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合法伐採木材等に関する情報:タイ

(2024年4月1日:全面更新)


注 国別情報については、令和5年度の調査成果等を参考情報として掲載しています。
注 合法性の確認に活用できる書類の事例はこちら

1. 木材等の生産及び流通の状況

1)森林資源の概況

タイの国土面積5,131万haのうち、2015年時点の森林被覆は1,639万ha(約32%)と推定されています(FAO 2015)。その内訳は原生林670万ha、その他の天然林または二次林570万ha、人工林399万haでした。

森林局が発表している2021年の森林面積は、1,635万4,000ha、森林率は31.6%です。ただし、この森林面積の数値には、農業指定地域で施業が行われているユーカリ植林地、林間農地、ゴム植林地、オイルパーム植林地その他の非木材製品生産地は入っていません。ゴムノキのプランテーション面積は約390万ha(2023年現在)、ユーカリの植林地は48万ha(2020年現在)存在しています。

タイで生産されている木材の大部分は、私有地で植林されているゴムノキやユーカリです。タイではかつてチークなどの天然林択伐施業が広く行われていましたが、1989年の内閣決議の結果、全ての伐採コンセッションは無効となり、天然林の伐採は禁止されています。ゴムノキは南部を中心に樹脂生産を目的として広く植栽されていますが、樹齢が古くなり樹脂の出が悪くなったものが、製材、繊維板、パーティクルボード、木製家具などの原料として伐採されています。一方、ユーカリは主に東北部と中部において、紙・パルプの原料として、契約栽培などによって生産されています。その他、チークが主に北部で植林されています。国連食糧農業機関(FAO)(2018)によると、2015年のタイの製材及びパルプ用丸太生産量は910万m3であったと推定されています。

タイの木材加工産業は、1990年代には、その原料の多くを輸入材に頼っていましたが、2018年現在では国内で生産されたゴムノキ、ユーカリを主な原料としています。一方で、マレーシアやラオスなどから製材を、中国などから合板を輸入しています。

タイの木材・木材製品の輸出量は拡大を続けており、2015年には広葉樹製材(99%が中国向け)は世界第2位、繊維板(中東、ベトナムなど向け)、パーティクルボード(韓国、マレーシアなど向け)、木質チップ(中国と日本向け)は世界第3位の輸出量となっています。また木製家具(中国、日本向け)の輸出も盛んです。

タイで生産される木材のうち、ワシントン条約付属書に掲載され保護対象となっている樹種は、シャムローズウッド(紫檀)(Dalbergia cochinchinensis)、沈香(Aquilaria属とGyrinops属)、黑檀(Diospyros ferrea)です。特に、シャムローズウッドの違法取引を阻止するために、タイ政府は様々な処置を講じていますが、現在でも深刻な状況が続いていると言われています。

2021年の木材輸出入量については、輸出入ともに単板の量が多いのが特徴的です。さらに輸入量については、合板が多いのが特徴です。チップ・木質繊維、製材品、切削板、繊維板、木質パルプ以外のパルプについては、輸入量に対して輸出量が大幅に多くなっています。

表 林産物輸出入量(2021年)

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2021年の国別丸太・製材品輸入量は丸太が22万m3、製材品は50万4,000m3である。丸太は米国からの輸入量が20万1,187m3と多く、丸太輸入量合計の91%を占めている。製材品については、米国(15万1,445m3)、日本(14万2,175m3)及びマレーシア(13万8,152m3)からの輸入量が多く、これら3か国からの輸入量は、全輸入量の86%を占めています。

表 相手国別丸太・製材品輸入量(2021年)

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2021年の国別丸太・製材品輸出量については、丸太は8か国に対して、製材品は13か国に対して輸出している。丸太、製材品ともに主要輸出相手国は中国であり、丸太の95%(6万56m3)、製材品の96%(234万5,645m3)を中国に向けて輸出しています。

表 相手国別丸太・製材品輸出量(2021年)

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2. 合法伐採木材に関連する法令等及びその運用

1)概要

タイにおいては、1.国有保存林、2.その他の公有地、3.私有林、4.植林プランテーション法に基づいて登録された主に在来樹種のプランテーション(公有地ないし私有地)のそれぞれにおいて、森林の所有権や使用権、樹木の伐採や輸送に関する法規が異なります。

タイで生産されている主要な木材は私有林からのゴムノキおよびユーカリですが、これらは王立森林局が発行する伐採許可、及び伐採地からの輸送許可の取得を免除されています。一方で、国有保存林の全樹種、その他公有地からの制限樹種、私有地からのチーク、ヤン、紫檀については、王立森林局から伐採許可証と輸送許可証の取得が必要です。また植林プランテーション法に基づくプランテーションからの木材は、伐採証明書と王立森林局に承認された木材梱包リストを添付して出荷する必要があります。木材加工工場へは、上記のように由来によって扱いの異なる木材が納入されます。

なお、2022年から造林法で定める自己宣言を行った個人が行う人工林チークの伐採については、伐採許可を取得しなくとも伐採できるように制度が改正されました。

タイの木材加工工場の多くは、ゴムノキ、ユーカリなど14の非制限樹種の加工しか認められない免許を持つものであり、それ以外の制限樹種も加工できるのは1960年以前に免許を取得した木材加工工場に限定されます。加工された木材製品の出荷に際しては、すべての樹種について加工工場により輸送証明書が発行され、県を越える輸送には王立森林局の森林チェックポイントからの輸送許可証の取得も必要です。この輸送証明書や輸送許可証には、樹種や、数量、輸送元、輸送先などの情報が記載されています。ただし紙、パルプ、家具などの製品については対象外となっています。また、制限樹種から作られた木材製品や家具の輸送には、制限樹種材製品証明書が必要です。

丸太、製材、木炭の輸出については、対外貿易局から輸出許可証を取得することが義務付けられています。輸出許可証を取得するためには、制限樹種の丸太については王立森林局発行の輸送許可証や植林プランテーション登録書(通称「Sor Por文書」、登録植林プランテーションからの丸太の場合)、製材については加工工場からの移動証明書などの書類が必要となっています。なお、チークの丸太及び製材は、森林産業機構(FIO)のみが輸出を許可されています。また、ワシントン条約付属書に記載された樹種の製品の輸出には、必要に応じて、農業局(DOA)により、ワシントン条約に基づく輸出許可証が発行されます。

なお、ゴムノキを除く丸太及び製材品並びに木炭の輸出には、「王国外での取引又は輸出のための木材及び木材製品の証明書」の取得が必要です。

木材(丸太)移動証明書(様式)(PDF: 1,343KB)
木材(製品)移動証明書(様式)(PDF: 1,152KB)
王国外での取引又は輸出のための木材及び木材製品の証明書(様式)(PDF: 229KB)

2)法令

最新の林業関連法令に係る情報は、タイ王国森林局のウェブサイト(タイ語)の「関連法令」の頁から取得できます(https://www.forest.go.th/goods/กฎหมายที่เกี่ยวข้อง/)

  • 森林法(Forest Act B.E. 2484)(タイ語PDF: 337KB英文PDF: 1,140KB) :1941年制定。1948年、 1982年、1989年、 2014年、2019年改正。
    国内林業を扱う基本法です。森林管理及び伐採、公有森林地の利用権配分の基礎を規定しているほか、木材の伐採、輸送、加工、販売に関する規則を詳述しています。
  • 国有保存林法(National Reserved Forests Act B.E. 2507)(タイ語PDF: 105KB英文PDF: 507KB) :1964年制定、2016年改正。
    保存林を決定し、その維持、管理当局に王立森林局を指定しています。保存林の承認された利用及び木材・非木材林産物の伐採を含む利用権配分条件を概説しています。保存林内の劣化森林における農業利用権の割り当て及び植林を認めています。
  • 農地改革法(Agricultural Land Reform Act B.E. 2518)(タイ語PDF: 153KB英文PDF: 145KB) :1975年制定。
    土地改革プログラムのもとで、小規模農家への公有地の農業用利用のための配分、農地改革委員会及び農地改革局(ALRO)の設置を規定。
  • 農地整備法(Agricultural Land Consolidation Act B.E. 2558)(タイ語PDF: 214KB英文PDF: 1,030KB) :2015年制定。この時、同名の1974年法が廃止されました。
    土地整備イニシアチブの前から公有地を使っていた個人に利用権を配分するための規定を含みます。
  • 生活用地配分法(Allotment of Land for Living Act B.E. 2511)(タイ語PDF: 98KB英文PDF: 1,069KB) :1968年制定。
    農業に関連した利用及び生計のための農村世帯による公有地使用を規定しています。
  • 土地法(Act Promulgating the Land Code B.E. 2497)(タイ語PDF: 456KB英文PDF: 1,532KB) :1954年制定。その後逐次改正。
    個人及び法人が土地を所有し使用するための条件と資格を規定しています。私有地の所有権及び公有地の利用証明書の発行、国の土地登記簿の維持促進、土地譲渡条件を規定しています。
  • 植林プランテーション法(Forest Plantation Act B.E. 2535)(タイ語PDF: 158KB英文PDF: 255KB) :1992年制定。2015年改正。
    私有地、及び土地法または国有保存林法に基づく利用証明書をもつ適格な公有地で栽培されている58樹種の植林地(ゴムノキとユーカリは含まない)の登録の適格性の概要、登録植林地で栽培される木材の伐採及び輸送条件を規定しています。

3)関係行政機関一覧

名 称 略称 主な業務
天然資源環境省(MONRE)王立森林局(Royal Forest Department) RFD 国有保存林の管理。
木材伐採、輸送、加工、製造、貿易の監督及び規制。
農業・協同組合省(MOAC)農地改革局(Agricultural Land Reform Organization) ALRO 農地改革法(Agricultural Land Reform Act)に従って農⺠に公有地を配分。
農業・協同組合省 協同組合振興局(Cooperative Promotion Department) CPD 植林農民協同組合を登録。
協同組合員に公有地を配分。
農業・協同組合省 農業局(Department of Agriculture) DOA 木材及び木材製品の輸出用の植物検疫証明書の発行。
ワシントン条約付属書植物及び派生物の輸出に対する関連許可証の発行。
社会開発・人間安全保障省(MSDHS)社会開発福祉局(Department of Social Development and Welfare) DSDW 生活用地配分法に従い、土地無しの社会的に恵まれない人々に公有地を配分。
内務省(MOI)土地局(Department of Lands) DOL 土地保有の登録、土地所有権及び土地利用証明の発行。地籍調査の実施。

3. その他木材等の適正な流通の確保に関する情報

1) 森林認証スキーム

タイ森林認証面積は、FSCで17万3,519ha、PEFCでは3,068haにとどまっている。さらにCoC認証については、FSCが319件、PEFCは40件です。

タイでは、タイ森林認証協議会(Thailand Forest Certification Council (TFCC))が2016年にPEFCとの相互承認を締結しています。

2) 自己宣言アプローチ

タイ工業連盟は、現在、育林農家が自分たちの樹木の合法性を確認できる単純で低コストな実際的方法を提供するような様々な自己宣言アプローチの実現可能性を探っています。これらの自己宣言は、将来、王立森林局が設置する「E-ツリーオンラインデータベース」で閲覧できるようになる可能性があります。E-ツリーオンラインデータベースでは私有植林地所有者に植林地所有権、樹種、伐採、輸送などに関する情報を登録させます。検討されている自己宣言の方法には、次のようなものが含まれています。

  • タイゴム協会(RAOT)、または他の育林農家協会あるいは協同組合を通じた紙ベースあるいは電子媒体ベースの自己宣言
  • 王立森林局の立入検査による認証
  • 地元の村や地区当局の立合いによる自己宣言

上記のほか、農業・農業協同組合銀行(Bank for Agriculture and Agricultural Cooperatives: BAAC)による、小規模保有者による樹木栽培促進のために設けられたツリーバンクプログラム(Tree Bank Program注1)を利用した「自己宣言」も検討されています。

注1 木を植えれば、それを担保としてビジネスのために必要な資金を融資するシステム。

3) その他合法木材関連の情報

FLEGT-VPA注2

タイ王立森林局は、EUとの自主的パートナーシップ協定(VPA)締結のためのタイ-EU FLEGT事務局(TEFSO)を2013年に設置しました。合法性の定義、木材合法性保証システム(TLAS)、加工流通過程の管理システムの開発などが進められています。

注2 FLEGT:Forest Law, Enforcement, Governance and Trade(森林法、施行、ガバナンス及び貿易)
VPA:Voluntary Partnership Agreement:自主的二国間合意

4. 合法性の確認に活用できる書類の例

1)原材料情報(証明書)として活用できる書類(違法伐採に係る木材等に該当しない蓋然性が高いことを証する情報)

発行対象 商業用植林プランテーション法に基づく登録植林プランテーション
発行者 王立森林局
概要 伐採通知書を県の機関に提出し、その後、伐採証明書/伐採通知書(Sor Por 13)を発行する植林プランテーション登録官により確認が行われます。

(出典)「クリーンウッド」利用推進事業のうち生産国における現地情報の収集(熱帯地域)事業報告書(平成31年3月報告)

発行対象 商業用植林プランテーション法に基づく登録植林プランテーション
発行者 王立森林局
概要 事業者は王立森林局規定の書式に従った植林プランテーション木材梱包リストを準備し、その帳簿を県の管轄官庁に登録する必要があります。
梱包リストは樹種、サイズ、量、私印、タグ詳細、丸太の連続番号に関する情報を含みます。木材梱包リストは王立森林局係官によって確認され、無作為検査に備えて、輸送されている丸太とともに保持される必要があります。

(出典)「クリーンウッド」利用推進事業のうち生産国における現地情報の収集(熱帯地域)事業報告書(平成31年3月報告)

発行対象 公有地(植林プランテーション法に基づく登録植林プランテーションを除く)からの木材
発行者 王立森林局
概要 国有保存林または制限樹種については輸送前に、国有保存林以外の公有地からの非制限樹種については最初の森林チェックポイントで交付されます。

(出典)「クリーンウッド」利用推進事業のうち生産国における現地情報の収集(熱帯地域)事業報告書(平成31年3月報告)

発行対象 丸太所有者
発行者 王立森林局
概要 丸太を販売目的で移動させるときに必要な24時間有効な証明書です。
発行対象 ゴムノキを除く輸出用の丸太及び製材品並びに木炭
発行者 王立森林局
概要 ゴムノキを除く輸出用の丸太及び製材品並びに木炭の輸出をするときに必要な証明書です。ウッドチップ、木質ペレットや家具等に対しては発行されません。

(出典)「クリーンウッド」実施支援事業のうち違法伐採関連情報等の提供(生産国における情報調査)事業報告書(令和6年3月報告)

5. 関連する報告書

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