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参照数: 3804
imm-2024-01
Repeated Omicron exposures redirect SARS-CoV-2-specific memory B cell evolution toward the latest variants

Ryutaro Kotaki, Saya Moriyama, Shintaro Oishi, Taishi Onodera, Yu Adachi, Eita Sasaki, Kota Ishino, Miwa Morikawa, Hiroaki Takei, Hidenori Takahashi, Tomohiro Takano, Ayae Nishiyama, Kohei Yumoto, Kazutaka Terahara, Masanori Isogawa, Takayuki Matsumura, Masaharu Shinkai, Yoshimasa Takahashi

Science Translational Medicine (2024), DOI: 10.1126/scitranslmed.adp9927

相次いで出現するSARS-CoV-2変異株に対応するためブースターワクチンがオミクロン株対応型へと切り替えられましたが、過去に接種された従来株ワクチンによる強い免疫学的刷込みの影響が報告されています。すなわち、変異株ブースターワクチン接種においては、従来株応答性の抗体を持つ記憶B細胞の中で変異株へ交差性を持つもののみが活性化され、変異株応答に特化したB細胞応答がほとんど誘導されません。本研究では、従来株mRNAワクチン接種によって誘導された記憶B細胞が、2回のオミクロン株抗原刺激によって、抗体遺伝子をオミクロン株に対して特化するように進化させていくことを発見しました。これは今後の変異株ブースターワクチン戦略において重要な基礎的知見となると考えられます。

本内容は日本学術振興会、AMED、厚生労働省の研究支援を受けて実施しました。

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imm 2023 02
Structural basis for cross-group recognition of an influenza virus hemagglutinin antibody that targets postfusion stabilized epitope

Keisuke Tonouchi, Yu Adachi, Tateki Suzuki, Daisuke Kuroda, Ayae Nishiyama, Kohei Yumoto, Haruko Takeyama, Tadaki Suzuki, Takao Hashiguchi, Yoshimasa Takahashi

PLoS Pathogens, 2023 Aug; 19(8): e1011554. | doi; 10.1371/journal.ppat.1011554

インフルエンザウイルスの抗原変異に対応可能な交差防御抗体に注目が集まり、その誘導を目的とした新規ワクチンの開発が世界的に進められています。しかし、A型インフルエンザには遺伝子系統的に大きく異なる2つのグループの株が存在しており、両グループに有効な交差防御抗体を誘導できるワクチンの実現には至っておりません。

当センターでは、先行研究により複数のヒト交差抗体の単離に成功しており、本研究では2つのグループを跨いだ交差防御能を示す優れた抗体が存在することを見出しました。抗体-抗原複合体の結合様式について構造解析を行った結果、ウイルス感染時に生じる特殊なヘマグルチニン抗原部位を標的とした抗体であることを明らかにしました。

本研究で見出した新しい抗体と抗原部位に関する情報は、今後、抗原変異に対応可能な新しいワクチンの開発に活用されます。

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imm 2022 02
CD62L expression marks SARS-CoV-2 memory B cell subset with preference for neutralizing epitopes

Taishi Onodera, Nicolas Sax, Takashi Sato, Yu Adachi, Ryutaro Kotaki, Takeshi Inoue, Ryo Shinnakasu, Takayuki Nakagawa, Shuetsu Fukushi, Tommy Terooatea, Mai Yoshikawa, Keisuke Tonouchi, Takaki Nagakura, Saya Moriyama, Takayuki Matsumura, Masanori Isogawa, Kazutaka Terahara, Tomohiro Takano, Lin Sun, Ayae Nishiyama, Shinnya Omoto, Masaharu Shinkai, Tomohiro Kurosaki, Kazuo Yamashita, and Yoshimasa Takahashi

Science Advances, 14 Jun 2023 Vol 9, Issue 24 | DOI: 10.1126/sciadv.adf0661

SARS-CoV-2の中和抗体は主にスパイク受容体結合ドメイン (RBD) を標的としていますが、RBD結合抗体を持つ記憶B細胞でも細胞ごとに中和活性はバリエーションに富んでいます。本研究では、記憶B細胞のシングルセルプロファイリングと抗体の機能評価を組み合わせることで、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の回復者において強力な中和抗体を保有する記憶B細胞の表現型を明らかにしました。強力な中和活性を持つ記憶B細胞サブセットはCD62Lを高発現しており、それらの特徴的なエピトープ選好性とVH(免疫グロブリン重鎖可変領域) 遺伝子が強力な中和活性に関与していました。また感染回復者の血中のCD62L陽性サブセットの頻度と中和抗体価には相関が認められ、COVID-19の重症度によってCD62L陽性サブセットの動態に差があることも明らかになりました。本研究における記憶B細胞プロファイリングは強力な中和活性を持つ記憶B細胞サブセットの表現型を明らかにし、今後の液性免疫の理解を更に深めるものです。

本研究はAMEDの支援を受けて実施されました。

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参照数: 28733
imm 2022 02
Vaccination-infection interval determines cross-neutralization potency to SARS-CoV-2 Omicron after breakthrough infection by other variants

Sho Miyamoto†, Takeshi Arashiro†, Yu Adachi†, Saya Moriyama†, Hitomi Kinoshita†, Takayuki Kanno, Shinji Saito, Harutaka Katano, Shun Iida, Akira Ainai, Ryutaro Kotaki, Souichi Yamada, Yudai Kuroda, Tsukasa Yamamoto, Keita Ishijima, Eun-Sil Park, Yusuke Inoue, Yoshihiro Kaku, Minoru Tobiume, Naoko Iwata-Yoshikawa, Nozomi Shiwa-Sudo, Kenzo Tokunaga, Seiya Ozono, Takuya Hemmi, Akira Ueno, Noriko Kishida, Shinji Watanabe, Kiyoko Nojima, Yohei Seki, Takuo Mizukami, Hideki Hasegawa, Hideki Ebihara, Ken Maeda, Shuetsu Fukushi, Yoshimasa Takahashi, Tadaki Suzuki (†These authors contributed equally)

Med, Volume 3, Issue 4, 2022

2回mRNAワクチンを接種した後にアルファ系統またはデルタ系統のウイルス感染(ブレークスルー感染)を経験した人は、2回ワクチン接種を受けたが感染しなかった人に比べて、オミクロン系統に対する高い血清中和抗体価を持つことを明らかにしました。ワクチン接種から感染に至るまでの日数が長いほど、オミクロン系統を含む変異ウイルスに対する血清中和抗体価が高く誘導されていました。このような変異ウイルスに対する中和抗体の誘導要因の同定は、各地域のワクチン接種や感染流行の状況を踏まえた集団免疫の評価に寄与するだけでなく、3回目のワクチン接種がオミクロン系統の中和抗体産生を誘導する機構の理解を進めると期待されます。

本研究では、オミクロン系統とは異なる抗原のワクチン接種とウイルス感染によるブレークスルー感染にも関わらず、オミクロン系統に対する高い中和抗体価が誘導されること、ワクチン接種から感染までの日数が回復期の従来株、アルファ系統、ベータ系統、デルタ系統、オミクロン系統(BA.1とBA.1.1)に対する血清中和抗体価と正の相関を示すことを明らかにしました。これはワクチン接種後から感染に至るまでの日数が進むほど抗体を産生する記憶B細胞の成熟が進み(Kotaki et al. Science Immunology. 2022)、感染によって記憶B細胞が反応し、中和抗体産生が誘導されることを支持しています。

(注記)本研究はブレークスルー感染の免疫応答から、集団免疫や免疫誘導の理解のために実施されたものであり、ブレークスルー感染を3回目ワクチン接種の代替とすることを支持するものではありません。ブレークスルー感染にも、ウイルス感染による発症及び重症化、他者への感染のリスクが伴います。

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vir 2021 09
SARS-CoV-2 Omicron-neutralizing memory B-cells are elicited by two doses of BNT162b2 mRNA vaccine

Ryutaro Kotaki†, Yu Adachi†, Saya Moriyama†, Taishi Onodera†, Shuetsu Fukushi, Takaki Nagakura, Keisuke Tonouchi, Kazutaka Terahara, Lin Sun, Tomohiro Takano, Ayae Nishiyama, Masaharu Shinkai, Kunihiro Oba, Fukumi Nakamura-Uchiyama, Hidefumi Shimizu, Tadaki Suzuki, Takayuki Matsumura, Masanori Isogawa, Yoshimasa Takahashi († These authors contributed equally)

Science Immunology (2022), DOI: 10.1126/sciimmunol.abn8590

mRNAワクチン2回接種後に、オミクロン株に対して中和活性を有する抗体が記憶B細胞に保存されていることを見出しました。今回の発見により、3回接種やブレークスルー感染によってオミクロン中和活性をもつ抗体が血液中に産生されるメカニズムの解明につながることが期待されます。

オミクロン株は多くのアミノ酸変異によりmRNAワクチン2回接種後に誘導される血液抗体から強く逃避しますが、3回接種やブレークスルー感染後の血液にはオミクロン中和抗体が誘導されることが報告されています。本研究では、mRNAワクチン2回接種後に誘導された記憶B細胞を取り出し、この細胞に保存されている抗体を解析しました。すると、中和活性をもつ抗体のうち、約30%の抗体がオミクロン株への中和活性を保持していることを明らかとしました。ワクチン3回接種やブレークスルー感染後には、これら記憶B細胞が反応してオミクロン株に対する中和抗体を血液中に産生する可能性が示唆されます。

本内容はAMEDの研究支援を受けて実施しました。

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参照数: 24813
vir 2021 09
A SARS-CoV-2 Antibody Broadly Neutralizes SARS-related Coronaviruses and Variants by Coordinated Recognition of a Virus Vulnerable Site

Taishi Onodera, Shunsuke Kita, Yu Adachi, Saya Moriyama, Akihiko Sato, Takao Nomura, Shuhei Sakakibara, Takeshi Inoue, Takashi Tadokoro, Yuki Anraku, Kohei Yumoto, Cong Tian, Hideo Fukuhara, Michihito Sasaki, Yasuko Orba, Nozomi Shiwa, Naoko Iwata, Noriyo Nagata, Tateki Suzuki, Jiei Sasaki, Tsuyoshi Sekizuka, Keisuke Tonouchi, Lin Sun, Shuetsu Fukushi, Hiroyuki Satofuka, Yasuhiro Kazuki, Mitsuo Oshimura, Tomohiro Kurosaki, Makoto Kuroda, Yoshiharu Matsuura, Tadaki Suzuki, Hirofumi Sawa, Takao Hashiguchi, Katsumi Maenaka, and Yoshimasa Takahashi

Immunity 2021 Oct 12;54(10):2385-2398.e10. doi: 10.1016/j.immuni.2021年08月02日5.

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)変異株やSARSコロナウイルスなどのコロナウイルスに広く有効な新しいヒト抗体を単離し、構造決定及び病理評価を行うことに成功し、その高い中和活性と交差反応性のメカニズムを解明しました。今回研究グループは、完全型ヒト抗体を作るマウス(TC-mAbマウス)から、SARS-CoV-2に対して強い中和活性を有し、変異株やその他のコロナウイルスも中和できる抗体NT-193を単離しました。このNT-193抗体は、定常領域がIgG3タイプであることにより中和活性を増強するユニークな抗体であるとわかりました。さらに,IgG3タイプのNT-193抗体は他のSARS類縁コロナウイルスに対しても強い中和活性を示したことから、広くSARS類縁ウイルスに対して有効な抗体であると示唆されました。NT-193抗体はスパイクタンパク質の受容体結合部位(RBD)と高い結合活性を示すことから、NT-193とRBDとの複合体の立体構造をX線結晶構造解析により決定することができました。その結果,受容体ACE2結合領域とコロナウイルスの保存性の高い領域の両方のほぼ全てを認識する抗体であることを特定し、それぞれの領域が中和活性とコロナウイルス交差反応性に寄与することが明らかになりました。さらに、ハムスターを用いた感染実験からこれまでに臨床応用されている抗体医薬品と比較して,遜色のない優れた予防・治療効果を示すことがわかりました。

本内容は、北海道大学前仲勝実教授の研究グループとの共同成果であり、AMEDの研究支援を受けて実施しました。

  1. CD8陽性T細胞非存在下でのSARS-CoV-2複製制御の可能性
  2. COVID-19回復者での中和抗体が時間と共に成熟することにより、変異株への活性と交差性が向上する
  3. ウイルス粒子構造は防御能に優れたIgA抗体応答を誘導する
  4. 隠れたヘマグルチニンエピトープの露出によって、インフルエンザ交差防御抗体の選択が促進される
  5. TLR2とMincleによる連続した感知は未熟骨髄系細胞に劇症型溶血性レンサ球菌感染症に対する防御免疫を誘導させる
  6. リンパ節におけるSIV抗原量はGag特異的セントラルメモリーCD8陽性T細胞レベルと負の相関を示すがEnv特異的エフェクターメモリーCD8陽性T細胞レベルとは正の相関を示す
  7. サルエイズモデルでのウイルス複製長期制御群の解析:ウイルス特異的CD8陽性T細胞反応の広範化は検出限界以下の低レベルのウイルス増殖を反映する
  8. インフルエンザ全粒子ワクチンは、TLRシグナルを介し迅速な高親和性メモリーB細胞応答を惹起する
  9. ヒト分泌型IgA抗体のインフルエンザウイルス中和活性と四次構造の関係性
  10. 感染局所の胚中心で行われるクローン選択が、変異ウイルスに対するメモリーB細胞応答を調節する
  11. インターフェロンγを産生する未熟骨髄系細胞は劇症型A群レンサ球菌感染に対して防御的に働く

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