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公安調査局長・公安調査事務所長会議における公安調査庁長官訓示

2014年5月26日 更新

我が国を取り巻く内外の諸情勢は,厳しさを増しています。
まず,国際情勢を見ますと,北朝鮮は,金正恩第1書記による独裁的な指導体制の確立を進めながら,核・ミサイル開発を推し進め,昨今には「新たな形態」の核実験の実施を示唆しました。その不透明な統治体制と繰り返す挑発的な言動等は,我が国の公共の安全に重大な影響を及ぼしております。

中国は,習近平総書記が権力基盤を固めつつある一方で,治安維持や思想・言論統制の強化,高級官僚の汚職摘発等での対応が今後の政策運営の不安定化につながるおそれもあります。こうした中,我が国との関係では,尖閣諸島周辺への公船等の派遣,東シナ海防空識別区の設置などで引き続き強硬姿勢を示すとともに,我が国の孤立化を企図する反日宣伝活動を執ように展開し,更に拡大する動きもみられます。

ロシアは,北方領土において各種インフラ整備を着々と推進する一方で,我が国との経済関係強化に強い期待感を表明していたところ,ウクライナ問題で国際世論から批判を受けつつも,クリミア半島のロシア化を推し進め,国際情勢の不安定要因となっています。
また,「アルカイダ」関連組織が中東・アフリカなどで活動範囲を広げ,活発にテロを実行するなど,世界各地でテロが発生しています。欧米においても「ホームグロウン・テロリスト」が脅威として認識されています。国際テロは,国際社会及び我が国にとって現実の脅威となっています。

このほか,イランや北朝鮮等による大量破壊兵器関連物資・技術等の調達,諸外国の情報機関によるサイバー空間を含めた諜報活動については,引き続き警戒が必要な状況です。
国内情勢に目を転じますと,オウム真理教については,逃亡していた特別手配犯の裁判が進行する中,主流派が"麻原絶対"を堅持しつつ,組織拡大に力を注ぐ一方,上祐派は観察処分を免れるために麻原色の払拭を前面に押し出すなど,欺まん的体質を維持しています。また,過激派や右翼団体等の諸団体が領土や歴史認識,在日米軍基地などの問題を捉え,活発な活動を展開しています。

こうした現下の情勢に鑑み,当面,留意していただきたい事項を申し述べます。
第1は,北朝鮮・朝鮮総聯に関連する情報収集の一層の強化についてです。
北朝鮮が不透明な統治体制のまま国際社会に対する挑発を繰り返していることや日本人拉致問題が未解決となっていることなどを踏まえ,その政治・経済・社会・軍事動向について幅広く把握するとともに,同問題の解決に資する情報を迅速かつ的確に入手していただきたいのです。また,北朝鮮による朝鮮総聯指導の実態や朝鮮中央会館問題が同組織に及ぼす影響などに関する調査を深めていただきたいのです。

第2は,国際テロ関連調査の一層の推進についてです。
テロの脅威は,従前にも増して深刻・多様化しており,当庁には,テロ関連情報の収集・分析能力の一層の強化が求められております。各局・事務所におかれましては,2020年オリンピック・パラリンピック東京大会の開催も見据え,情報網をより盤石なものとし,関連情報の収集に取り組んでいただきたいのです。

第3は,オウム真理教に対する観察処分の適正かつ厳格な実施と,期間更新請求に向けた取組の強化・徹底についてです。
教団がじゃっ起した数々の凶悪事件の風化が言われる中で,団体規制法に基づく観察処分の期間が,来年1月末で満了を迎えるところ,当庁としては,教団の危険性の増大を抑止し,教団施設を抱える地域住民の恐怖感・不安感を解消するために,その更新手続も視野に入れて,観察処分を適正かつ厳格に実施していかなければなりません。
教団の現状を見ますと,主流派は,反社会的な体質を鮮明にして,組織の拡大・強化を図っている状況にあります。また,上祐派は,社会に対して麻原色の払拭を装う"麻原隠し"を更に推進していますが,これは麻原の教えを残すために,組織の存続を図ろうとするものにほかならず,その手法もより巧妙化しています。このように両派共に,依然として麻原の影響下にあって,本質的な危険性を保持していると言えます。
引き続き,教団組織及び活動の実態の解明や,観察処分の期間更新請求に必要とされる証拠収集に,全力を挙げて取り組んでいただきたいのです。

第4は,公共の安全に影響を及ぼすおそれのある諸団体の組織,活動等の把握についてです。
現在,過激派などの諸団体は,歴史認識や在日米軍基地の移設など我が国の重要政策をめぐる問題などを捉え,政府に対する批判活動を展開するとともに,そうした活動を通じて市民層への浸透を図るなど,勢力拡大に力を注いでいます。
当庁としては,これら諸団体の組織や活動を的確に把握し,不法事案の未然防止などに全力で取り組むとともに,その過程で収集した情報を適時適切に政府中枢に提供することで,政府の施策に貢献することが強く求められています。
また,我が国の領土や海洋権益をめぐって周辺国は様々な動きを見せて我が国との緊張を高めており,我が国の公共の安全に大きな影響を及ぼしている上,国際的な懸念も高まっております。これらの動きに関連した団体・組織等の動向調査,関連情報の収集に特に力を入れていただきたいのです。加えて,周辺国等による軍事転用可能物資・技術の不正取得,サイバー空間を含めた諜報活動といった対日有害活動に関する関連情報の収集についても,一層の力点をおいて取り組んでいただきたいのです。
当庁は,団体規制機関として,公共の安全を確保することとともに,情報コミュニティの一員として,国家安全保障会議への積極的な情報提供を始めとする適時適切な情報貢献を行うことが期待されています。こうした期待に応えるため,ただ今申し述べた事項等の重要性を改めて認識した上で,独自かつ深奥に迫る有用な情報の収集に一層精励していただきたいのです。

終わりに,皆様の平素の御労苦に心から敬意と謝意を表し,私の訓辞といたします。

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