相続手続きの進め方

相続人や相続財産の確定、遺産分割協議、相続財産の名義変更等をご説明します。

遺言書の有無の確認

遺産の分け方については、民法では次の3つの方法が定められています。相続手続きを始める前に、まずは遺言書の有無の確認から始めましょう。

遺産分割の3つの方法

遺産分割の3つの方法 遺産分割の3つの方法
  1. 相続人が当然に取得できるものとして、民法が保障する最低限度の相続分
  2. 家庭裁判所において、当事者間の話し合いを助言して解決を図ろうとする制度
  3. 家庭裁判所において、裁判官が各相続人の相続する財産を決定する制度

自筆証書遺言が見つかったら

家族等が亡くなり、自宅などで自筆証書遺言が見つかった場合は、必ず家庭裁判所で「検認」を受けなければなりません。
また、検認の申立から終了まで約1ヵ月かかりますので、ご留意ください。ただし、保管制度を利用した自筆証書遺言では「検認」は不要です。

自筆証書遺言の検認手続きについて

検認手続きとは、遺言書の「偽造・変造」を防止するために必要な手続きのことで、家庭裁判所で相続人等の立会いのうえ、遺言書を開封し、筆跡等の確認をします。なお、遺言を執行するためには、検認済証明書が必要となります。

検認手続きについて

申立人
  • 遺言書の保管者
  • 遺言書を発見した相続人
申立先 遺言者の最後の住所地の家庭裁判所
費用
  • 遺言書1通につき収入印紙800円
  • 連絡用の郵便切手
必要書類
  • 家事審判申立書
  • 添付書類
    1. 遺言者の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
    2. 相続人全員の戸籍謄本
    3. 遺言者の子(及びその代襲者)で死亡している方がいる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本等
  • 検認済証明書の申請手続きには、遺言書1通につき150円の収入印紙と申立人の印鑑が必要です。

留意点

  • 遺言書を、「偽造・変造・破棄・隠匿」した場合には、相続欠格事由にあたり、相続権がなくなる場合があります。
  • 検認を受けずに開封してしまった場合、遺言が無効となるわけではありませんが、開封した人は「5万円以下の過料」に処せられることがあります。(民法第1005条)
  • 検認手続きは、あくまでも「偽造・変造」を防止するための手続きで、遺言の効力を認めるわけではありません。
  • 保管制度とは、法務局で自筆証書遺言を保管する制度です。全国の法務局のうち、法務大臣の指定する法務局が遺言書保管所として遺言書の保管に関する事務を行います。(2020年7月10日施行)

遺言書があり、遺言執行者が指定されている場合は、遺言執行者が就職することを承諾した際、執行義務を負うことになります。遺言執行者が指定されていない場合、または指定されている人が亡くなっている場合には、必要に応じて家庭裁判所へ遺言執行者の選任申し立てをします。

相続手続きの流れ

STEP 01

相続人の確定

被相続人と相続人全員の戸籍・除籍謄本等を市区町村役場から取り寄せ、どなたが法定相続人となるのかを確定します。

戸籍謄本等の収集

あらゆる相続手続きの場面において最初に必要となる作業は、戸籍上の相続人を確定することです。戸籍上の相続人を確定するには、被相続人の出生からお亡くなりになるまでの連続した戸籍を取得する必要があります。また、取得する戸籍は、作成時期により様式・記載内容が異なるため、読み取るのが大変です。

法定相続人について

財産を相続できる人や順位は、民法で決められており、ご家族なら誰でも権利があるというわけではありません。このように、民法で定められている相続の権利がある人を「法定相続人」といいます。配偶者は常に法定相続人となり、第1順位は子、第2順位は父母、第3順位は兄弟姉妹です。先の順位の人がいない時だけ後の順位の人が法定相続人となります。

法定相続人の範囲と順位 法定相続人の範囲と順位

法定相続人の相続割合

子ども(第1順位)が相続するケース
父母(第2順位)が相続するケース
兄弟姉妹(第3順位)が相続するケース
代襲相続人が相続するケース 代襲相続人が相続するケース
STEP 02

相続財産の確定

相続財産を確定するには、何がどこに、どれくらいあるのかを確認しなければなりません。まず最初に通帳を確認することをおすすめします。通帳から、次のことが確認できます。

通帳から確認できること

通帳から確認
できること
チェックするポイント
生命保険契約・年金保険契約の有無 生命保険料・年金保険料の引き落とし
有価証券の保有有無 株式等の配当金の入金
貸金庫契約の有無(注記) 貸金庫使用料の引き落とし
所有不動産の有無 固定資産税等の引き落とし
  • 貸金庫契約がある場合は、貸金庫の中に金地金や証書等が保管されている場合があります。

相続財産を確認するための資料

主な相続財産 確認資料
預貯金 通帳や定期送付物(「残高のお知らせ」等)、残高証明書、キャッシュカード
有価証券
(株式、債券等)
証券会社の残高証明書や取引残高報告書、配当金の支払通知書、出資証券、現物株
土地、建物 固定資産税の納税通知書、固定資産税評価証明書や名寄帳、登記事項証明書(登記簿謄本)、公図、測量図
生命保険金 保険契約証書、保険会社からの支払通知書
貸付金 借用書等の契約書
ゴルフ会員権
リゾート会員権
会員証等
貸地、貸家 賃貸借契約書
  • 事業性融資(銀行ローン)等がある場合は、別途金融機関と協議が必要となります。
STEP 03

遺産分割協議

遺言書がないなど、遺産を相談して分けることになった場合、遺産の全容が確定した段階で相続人全員で遺産分割協議を行います。そして、相続人全員が合意したところで、遺産分割協議の結果を文書にします(遺産分割協議書の作成)。

遺産の分割について相続人間で話し合いがつかない場合は、家庭裁判所で調停による分割または審判による分割をすることになります。

遺産分割協議後、新たに遺産が見つかった場合は、遺産分割のやり直しや、その財産について新たに遺産分割協議をすることになります(遺産分割のやり直しによる再分配は、税務上思わぬ税負担が生じる場合もあります)。

財産を分けるうえでの注意点

話し合いにおいて財産を分ける場合には「法定相続分」が一応の基準となりますが、のこされた家族の状況等を考慮する事が重要です。その際、「寄与分」や「特別受益」にも注意が必要です。

法定相続人 法定相続分 遺留分
配偶者のみ 1 1/2
配偶者と子 配偶者 1/2 1/4
1/2 1/4
配偶者と両親 配偶者 2/3 1/3
両親 1/3 1/6
配偶者と兄弟姉妹 配偶者 3/4 1/2
兄弟姉妹 1/4 0
子のみ 1 1/2
両親のみ 1 1/3
兄弟姉妹のみ 1 0

遺留分制度とは

相続人が当然取得できるものとして、民法が保障している最低限度の相続分を「遺留分」といいます。生前贈与・遺言でこの遺留分を侵害してもその贈与・遺言は無効とはなりませんが、侵害された相続人は侵害した他の相続人などに対し、その侵害された部分を請求することができます。遺言書の作成に際しては、この遺留分を侵さないようご留意ください。

遺留分権利者とは

1.配偶者、2.直系卑属(被相続人の子や孫など)、3.直系尊属(被相続人の父母、祖父母など)。なお、遺言者の兄弟姉妹は法定相続人ですが遺留分権利者ではありません。

寄与分とは

共同相続人のうち、遺言者の事業に関する労務の提供、財産上の給付、療養看護などにより、被相続人の財産の維持・形成に特別に寄与した人は、遺産を分割する前に相続人全員の協議を経たうえで、寄与分として遺産の中から相当分を取得することができます。相続人全員による協議が調わない場合、家庭裁判所に申立てし、審判してもらうこともできます。遺言で相続分の配慮をしておくのもひとつの方法です。
また、2019年7月1日から特別寄与料の請求権の制度創設により、2019年7月1日以後の相続については、相続人以外の親族(注記)が一定の要件のもとで相続人に対して、金銭の請求をすることができるようになりました。

  • 相続人以外の親族 <例>子の配偶者、相続人でない兄弟姉妹、被相続人の配偶者の連れ子

特別受益とは

遺贈、婚姻・養子縁組のため、または生計の資本として生前贈与があった場合、生前贈与等を受けた相続人の相続分は、相続開始時の相続財産額に贈与の価額(「特別受益」といいます)を加えた価額に基づき法定相続分を算定し、その中から遺贈・贈与の価額を控除した残額となります。

STEP 04

相続財産の名義変更等

相続財産の名義変更等は、相続人のみなさまにとっては大きな負担になりますので、早急に手続きにとりかかることが大切です。財産の名義変更などの相続手続きには、下記の書類が必要です。

相続手続きの必要書類例

  • 必要書類は場合により異なります。
  • 必要書類は場合により異なります。
被相続人に関するもの
  • 戸籍謄本(注記)・全部事項証明書(本籍地の市区町村役場)
  • 改製原戸籍謄本(被相続人の父母等の本籍地の市区町村役場)
  • 住民票の除票(住所地の市区町村役場・被相続人死亡の記載があるもの)
  • 戸籍の附票(本籍地の市区町村役場)など
相続人に関するもの
  • 戸籍謄本(注記)・全部事項証明書(本籍地の市区町村役場)
  • 住民票抄本・印鑑証明書(住所地の市区町村役場)
  • 遺産分割協議書など
相続財産に関するもの
  • 登記事項証明書等(物件所在地の地方法務局または出張所)
  • 固定資産評価証明書(物件所在地の市区町村役場)
  • 名寄帳
  • 不動産賃貸借契約書
  • 不動産の図面(公図など)(地方法務局または出張所)など
金融資産に関するもの
  • 預貯金残高証明書(既経過利息計算書・取引報告書)
  • 公社債残高証明書
  • 株式等の明細書など
債務等に関するもの
  • 公租公課納付書(固定資産税、住民税)
  • 借入金明細書
  • 葬儀費用明細書など
その他財産に関するもの
  • 生命保険金支払明細書
  • 退職金支払明細など
  • 戸籍謄本は、被相続人の過去にさかのぼって他に相続人の方々がいないことを確認するためのものです。また、相続人が未成年者で、その親権者との間で利益相反となる場合では特別代理人の選任が必要となり、選任された特別代理人の戸籍謄本が必要となります。
  • 戸籍謄本は、被相続人の過去にさかのぼって他に相続人の方々がいないことを確認するためのものです。また、相続人が未成年者で、その親権者との間で利益相反となる場合では特別代理人の選任が必要となり、選任された特別代理人の戸籍謄本が必要となります。

主な相続手続きに必要な書類をご覧になりたい方は、こちらをご参照ください。

STEP 05

相続税の納付

×ばつ法定相続人の数〕を超える場合は、特例制度等により相続税がかからない場合でも申告の必要があります。

特例の活用

相続税の計算上、小規模宅地等の課税価格の特例、配偶者の税額軽減の特例等があります。この特例の適用を受けるためには、原則として、相続税の申告期限までに遺産分割協議がまとまっていること、相続税の申告を行うことなどが条件となります。

相続税の目安

  • 単位:万円(万円未満四捨五入)
  • 単位:万円(万円未満四捨五入)
課税価格
(基礎控除前)
配偶者と子1人 配偶者と子2人 配偶者と子3人
5,000万円 40(160) 10(80) 0(20)
8,000万円 230(680) 175(470) 137(330)
1億円 385(1,220) 315(770) 263(630)
1億5,000万円 920(2,860) 748(1,840) 665(1,440)
2億円 1,670(4,860) 1,350(3,340) 1,218(2,460)
2億5,000万円 2,460(6,930) 1,985(4,920) 1,800(3,960)
3億円 3,460(9,180) 2,860(6,920) 2,540(5,460)
3億5,000万円 4,460(11,500) 3,735(8,920) 3,290(6,980)
4億円 5,460(14,000) 4,610(10,920) 4,155(8,980)
4億5,000万円 6,480(16,500) 5,493(12,960) 5,030(10,980)
5億円 7,605(19,000) 6,555(15,210) 5,963(12,980)
8億円 14,750(34,820) 13,120(29,500) 12,135(25,740)
10億円 19,700(45,820) 17,810(39,500) 16,635(35,000)
  • この表は2023年12月1日現在の税制に基づき計算しています。
  • 相続人が法定相続分により相続したものとして計算、なお、配偶者の税額軽減の適用は、配偶者が法定相続分を相続したものとして計算しています。
  • ( )内は、配偶者がいない場合の税額です。
  • 税額控除は、配偶者の税額軽減以外はないものとして計算しています。
  • 相続税について、くわしくは税務署または税理士等の専門家にご確認ください。
  • この表は2023年12月1日現在の税制に基づき計算しています。
  • 相続人が法定相続分により相続したものとして計算、なお、配偶者の税額軽減の適用は、配偶者が法定相続分を相続したものとして計算しています。
  • ( )内は、配偶者がいない場合の税額です。
  • 税額控除は、配偶者の税額軽減以外はないものとして計算しています。
  • 相続税について、くわしくは税務署または税理士等の専門家にご確認ください。

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