大杉谷国有林からの手紙(57通目)
PDFはこちら→大杉谷国有林からの手紙(57通目)(PDF : 1,792KB)「保護林」って何? 2022年10月
長かった夏も終わり、最近は朝晩が冷え込む日が多くなってきました。大杉谷国有林も日に日に風が冷たく感じられるようになってきています。
9月16日には、環境省の近畿地方環境事務所との共催で「大台ヶ原・大杉谷の森林再生応援団」というイベントを開催しました。9月は台風などにより天候が不安定な日が多く、当日も最初は曇り空からのスタートでしたが、昼頃には青空も見ることができ、気持ちの良い天気の中でイベントを行うことができました。
イベントではボランティアの皆さんに御協力いただき、ニホンジカによる食害から樹木を守るため、トウヒなどをはじめとした樹木の幹に保護ネットを巻く作業を行いました。ボランティアの方々からは「どんな作業をするのか想像がつかなかったが、普段は行うことのできない意義のある活動に参加できて良かった」「大台ヶ原で行われている取組について、大変勉強になった」などのお声をいただくことができました。
写真1樹木に保護ネットを巻く様子
このイベントを通し、大台ヶ原・大杉谷の自然環境や自然を守る取組について知っていただくことができ、大変嬉しく思います。御参加いただいたボランティアの皆様、ありがとうございました。
今回ボランティアの作業を行った箇所を含め、大杉谷国有林の一部は「大杉谷森林生態系保護地域」という保護林に設定されています。
これまでの大杉谷の手紙の中でも「保護林」には触れていましたが、今回は、改めて「保護林って何?」というところから、大杉谷国有林を紹介させていただきたいと思います。
(1)保護林とは?
「保護林」とは、原生的な天然林などを保護・管理することにより、森林生態系からなる自然環境の維持、野生生物の保護、遺伝資源の保護、森林施業・管理技術の発展、学術の研究等に資することを目的としている国有林野のことです。
この保護林の制度は、大正4年(1915年)に国有林独自の制度として創設された、100年以上の歴史ある制度です。現在(令和4年4月)では、全国で661か所もの保護林が設定されており(図1)、それぞれの保護林の自然環境や生育する野生生物を保護していくための保護・管理が行われています。
具体的には、保護林に関するデータを収集するため、5年または10年の間隔でモニタリング調査を実施しています。調査結果については、学識経験者等からなる保護林管理委員会において評価を行い、今後の保全・管理に必要となる措置の検討などを行っています。
図1日本国内の保護林の分布
(2)大杉谷の保護林について
さて、ここからは大杉谷国有林に話を戻したいと思います。
大杉谷国有林では今から54年前の昭和43(1968)年に保護林が設定されました。この地域の森林は、暖温帯性常緑広葉樹林(アカガシ、ウラジロガシなど)、冷温帯性落葉広葉樹林(ブナ、ミズナラなど)や亜高山帯性の針葉樹林(トウヒ、ウラジロモミなど)が分布し、原生的な状態を呈していると共に、太平洋側で見られるほとんどの動植物が生息していることもあって、学術的にも貴重な森林です。
写真2ブナ
写真3ウラジロモミ
このように豊かな自然を次世代に残すことができるよう、今回ご紹介したような保護林内での森林被害対策を継続していきたいと思います。また、ボランティアなどの情報についてもホームページで公開していきますので、引き続きよろしくお願いします。
最後にお知らせです。
三重森林管理署では、10月18日に国有林の森林計画に関する地域懇談会を行いました。今回の地域懇談会は、大杉谷国有林が含まれる「南伊勢森林計画区」の森林計画に関する懇談会です。現在、南伊勢森林計画区では、令和元年から令和5年までの森林計画に沿って間伐などの事業を行っていますが、来年度は、令和6年度からの事業に向けて、次期森林計画を樹立する年となります。
今回は、次期森林計画の方向性などについて説明を行い、地域の皆様の御意見を伺いました。皆様からいただいた御質問等は、今後の森林計画の樹立の参考にさせていただきます。引き続きよろしくお願いします。
写真4地域懇談会の様子
2022年10月
編集:三重森林管理署 尾鷲森林事務所 係員
発行:三重森林管理署 尾鷲森林事務所 地域統括森林官
お問合せ先
三重森林管理署
ダイヤルイン:050-3160-6110
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