少年法が変わります!
○しろまる 令和3年5月21日,少年法等の一部を改正する法律が成立し,令和4年4月1日から施行されます。この日から,成年年齢を18歳とする民法の一部を改正する法律も施行されます。
○しろまる 選挙権年齢や民法の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられ,18・19歳の者は,社会において,責任ある主体として積極的な役割を果たすことが期待される立場になりました。
今回の少年法改正は,18・19歳の者が罪を犯した場合には,その立場に応じた取扱いとするため,「特定少年」として,17歳以下の少年とは異なる特例を定めています。
○しろまる 改正法の内容等については,以下をご覧ください。
■しかく 法律【PDF】
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改正の概要
■しかくPDFはこちら
少年法改正Q&A
【目次】
〔少年法の仕組みについて〕
Q3:罪を犯した少年は,どのような手続で,どのような処分を受けるのですか。
Q5:「逆送」とはどのような手続ですか。また,「原則逆送対象事件」とは何ですか。
〔改正少年法について〕
Q7:選挙権年齢や民法の成年年齢は18歳に引き下げられたのに,なぜ18・19歳の者に少年法を適用するのですか。
Q8:特定少年の「原則逆送対象事件」について教えてください。
Q10:特定少年は,逆送後の刑事裁判では,どのように取り扱われるのですか。
A1 少年法は,少年の健全な育成を図るため,非行少年に対する処分やその手続などについて定める法律です。
少年法による手続・処分の特色として,
○しろまる 少年事件については,検察官が処分を決めるのではなく,全ての事件が家庭裁判所に送られ,家庭裁判所が処分を決定すること
○しろまる 家庭裁判所は,少年に対し,原則として,刑罰(懲役,罰金など)ではなく,保護処分(少年院送致など)を課すこと
などが挙げられます。
A2 平成27年から令和元年までの各年における少年の刑法犯の検挙人数は,次のとおりであり,少年犯罪は減少傾向にあります。
期間 | 検挙人数 |
---|---|
平成27年 | 48,680人 |
平成28年 | 40,103人 |
平成29年 | 35,108人 |
平成30年 | 30,458人 |
令和元年 | 26,076人 |
また,「凶悪犯罪」の範囲については様々な考え方があり得ますが,例えば,平成27年から令和元年までの各年に
○しろまる 16歳以上の少年のとき犯した故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件(「原則逆送対象事件」)
により家庭裁判所で処分された少年の人数は,次のとおりとなっています。
期間 | 処分人数 |
---|---|
平成27年 | 32人 |
平成28年 | 24人 |
平成29年 | 17人 |
平成30年 | 14人 |
令和元年 | 10人 |
A3 少年事件は,嫌疑がある限り,全ての事件が捜査機関(警察・検察)から家庭裁判所に送られます。
そして,家庭裁判所では,犯罪に関する事実のほか,少年の生い立ち,性格,家庭環境などについても調査をした上で,少年に対する処分を決定します。
家庭裁判所の決定には,検察官送致(逆送),少年院送致,保護観察などがあります。
検察官送致(逆送)は,家庭裁判所が,保護処分ではなく,懲役,罰金などの刑罰を科すべきと判断した場合に,事件を検察官に送るものです。逆送された事件は,検察官によって刑事裁判所に起訴され,刑事裁判で有罪となれば刑罰が科されます。
これに対して,少年院送致と保護観察はいずれも保護処分であり,少年院送致は少年を少年院に収容して処遇を行う処分,保護観察は少年に対して社会内で処遇を行う処分です。
A4 保護処分である少年院送致や保護観察は,少年の更生を目的として家庭裁判所が課す特別な処分であり,刑事裁判所が科す懲役,罰金などの刑罰とは異なるものです。
少年院送致では,対象者を少年院に収容し,その特性に応じた矯正教育などを行うのに対し,懲役では,対象者を刑務所に収容し,所定の作業を行わせることとされています。
保護観察では,対象者を施設に収容せず,社会内に置いたまま,保護観察所が指導監督,補導援護を行います。
A5 逆送は,家庭裁判所が,保護処分ではなく,懲役,罰金などの刑罰を科すべきと判断した場合に,事件を検察官に送るものです。逆送された事件は,検察官によって刑事裁判所に起訴され,刑事裁判で有罪となれば刑罰が科されます。
原則逆送対象事件とは,家庭裁判所が原則として逆送しなければならないとされている事件で,現行の少年法では,
○しろまる 16歳以上の少年のとき犯した故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪(殺人罪,傷害致死罪など)の事件
がこれに当たります。
今回の改正で,18歳以上の少年(特定少年)については,原則逆送対象事件が拡大されることとなりました。詳しくはQ8をご覧ください。
A6 少年法(第61条)によって,少年のとき犯した罪については,少年の更生に資するため,氏名,年齢,職業,住居,容ぼうなどによって犯人が誰であるかが分かるような記事・写真等の報道(推知報道)が禁止されています。
今回の改正で,18歳以上の少年(特定少年)については,推知報道が一部解禁されることとなりました。詳しくはQ9をご覧ください。
A7 18・19歳の者は,成長途上にあり,罪を犯した場合にも適切な教育や処遇による更生が期待できます。
そのため,今回の改正では,18・19歳の者も「特定少年」として引き続き少年法の適用対象とし,全ての事件を家庭裁判所に送って,原則として,更生のための保護処分を行うという少年法の基本的な枠組みを維持しています。
他方で,18・19歳の者は,選挙権年齢や民法の成年年齢の引下げにより,重要な権利・自由を認められ,責任ある主体として社会に参加することが期待される立場となりました。
そこで,18・19歳の者については,少年法においても,その立場に応じた取扱いをするため,原則逆送対象事件を拡大し,実名等の報道(推知報道)を一部解禁するなど,17歳以下の少年とは異なる特例を定めることとなりました。
A8 今回の改正により,18歳以上の少年(特定少年)については,原則逆送対象事件に,これまでの
○しろまる 16歳以上の少年のとき犯した故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件
に加えて,
○しろまる 18歳以上の少年のとき犯した死刑,無期又は短期(法定刑の下限)1年以上の懲役・禁錮に当たる罪の事件
が追加されることとなりました。
これにより,特定少年については,例えば,現住建造物等放火罪,強制性交等罪,強盗罪,組織的詐欺罪などが新たに原則逆送対象事件となります。
今回の原則逆送対象事件の拡大は,選挙権年齢や民法の成年年齢の引下げにより責任ある立場となる特定少年が重大な犯罪に及んだ場合には,17歳以下の少年よりも広く刑事責任を負うべきと考えられたことによるものです。
A9 今回の改正により,18歳以上の少年(特定少年)のとき犯した罪については,氏名,年齢,職業,住居,容ぼうなどによって犯人が誰であるかが分かるような記事・写真等の報道(推知報道)は原則として禁止されるものの,逆送されて起訴された場合(非公開の書面審理で罰金等を科す略式手続の場合は除く。)には,その段階から,推知報道の禁止が解除されることとなります。
これは,選挙権年齢や民法の成年年齢の引下げにより責任ある立場となった特定少年については,起訴され,公開の裁判で刑事責任を追及される立場となった場合には,推知報道を解禁し,社会的な批判・論評の対象となり得るものとすることが適当であると考えられたことによるものです。
A10 今回の改正により,18歳以上の少年(特定少年)は,逆送されて起訴された場合の刑事裁判では,原則として,20歳以上と同様に取り扱われることとなります。
例えば,判決で有期の懲役が科される場合,17歳以下の少年には,最長15年以下の範囲で,刑の長期と短期を定める不定期刑(例:懲役5年以上10年以下)が言い渡されるのに対し,特定少年には,20歳以上と同様に,最長30年以下の範囲で定期刑(例:懲役10年)が言い渡されることになります。
また,17歳以下の少年のとき犯した罪について刑罰に処せられた場合,少年法の特例(第60条)によって,資格の取得等を制限する様々な法律の規定(例:公務員への就職の制限)の適用が緩和されます(例えば,執行猶予中は制限されないなど)が,特定少年のとき犯した罪については,そのような特例は適用されず,20歳以上の場合と同様の制限を受けることになります。
(注) 今回の改正に伴う資格制限の適用について,詳しくはこちらのページをご覧ください。
A11 今回の改正により,18歳以上の少年(特定少年)の保護処分は,
○しろまる 少年院送致
○しろまる 2年間の保護観察(遵守事項に違反した場合には少年院に収容することが可能)
○しろまる 6か月の保護観察
とされ,家庭裁判所が,犯した罪の責任を超えない範囲内で,いずれかを選択することとなりました。
特定少年の少年院送致における収容期間は,家庭裁判所が,犯した罪の重さを考慮して,3年以下の範囲内で定めます。
なお,特定少年については,民法上の成年となることなどを考慮し,将来,罪を犯すおそれがあること(ぐ犯)を理由とする保護処分は行わないこととされました。
A12 今回の少年法改正は,民法の成年年齢の引下げと同じく,令和4年(2022年)4月1日から施行されます。
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