室なのですが、
実は、常設展示室にも見逃してはならない展示があります。
① 多くの大灯籠絵を描いた絵師・海老﨑雪渓の名前がある長寿番付
② 箱崎(福岡市東区)で飾られていた大灯籠絵の再現展示
③ 千灯明と流灌頂についての解説映像
④ 特別展「大灯籠絵」のなかのキーワード「無縁をまつる」の展示
特別展「大灯籠絵」の観覧券には、常設展・企画展の観覧券がついています。
もちろん、国宝 金印「漢委奴国王」も常設展示室で観覧できます。
企画展示室では、企画展はもちろん、黒田家名宝展示も観覧できます。
どうぞ、おでかけください。
(by おーた)
2024年9月11日水曜日
特別展「大灯籠絵」を楽しむために その18 福岡県指定有形民俗文化財「大浜流灌頂大燈籠」すべて展示
会期:2024年9月13日(金)~11月4日(月・振休) 会場:福岡市博物館
この秋、福岡市博物館では、特別展「大灯籠絵」を開催します。
展覧会の開催に向けて、「大灯籠絵」にまつわる話題をお届けします。
いよいよ特別展「大灯籠絵」の開幕が近づいてきました。
この展覧会では、福岡市内の「大灯籠絵」が初めてすべて集まります。
そして、福岡県指定有形民俗文化財の9点の「大灯籠絵」はすべて実物で展示です!!
(ほかの「大灯籠絵」は一部、資料保護のため写真や複製での展示があります)
県指定文化財の「大灯籠絵」は、いずれも海老﨑雪渓(1876~1941)が描き、
大浜の皆さんが守り伝えてきたものです。
9点すべて、幅4メートルを超える「大灯籠絵」のなかでも特に大きなサイズ。
大画面に力強い武者絵の迫力は、実際に見てみないとなかなか体感できません。
さらに、9点のうち6点は、3基の「大灯籠」にしたて、灯籠の内側からの灯りでご覧いただくという趣向です。
展覧会では、現役を退いた「大灯籠絵」も展示しますが、
大浜流灌頂のように現役の「大灯籠絵」も多数集結します。
是非、会場にお越しください。
(by おーた)
2024年9月4日水曜日
特別展「大灯籠絵」を楽しむために その17 講演会のご案内
会期:2024年9月13日(金)~11月4日(月・振休) 会場:福岡市博物館
この秋、福岡市博物館では、特別展「大灯籠絵」を開催します。
展覧会の開催に向けて、「大灯籠絵」にまつわる話題をお届けします。
さて、9月に入り、特別展「大灯籠絵」の開幕まで10日をきりました(汗)
担当学芸員Kは、もちろん、Kの補佐役の学芸員Nや学芸員Sも追いつめられつつある今日この頃です。
ところで、展覧会オープンの翌日9月14日には、
開催記念講演会を福岡市博物館で開催します。
演題:仏教と民俗─”十三塚”考をめぐる貝原益軒と柳田国男を中心に
講師:佐野賢治氏 神奈川大学名誉教授・(公財)農村文化研究所長
日時:令和6年9月14日(土) 13時30分~15時
会場:福岡市博物館1階 講堂 定員:240名
事前申込・参加費は不要です。
※特別展の観覧券もしくは半券の提示が必要です。
※当日は13時に開場し、先着順でご入場いただきます。
講演会をお聴きいただければ、「大灯籠」を飾る行事の背景について、
理解が深まること間違いなし!!
仏教民俗学の視点から、貝原益軒の死生観についてもふれる内容だそうです。
是非、ご来場ください。
この講演会のほかにも、会期中には、
ギャラリートークなども開催予定です。
福岡市博物館の公式X(旧Twitter)などでもお知らせしますので、
お見逃しなく!!
(by おーた)