外力の将来変化を予測する方法としては、大規模アンサンブル気候予測データベース(d4PDF)の活用が考えられます。これは、過去6000年分(日本周辺域は3000年分)、将来については5400年分のモデル実験をおこなったもので、多数の実験例(アンサンブル)を活用することで、台風のような極端現象の将来変化を、確率的に、かつ高精度に評価することができます。
d4PDFのデータセットから土佐湾周辺を通過する台風を抽出した結果が図-2です。大量のモデル実験をもとにしているので、過去実験で4,608個、将来予測(気温4°C上昇)で2,744個と、非常に多くケースの台風を想定することができます。これらの台風について高潮や波浪の推算をおこなうことで、将来の「高潮による潮位偏差」「波浪に対する必要高」を、予測の幅(不確実性)とあわせて算定することができます。
d4PDFの過去実験は、過去に経験した気象をモデル化したものですが、実際の観測結果との間にはモデルバイアスと呼ばれる差異があります(図-3)。そのため、将来予測の結果もモデルバイアスを含んだものであるため、適切に補正したうえで使用せねばなりません(図-4)。
土佐湾沿岸に11地点を設定し、d4PDFの将来予測結果(気温4°C上昇)から算定された有義波高の確率分布に対して、3種類の手法でバイアス補正を試みました。手法1(図-5)による補正結果は手法2、手法3よりも高めの値となる傾向が見られましたが、手法による結果の違いは地点による結果の違いに比べれば大きくありませんでした(図-6)。この結果は土佐湾についての結果でしかないため、現時点で一般的な手法の選定方法を提示することはできませんが、引き続きバイアス補正手法の研究に注目していきます。
研究成果の詳細は下記論文をご覧ください