小児における検査用検体の残余血液を用いた新型コロナウイルスの抗体保有状況実態調査 報告

2024年8月21日
厚生労働省
国立感染症研究所

【背景・目的】

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染による新型コロナウイルス感染症(COVID-19) は、2023年5月8日に感染症法上の位置付けが5類感染症へ変更後も流行が継続しており、その疾病負荷は現在においても決して小さくはない感染症である。疾病の発生動向を正確に把握することは公衆衛生対策立案のため必須であるが、定点報告疾病となったことから、発生動向の全体像を捉えるために、様々な手法を用いた調査が実施されてきている。その1つの手法として感染症法に基づく積極的疫学調査として検査用検体の残余血液を用いた血清疫学調査が実施されてきた。この血清疫学調査は、検査用検体の収集方法が異なる複数の調査を組み合わせて実施されてきたが、令和5年7月以降に実施した「民間検査機関での検査用検体の残余血液を用いた新型コロナウイルスの抗体保有割合実態調査」にて、6ヶ月齢 –11ヶ月齢の小児の抗S抗体保有割合が1–4歳の小児に比べて高い傾向が指摘され、母体からの移行抗体が6ヶ月齢を超えて長期に渡る可能性が示唆されていた。したがって、小児において感染もしくはワクチン接種で誘導された抗体を保有する者の割合を正しく推定するためには、移行抗体の残存期間を詳細に検討する必要性がある。他の病原体に対する血清抗体の研究では、血清抗体の主要アイソタイプであり母体から積極的に移行することが知られているIgG 抗体と母体からの積極的な移行メカニズムを有さないIgA 抗体の2 種類のアイソタイプの抗体を測定し、母体からの移行抗体の影響を推定することが可能であるこ とが報告されている。そこで、本調査では、1歳半未満の小児を対象に、各月齢区分の抗体保有割合を抗体アイソタイプ毎に算出することにより、移行抗体の残存が影響する月齢区分を特定し、小児における感染もしくはワクチン接種で誘導された抗体保有割合を推定することを試みた。

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