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よくあるご質問

無戸籍の方に関する戸籍の手続については、専門的な内容が多いため、御不明な点がある場合、まずは、法務局に御相談ください。

なお、嫡出推定制度については、民法等の一部を改正する法律(令和4年法律第102号)による改正がされました。

法改正の詳細な内容については「民法等の一部を改正する法律について」別ウィンドウで開くをご覧ください。

相談窓口

A1.

全国の法務局・地方法務局及びその支局別ウィンドウで開くに御相談ください。

また、全国の弁護士会別ウィンドウで開くにおいても相談を受けています。

A2.

次の書類をお持ちください。

なお、お持ちでない場合にも、まずはお電話で御相談ください。

  1. (1) 無戸籍の方が住民票に記載されている場合は、その住民票の写し
  2. (2) 母が戸籍に記載されている場合は、無戸籍の方の出生時の母の戸籍又は除籍の謄本等
  3. (3) 母子関係のあることを証する資料(注)

(注)資料の例は、次のとおりです。

  1. ア 医師、助産師等が発行した出生証明書
  2. イ 母子健康手帳
  3. ウ 幼稚園、保育園等に入園していたときの記録、小学校等の在学証明書等
  4. エ 母子共に写っている写真

無戸籍問題

A1.

子が出生した場合には、出生の届出をすることによって、その子が戸籍に記載されます。「無戸籍問題」とは、子の出生の届出をしなければならない方(注)が、何らかの理由によって出生の届出をしないために、戸籍に記載されない子が存在するという問題です。

戸籍は、法律上の親子関係を公証するものですから、出生届書には、法律上の親子関係のある父母を記載する必要があります。子の父母が婚姻している場合には、夫を父、妻を母とする出生届書を提出すれば、出生の届出が受理され、夫を父、妻を母として子の戸籍に記載されます。

また、令和4年12月の改正前の民法においては、母が元夫との離婚後300日以内に子を出産した場合、母が再婚したか否かに関係なく、その子は元夫の子と推定されるため(改正前民法772条)、元夫を父、妻を母とする出生届書を提出すれば、出生の届出が受理され、元夫を父、妻を母として子の戸籍に記載されます。

ここで、子の血縁上の父が元夫とは別の者である場合には、法律上の父と血縁上の父とが異なることになります。市区町村の戸籍窓口においては、子の法律上の父が誰であるかは法律の規定に従い判断できますが、子の血縁上の父が誰であるかについての実質的な審査はできませんから、血縁上の父を父とする出生届書を提出しても、出生の届出は受理されません。

「離婚後300日問題」とは、母が、元夫との離婚後300日以内に子を出産した場合には、その子は民法上元夫の子と推定されるため、子の血縁上の父と元夫とが異なるときであっても、原則として、元夫を父とする出生の届出以外受理されず、戸籍上も元夫の子として扱われることになるという問題、あるいは、このような戸籍上の扱いを避けるために、母が子の出生の届出をしないことによって、子が戸籍に記載されず無戸籍になっているという問題のことです。

これらの問題を解消するため、令和4年12月に民法が改正されました。

改正された民法の詳細は、「なぜ、離婚後300日以内に出生した子は血縁上元夫の子でないにもかかわらず、法律上元夫の子として扱われるのですか。」「嫡出推定制度は、なぜ必要なのですか。」「令和4年民法改正による嫡出推定規定の見直しの概要について教えてください。」及び「民法等の一部を改正する法律について」別ウィンドウで開くをご覧ください。

(注) 父母が婚姻している場合には父又は母が(ただし、子の出生前に父母が離婚した場合には母が)、父母が婚姻していない場合には母が、まずはそれぞれ出生の届出をしなければなりません(戸籍法49条1項、52条)。

A2.

嫡出推定制度によるものです。嫡出推定制度とは、法律上の父子関係を早期に確定させるための民法上の制度で、次のようなものです。

  1. (1) 血縁上の母子関係は、通常は分娩の事実自体から明らかであるのに対し、血縁上の父子関係は、必ずしも明らかではありません。しかし、夫婦の間に生まれた子は、血縁上も夫の子であることが通常であるという経験則を背景として、令和4年改正前の民法では、まず、妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定し、次に、婚姻成立の日から200日を経過した後又は離婚後300日以内に出生した子については、婚姻中に懐胎したものと推定すると定めていました(改正前民法772条)。
  2. これに対し、令和4年改正後の民法では、1妻が婚姻中に懐胎した子に加え、婚姻の成立後に生まれた子であって婚姻の成立前に懐胎されたものについても、夫の子と推定するものとし(民法772条1項後段)、また、2離婚後300日以内に出生した子であっても、母が子を懐胎した時から子の出生の時までの間に2回以上の婚姻をしていたときは、出生の直近の婚姻における夫の子と推定する(民法772条3項)ことなどを定めています。
  3. このような改正後の民法の嫡出推定に関する規定により、婚姻が成立した後に生まれた子や離婚後300日以内に生まれた子は、原則として(元)夫の子と扱われることとなりますが、離婚後300日以内に出生した子については、子の出生前に母が再婚していた場合、再婚後の夫の子として扱われることとなります。
  4. (2) そして、(元)夫や再婚後の夫の子であることを否定するためには、原則として、裁判手続によらなければならないとされています(「婚姻中に懐胎した子や婚姻成立後200日経過後又は離婚後300日以内に生まれた子は、(元)夫から嫡出否認の手続をとってもらわない限り、戸籍上(元)夫の子とされるのですか。」参照)。この裁判手続は、令和4年改正前の民法では、父のみが、子又は親権を行う母に対して、子の出生を知った時から1年以内に限り訴えを提起することができるとされていましたが、令和4年改正後の民法により、訴えを提起することができる者が父、子、母及び上記2の場合において、子の懐胎の時から出生の時までの間に母と婚姻したものであって、子の父以外の者(以下「前夫」と表記します。)(民法774条1項・3項・4項)とされ、また、訴えを提起することができる期間も、父及び前夫については子の出生を知った時から3年以内、子及び母については子の出生の時から3年以内に伸長されました(母が手続を行う場合については、詳しくは「嫡出否認の手続は、どのようなものですか。」参照。また、子が手続を行う場合については更に期間を伸長する例外があります(詳しくは「無戸籍の方が母の元夫を父としない戸籍の記載を求める場合は、嫡出否認の手続によらなければならないのですか。」参照)。)。
  5. なお、後記のとおり、訴えを提起する前に、まずは調停を申し立てることになります(詳しくは「嫡出否認の手続は、どのようなものですか。」参照)。
A3.

嫡出推定制度によって、母の婚姻した後又は婚姻の解消若しくは取消し後300日以内に生まれた子は、父の認知や裁判上血縁関係を証明しなくても、当然に法律上の父がいることになります。仮に、嫡出推定制度が存在しなければ、誰からでも、また、いつまでも法律上の父子関係を否定することができることになってしまいます。例えば、長年、父の子として生活してきたにもかかわらず、父が死亡した後になって、他の相続人から、父の子であることを否定されるといった事態もあり得ることになります。さらに、第三者から、子の血縁上の父が母の夫以外の男性であるという主張がされることにもなり得ますが、このような主張は、その主張の真偽にかかわらず、それ自体が家庭内の平穏とプライバシーを害するものであり、これによって家庭が崩壊するといった事態も生じかねません。

つまり、嫡出推定制度は、民法772条による嫡出推定が及ぶ子について、一定の者のみが、一定の期間内に限り、嫡出否認の訴えを提起することができるものとすることにより、その後は、血縁関係の有無にかかわりなく、誰も法律上の父子関係を否定することができないものとすることによって、法律上の父子関係を早期に確定するとともに、家庭のプライバシーを守りながら家庭の平和を尊重し、子の福祉を図ろうとする制度です。

A4.

無戸籍者問題については、(元)夫以外の者との間の子を出産した女性が、戸籍上その子が(元)夫の子と記載されることを避けるために出生届を提出しないことにより、戸籍に記載されない子が生じるという経緯が典型でした。

そこで、嫡出推定制度の趣旨を踏まえつつ、嫡出推定の範囲等に係る規律を見直すことにより、出生届の提出がためらわれることとなる状況の発生を防止し、無戸籍となる子が生じることを防止するため、令和4年12月に、民法が改正され、嫡出推定に関する規定や嫡出否認の訴えに関する規律が見直されました。

嫡出推定に関する規定については、令和4年改正により、婚姻の成立した日から200日以内に生まれた子についても、夫の子と推定することとし、婚姻の解消等の日から300日以内に生まれた子については、母が(元)夫以外の男性と再婚した後に生まれた場合には、再婚後の夫の子と推定することとされました。これにより、婚姻の解消等の日から300日以内に生まれた子であっても、母が(元)夫以外の男性と再婚した後に生まれた場合には、再婚後の夫を父とする出生の届出をすることが可能となりました。

嫡出否認の訴えに関する規定については、令和4年改正前の民法では、夫のみが、嫡出否認の訴えにより、父子関係を否定することができることとされていましたが、令和4年改正により子及び母も嫡出否認の訴えを提起できるようになりました。これにより、子又は母は、自ら嫡出否認の訴えを提起し、これを認める判決を得た上で、(元)夫を父としない出生の届出をすることが可能となりました(なお、離婚後300日以内に生まれた子につき、子の懐胎の時から出生の時までの間に母と婚姻した者であって、子の父以外の者についても、嫡出否認の訴えを提起することができます。)。

また、令和4年改正前の民法では、嫡出否認の訴えを提起することができる期間を1年としていましたが、令和4年改正後の民法では、期間が3年に伸長されます(子が手続を行う場合については更に期間を伸長する例外があります(詳しくは「無戸籍の方が母の元夫を父としない戸籍の記載を求める場合は、嫡出否認の手続によらなければならないのですか。」参照)。)。

令和4年改正後の民法により見直された嫡出推定に関する規定は、令和6年4月1日以降に生まれた子に適用されます。

なお、改正民法の施行日前に生まれた子についても、子及びその母の側から、自己の権利の行使として、生物学上の父子関係を伴わない嫡出推定を否認することを可能とすることにより、無戸籍者問題の抜本的解消を図る観点から、改正民法の施行日である令和6年4月1日より前に生まれた子やその母であっても、令和6年4月1日から1年間に限り、嫡出否認の訴えを提起して、血縁上の父ではない者が子の父と推定されている状態を解消することが可能とされました。

無戸籍の方を戸籍に記載するための手続

母が手続を行う場合

A1.

嫡出推定が及ぶ場合には、嫡出否認の手続によらなければ、父子関係を争えないのが原則です(「嫡出否認の手続は、どのようなものですか。」参照)。

令和4年改正前の民法では、夫のみが、嫡出否認の訴えにより、父子関係を否定することができるとされていましたが、令和4年改正後の民法では、子及び母も嫡出否認の訴えを提起できるようになりました。

これに対し、令和4年改正後の民法の施行の前後を問わず、嫡出否認の手続によらない場合であっても、戸籍上、母の(元)夫の子として取り扱われない場合があります。具体的には、戸籍事務の担当者に、嫡出推定が及ばないということがはっきり分かれば、嫡出否認の手続によることなく、戸籍上(元)夫の子とはしないという取扱いが可能です。そのような例としては、まず、離婚後300日以内に出生した子であっても、医師の作成した証明書により、婚姻中に懐胎した子ではないこと(=離婚後に懐胎したこと)を直接証明することができる場合があります(「離婚後に元夫ではない男性との間の子を懐胎したのに、早産であったため、離婚後300日以内に子が生まれたというような場合にも、裁判手続を経なければ、元夫の子という扱いになってしまうのですか。」参照)。

このほかにも、裁判手続において嫡出推定が及ばない事情が証明されれば、嫡出否認の手続によることなく(元)夫との父子関係を争うことが可能とされており、その結果、(元)夫との間に父子関係がないことが明らかになれば、戸籍上も(元)夫の子として取り扱わないことが可能です。どのような場合に嫡出推定が及ばない事情があるといえるかについて、最高裁判所は、「妻が子を懐胎すべき時期に、既に夫婦が事実上の離婚をして夫婦の実態が失われ、又は遠隔地に居住して、夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明らかであるなどの事情が存在する場合」と判示しており(最判平成12年3月14日)、一般的には、母の懐胎時に外観上婚姻の実態がない場合をいうと解されています。裁判手続によらなければならないのは、このような事情があるか否かについて、市区町村の戸籍窓口で調査し認定することは困難なためです。

裁判手続の具体的な方法としては、(1)(元)夫を相手として、父子関係がないことの確認を求める親子関係不存在確認の手続、(2)血縁上の父を相手として、子であると認めることを求める強制認知の手続があります。

なお、親子関係不存在確認の手続を経ずに、強制認知の手続をとることも可能です(「親子関係不存在確認の手続を経ずに強制認知の手続をとることは可能ですか。」参照)。

A2.

離婚後300日以内に出生した場合でも、離婚後に懐胎したことが医学的に証明できるときには、「妻が婚姻中に懐胎した子」(民法772条1項)には当たらないので、元夫の子として扱う必要はありません。このような場合については、通達により、出生届書とともに、医師が作成した一定の様式の証明書を市区町村の戸籍窓口に提出することで、元夫を父としない出生の届出をすることができることになっています(平成19年5月7日民事局長通達)。

詳しくは「婚姻の解消又は取消し後300日以内に生まれた子の出生の届出の取扱いについて」別ウィンドウで開く参照

A3.

令和4年改正前の民法では、(元)夫(子の父と推定される者)のみが、子又は親権を行使する母を相手方として、家庭裁判所に嫡出否認の調停を申し立てることができ、嫡出否認の調停を申し立てることができる期間は、子の出生を知った時から1年以内に限られていました。

令和4年改正後の民法により、令和6年4月1日以後に生まれた子については、子及び母も嫡出否認の調停を申し立てることができることとされ、(元)夫(子の父と推定される者)が、子又は親権を行使する母を、子及び母は父を相手方として、また、前夫(「なぜ、離婚後300日以内に出生した子は血縁上元夫の子でないにもかかわらず、法律上元夫の子として扱われるのですか。」参照)は父及び子又は親権を行う母を相手方として、それぞれ、家庭裁判所に嫡出否認の調停(詳しくは裁判所HP「嫡出否認調停」別ウィンドウで開く参照)を申し立てることができます。嫡出否認の調停を申し立てることができる期間は、令和4年改正前の民法では子の出生を知った時から1年以内に限られていましたが、令和4年改正後の民法では、子の出生を知った時(子又はその母にあってはその子の出生の時)から3年以内に伸長されました(「なぜ、離婚後300日以内に出生した子は血縁上元夫の子でないにもかかわらず、法律上元夫の子として扱われるのですか。」参照)。

また、子は、その父と継続して同居した期間が3年を下回ることなどの要件の下、21歳に至るまでの間、嫡出否認の調停を申し立てることができます。

さらに、令和6年4月1日より前に生まれた子及びその母であっても、令和6年4月1日から1年間に限り、嫡出否認の調停を申し立てることができます。

なお、調停とは、当事者間の話合いによって事件を解決する手続ですが、嫡出否認の手続は、子の父が誰であるかという子の福祉にとって極めて重要な事柄を決めるものですから、単に当事者間で子の父が誰であるかということについての合意が成立しただけでは、調停成立(=事件解決)にはなりません。この手続においては、(1)当事者間に申立ての趣旨(例:「子が(元)夫の嫡出子であることを否認する。」)のとおりの審判を受けることについて合意が成立すること、(2)当事者間に父子関係の存否に関する事実関係に争いがないことに加えて、(3)裁判所が必要な事実の調査を行った上で(1)の合意を正当と認めた場合に、申立ての趣旨に沿った審判(合意に相当する審判。家事事件手続法277条)がされることになっており、それ以外の場合には、調停は不成立として終了します。例えば、(2)について当事者間で父子関係について争いがある場合や、(3)についてDNA鑑定等の事実の調査をした結果、(元)夫と子との間に父子関係が存在しないという事実が認められなかったような場合には、調停は不成立となります(調停不成立後の手続については、「調停が不成立となった場合には、どうすればよいのですか。」参照)。

A4.

親子関係不存在確認の手続は、子が(元)夫を相手方として、強制認知の手続は子が血縁上の父を相手方として、それぞれ調停を申し立てることになります(詳しくは裁判所HP「親子関係不存在確認調停」別ウィンドウで開く及び「認知調停」別ウィンドウで開く参照)。各手続における申立人と相手方、手続的要件は図2のとおりです。

なお、これらの手続においても、申立ての趣旨に沿った審判がされるためには、嫡出否認の手続と同様に、(1)当事者間に申立ての趣旨(例:「子と(元)夫との間に親子関係がないことを確認する。」、「子が血縁上の父の子であることを認知する。」)のとおりの審判を受けることについて合意が成立すること、(2)当事者間に父子関係の存否に関する事実関係に争いがないことに加えて、(3)裁判所が必要な事実の調査を行った上で(1)の合意を正当と認めたことが必要となります。

A5.

親子関係不存在確認の手続と強制認知の手続は選択的であり、優劣関係にはないことから、親子関係不存在確認の手続を経ずに強制認知の手続をとることは可能です。

A6.

調停手続においては、当事者間に合意が成立することが必要になりますので(「親子関係不存在確認の手続は、どのようなものですか。また、強制認知の手続は、どのようなものですか。」参照)、(元)夫が当事者となる親子関係不存在確認の調停手続においては、(元)夫の調停出席が必要となります。他方、強制認知の調停手続においては、子又は母と血縁上の父が当事者となり、(元)夫は当事者ではないため、(元)夫の調停出席が必要となるわけではありません。もっとも、家庭裁判所が、嫡出推定が及ばない事情があるか否か(「婚姻が成立した後に生まれた子や離婚後300日以内に生まれた子は、(元)夫から嫡出否認の手続をとってもらわない限り、戸籍上(元)夫の子とされるのですか。」参照)を審理するため等に必要と考えれば、(元)夫に手続への関与を求めることがあり得ます。

訴訟手続(「調停が不成立となった場合には、どうすればよいのですか。」参照)においては、調停のように当事者間で合意が成立することは必要ではありませんので、(元)夫が裁判所に出頭しない場合であっても、手続が進められ、証拠による認定が行われて、判決がされます。もっとも、訴訟においても、嫡出推定が及ばない事情が必要であることには変わりありません。

A7.

嫡出否認、親子関係不存在確認及び強制認知の裁判手続は、法律上の父子関係を決めるものであり、裁判手続の結果によっては、(元)夫が子の法律上の父として扶養義務を負わず、子が(元)夫の相続人にならないことになるため、(元)夫は重大な利害関係を有しています。したがって、(元)夫にとって、裁判手続に協力するメリットは大きいといえます。

A8.

裁判所の構内で暴力を振るわれるおそれや、現住所が知られることにより生命や身体に危害が加えられるおそれがあると認められる場合などには、調停期日において当事者双方が顔を合わせないように配慮したり、申立書に現住所を記載することを厳格には求めない取扱いをしたりするなど、裁判所において事案に応じた措置が講じられています。このような特別の事情がある場合には、裁判手続の申立ての際に裁判所に申し出るとともに、提出する書類等にも現住所を記載することのないようご注意ください。

また、DV被害者の方などの住所、氏名等を相手方に秘匿したまま、裁判手続を進める新しい制度が創設されました(令和5年2月20日施行)。

詳しくは、「民事訴訟法等の一部を改正する法律について」別ウィンドウで開くをご覧ください。

A9.

事案にもよりますが、過去の例では、おおむね調停手続にかかった期間は1か月から3か月程度、当事者の裁判所への出頭回数は1、2回程度となっています。ただし、調停手続は、当事者双方が裁判所に出向いて合意することが前提になりますので、事案によっては、更に期間や回数をかけて事実の調査や意見の調整が図られることもあります。

A10.

調停が不成立となった場合に、調停の申立人が、更に裁判所で自己の主張を認めてもらいたいと考えるときは、家庭裁判所に、嫡出否認の訴え、親子関係不存在確認の訴え又は強制認知の訴えを提起することができ、この中で父子関係の存否について審理されることになります。このうち、親子関係不存在確認の訴え及び強制認知の訴えの場合には、訴訟手続の中で、嫡出推定が及ばない事情があること(「婚姻が成立した後に生まれた子や離婚後300日以内に生まれた子は、(元)夫から嫡出否認の手続をとってもらわない限り、戸籍上(元)夫の子とされるのですか。」参照)を主張し、立証する必要があります。

A11.

本籍地の市区町村の戸籍窓口において、以下の戸籍の届出や訂正申請の手続をとっていただきます。また、戸籍窓口での手続は、本籍地の市区町村に限らず、届出をする方の所在地の市区町村でも行うことができます。なお、子の母が夫と離婚しているかどうかで手続が違います。

(1) 夫と離婚している場合(注1)
出生届書、裁判書の謄本(嫡出否認、親子関係不存在確認又は強制認知の申立て・請求を認容する審判書・判決書の謄本)及び確定証明書(審判や判決が確定したことを示す証明書。審判又は判決をした裁判所の書記官が発行します。)を市区町村の戸籍窓口に提出していただくことによって、子は母の戸籍に記載されます。この場合、子は母の氏を称し、その父欄は空欄となります。(注2)強制認知の裁判手続をとっているときは、上記に加え、裁判認知の届書を市区町村の戸籍窓口に提出していただくことによって、子の父欄に血縁上の父の氏名が記載されます。
  1. (注1)既に元夫の子として出生の届出をしている場合は、戸籍訂正申請書、裁判書の謄本及び確定証明書を市区町村の戸籍窓口に提出していただくことによって、子は元夫の戸籍から削除され、母の戸籍に記載されます。この場合、子は母の氏を称し、その父欄は空欄となります。
  2. (注2)母が元夫の氏を称する婚姻中に子を出産し、その後離婚した場合には、親子関係不存在確認の手続又は強制認知の手続をとったとしても、子の氏が元夫の氏(無戸籍の方の出生時の母の氏)となり、離婚後の母の氏とは異なることとなるため、そのままでは元夫の戸籍に記載されることになります。そのような場合には、出生届を提出する前に、あらかじめ家庭裁判所において、無戸籍の方について、「母の元夫の氏」から「母の氏」に変更することの許可(民法791条1項)を得た上で、出生届書の「その他」欄に「母の氏を称する入籍」と記載をすることによって、無戸籍の方は母の戸籍に記載されることになります。
(2)夫と離婚していない場合(注3)(注4)
出生届書、裁判書の謄本及び確定証明書を市区町村の戸籍窓口に提出していただくことによって、子は、夫婦の戸籍に記載されます。嫡出否認の手続又は親子関係不存在確認の手続をとった場合、子は夫婦の氏を称し、その父欄は空欄となります。強制認知の裁判手続をとっているときは、上記に加え、裁判認知の届書を市区町村の戸籍窓口に提出していただくことによって、子の父欄に血縁上の父の氏名が記載されます。
  1. (注3)離婚の手続がとられない限り、子を夫婦の戸籍に記載することになります。
  2. (注4)既に夫の子として出生の届出をしている場合、戸籍訂正申請書、裁判書の謄本及び確定証明書を市区町村の戸籍窓口に提出していただくことによって、夫婦の戸籍中、子の父欄に記載されている夫の氏名が削除されます。この場合、子は夫婦の氏を称します。

無戸籍の方が手続を行う場合

戸籍に記載されるための手続の概要

A1.

母の元夫を父とする戸籍の記載を求めるか、元夫を父としない戸籍の記載を求めるかによって、手続が異なります。

無戸籍の方が元夫を父とする戸籍の記載を求める場合には、法務局において母子関係の認定をすることができれば、裁判手続によることなく手続をすることができます。この場合には、原則として、父母の離婚の際の氏を称し、その戸籍に記載されることになります(詳しくは「母の元夫を父とする戸籍の記載を求める方法」参照)。なお、母が復氏している場合には、離婚の際の戸籍から、母の戸籍に記載を移す手段があります(詳しくは「無戸籍の方が母の元夫の戸籍に記載された後、母の戸籍に入ることはできますか。」参照)。

無戸籍の方が母の元夫を父としない戸籍の記載を求める場合には、裁判手続において嫡出推定の及ばない事情が証明されれば、嫡出否認の手続によることなく元夫との父子関係を争うことが可能とされており、その結果、元夫との間に父子関係がないことが明らかになれば、母の氏を称し、その戸籍に記載されることになります(詳しくは「母の元夫を父としない戸籍の記載を求める方法」参照)。

母の元夫を父とする戸籍の記載を求める方法

A1.

まず、無戸籍の方から出生証明書や母子手帳など、母子関係があることを証する書面を法務局に提出していただきます。また、法務局では、併せて無戸籍の方本人や関係者から聴き取りを行います。

このような調査の結果、法務局において母子関係があるとの認定をすることができると判断された場合(認定をすることができない場合については、「法務局において母子関係の認定をすることができない場合には、どのような手続をとればよいのですか。」参照)には、無戸籍の方から「出生事項記載申出書」(「『出生事項記載申出書』とは、どのようなものですか。」参照)を提出していただきます(注1)。

法務局は、母と元夫の婚姻中又はその離婚後300日以内に無戸籍の方が出生していれば、離婚の際における父母の本籍地の市区町村にこの申出書を送付し、送付を受けた市区町村から母に対し、出生の届出をするよう二度の催告をします(注2)。

それでも出生の届出がされない場合や、母が死亡し、又は所在不明になっていることから催告をすることができない場合には、上記の本籍地の市区町村長において、法務局長の許可を得た上で、職権で無戸籍の方を離婚の際の父母の戸籍に記載します。この場合、無戸籍の方は離婚の際における父母の氏を称し、その父欄には元夫の氏名が記載されます。

  1. (注1)母の協力が得られる場合には、本籍地又は所在地の市区町村の戸籍窓口に母から出生の届出をする方法により、離婚の際の父母の戸籍に記載することもできます。
  2. (注2)母が催告に応じて出生の届出をする場合も、注1と同様になります。
A2.

無戸籍の方本人を含め、出生届の届出義務者(父母等)ではない方が、所在地の市区町村長に対し、無戸籍の方が出生した事実を戸籍に記載をするよう申し出るための書面です。その様式は、出生事項記載申出PDFのとおりです。

A3.

無戸籍の方が離婚の際の父母の氏である母の元夫の氏を称して、元夫の戸籍に記載されても、その後、裁判手続により、氏を離婚後の母の氏に変更し、母の戸籍に入ることができます。

元夫の氏を称して婚姻した母は、離婚により婚姻前の氏に復し、元夫とは別の戸籍に記載されることになります。そして、母が婚姻前の氏に復したときは、母と子の氏が異なることとなります(母が離婚の際の氏を称している場合(民法767条2項)についても、母と子の氏が異なることとなります。)。しかし、母と子の氏が同じでなければ一つの戸籍に同籍できません。そこで、家庭裁判所において、無戸籍の方について、「母の元夫の氏」から「母の氏」に変更することの許可(民法791条1項)を得た上で、本籍地又は所在地の市区町村役場において、母の戸籍への入籍の届出をすることによって、無戸籍の方は母の戸籍に入ることになります。この場合、無戸籍の方は母の氏を称し、その父欄には元夫の氏名が記載されます。なお、元夫の戸籍中、無戸籍の方の記載部分には、「除籍」との記載が加えられます。

母の元夫を父としない戸籍の記載を求める方法

A1.

嫡出推定が及ぶ場合には、母の元夫からの嫡出否認の手続によらなければ、父子関係を争えないのが原則です(「嫡出否認の手続は、どのようなものですか。」参照)。令和4年改正前の民法では、嫡出否認の訴えに関し、申立てをすることができるのは元夫のみで、しかも、申立てをすることができる期間は、元夫が子の出生を知った時から1年以内に限定されていましたので、無戸籍の方が自ら法的な手続をとることができるようになった頃にはこの期間を過ぎていることが多いものと考えられます。

この点に関し、令和4年改正により、令和6年4月1日より前に生まれた無戸籍の方は、同日から1年以内に限り、嫡出否認の手続によって母の元夫を父としない戸籍の記載を求めることができます。

また、令和6年4月1日以降に生まれた子については、子又は母が、子の出生の時から3年以内に限り、嫡出否認の手続によって、母の元夫を父としない戸籍の記載を求めることができます。なお、子については、その父と継続して同居した期間が3年を下回ることなどの要件の下、21歳に達するまでの間、嫡出否認の手続を行うことができます。

これに対し、改正民法の施行の前後を問わず、嫡出否認の手続によらない場合であっても、戸籍上、母の(元)夫の子として取り扱われない場合があります。具体的には、戸籍事務の担当者に、嫡出推定が及ばないということがはっきり分かれば、嫡出否認の手続によることなく、戸籍上元夫の子とはしないという取扱いが可能です。そのような例としては、まず、離婚後300日以内に出生した子であっても、医師の作成した証明書により、婚姻中に懐胎した子ではないこと(=離婚後に懐胎したこと)を直接証明することができる場合があります(「離婚後に元夫ではない男性との間の子を懐胎したのに、早産であったため、離婚後300日以内に子が生まれたというような場合にも、裁判手続を経なければ、元夫の子という扱いになってしまうのですか。」参照)。

このほかにも、裁判手続において嫡出推定が及ばない事情が証明されれば、嫡出否認の手続によることなく元夫との父子関係を争うことが可能とされており、その結果、元夫との間に父子関係がないことが明らかになれば、戸籍上も元夫の子として取り扱わないことが可能です。どのような場合に嫡出推定が及ばない事情があるといえるかについて、最高裁判所は、「妻が子を懐胎すべき時期に、既に夫婦が事実上の離婚をして夫婦の実態が失われ、又は遠隔地に居住して、夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明らかであるなどの事情が存在する場合」と判示しており(最判平成12年3月14日)、一般的には、母の懐胎時に外観上婚姻の実態がない場合をいうと解されています。裁判手続によらなければならないのは、このような事情があるか否かについて、市区町村の戸籍窓口で調査し認定することは困難なためです。

裁判手続の具体的な方法としては、(1)元夫を相手として、父子関係がないことの確認を求める親子関係不存在確認の手続、(2)血縁上の父を相手として、子であると認めることを求める強制認知の手続があります(「親子関係不存在確認の手続は、どのようなものですか。また、強制認知の手続は、どのようなものですか。」参照)。

A2.

親子関係不存在確認の手続は子が母の元夫を相手方として、強制認知の手続は子が血縁上の父を相手方として、それぞれ調停を申し立てます(詳しくは裁判所HP「親子関係不存在確認調停」別ウィンドウで開く及び「認知調停」別ウィンドウで開く参照)。各手続における申立人と相手方、手続的要件は図2のとおりです(元夫の裁判手続への関与の有無等については「嫡出否認の手続以外の裁判手続をとる場合にも、必ず(元)夫に出席又は出頭してもらわなければならないのですか。」「(元)夫にとっては、裁判手続に協力するメリットがないように思うのですが、裁判手続に関与してもらうことには、どのような意味があるのですか。」参照。親子関係不存在確認の調停手続に要する期間等については「親子関係不存在確認の調停手続を申し立てた場合、どのくらい期間がかかって、何回くらい裁判所に行くことになるのですか。」参照)。なお、親子関係不存在確認の手続を経ずに、強制認知の手続をとることも可能です(「親子関係不存在確認の手続を経ずに強制認知の手続をとることは可能ですか。」参照)。

これらの手続においても、申立ての趣旨に沿った審判がされるためには、嫡出否認の手続と同様に、(1)当事者間に申立ての趣旨(例:「子と元夫との間に親子関係がないことを確認する。」、「子が血縁上の父の子であることを認知する。」)のとおりの審判を受けることについて合意が成立していること、(2)当事者間に父子関係の存否に関する事実関係に争いがないことに加えて、(3)裁判所が必要な事実の調査を行った上で(1)の合意を正当と認めたことが必要となります。

調停が不成立となった場合に、調停の申立人が、更に裁判所で自己の主張を認めてもらいたいと考えるときは、家庭裁判所に、親子関係不存在確認の訴え又は強制認知の訴えを提起することができ、この中で父子関係の存否について審理されることになります。この場合には、訴訟手続の中で、嫡出推定が及ばない事情があること(「無戸籍の方が母の元夫を父としない戸籍の記載を求める場合は、嫡出否認の手続によらなければならないのですか。」参照)を主張し、立証する必要があります。なお、これらの裁判手続においては、父子関係の存否を検討する当然の前提として、母子関係の存否についても審理され、事実の認定がされることになります。

A3.

親子関係不存在確認の手続と強制認知の手続は選択的であり、優劣関係にはないことから、親子関係不存在確認の手続を経ずに強制認知の手続をとることは可能です。

A4.

親子関係不存在確認の手続の場合、母の元夫が死亡しているときには、調停を経ずに、検察官を被告として、親子関係不存在確認の訴えを提起することができます。

強制認知の手続の場合、血縁上の父が死亡しているときには、調停を経ずに、その死亡の日から3年以内に限り、検察官を被告として、強制認知の訴えを提起することができます。

また、いずれの手続の場合も、元夫又は血縁上の父が所在不明のときには、調停を経ずに、親子関係不存在確認の訴え又は強制認知の訴えを提起した上で、公示送達の方法によって訴状を送達することができます。いずれの場合も、家庭裁判所は、元夫又は血縁上の父が出頭しないまま審理を行い、判決をすることができます。

A5.

出生事項記載申出書(「『出生事項記載申出書』とは、どのようなものですか。」参照)、裁判書の謄本(親子関係不存在確認若しくは強制認知の申立て又は請求を認容する審判書又は判決書の謄本)及び確定証明書を所在地又は母の本籍地の市区町村の戸籍窓口に提出してください(注1)(注2)。また、強制認知の手続をとっているときは、上記に加え、裁判認知の届書を提出してください。

これを受けて、母の本籍地の市区町村から母に対し、出生の届出をするよう二度の催告をします(注3)。

それでも出生の届出がされない場合や、母が死亡し、又は所在不明になっていることから催告をすることができない場合には、母の本籍地の市区町村長において、法務局長の許可を得た上で、職権で無戸籍の方を母の戸籍に記載します。この場合、無戸籍の方は母の氏を称し、その父欄は、親子関係不存在確認の手続をとっている場合には空欄となり、強制認知の手続をとっている場合には血縁上の父の氏名が記載されます。

  1. (注1)母が元夫の氏を称する婚姻中に無戸籍の方を出産し、その後離婚した場合には、親子関係不存在確認の手続又は強制認知の手続をとったとしても、子の氏が元夫の氏(無戸籍の方の出生時の母の氏)となり、離婚後の母の氏とは異なることとなるため、そのままでは元夫の戸籍に記載されることになります。そのような場合には、出生事項記載申出書を提出する前に、あらかじめ家庭裁判所において、無戸籍の方について、「母の元夫の氏」から「母の氏」に変更することの許可(民法791条1項)を得た上で、出生事項記載申出書の「その他」欄に「母の氏を称する入籍」と記載をすることによって、無戸籍の方は母の戸籍に記載されることになります。
  2. (注2)母の協力が得られる場合には、最寄りの市区町村又は本籍地の市区町村の戸籍窓口に母から出生の届出をする方法により、母の戸籍に記載することもできます。母が離婚により復氏した場合の取扱いは、(注1)と同様になります。
  3. (注3)母が催告に応じて出生の届出をする場合も、注2と同様になります。

母との親子関係が明らかでない場合の手続

A1.

家庭裁判所においては、DNA鑑定等の結果に基づいて、母子関係の認定をすることができます。裁判手続の具体的な方法としては、(1)母を相手として、母子関係があることの確認を求める親子関係存在確認の手続(「母との間の親子関係存在確認の手続は、どのようなものですか。」参照)があります。また、証拠となる資料が乏しい等の理由により、裁判手続においても母子関係が認められなかったような場合には、無戸籍の方を戸籍に記載するための裁判手続として、(2)就籍許可の手続(「就籍許可の裁判手続は、どのようなものですか。」参照)があります。これらの手続をとった上で、市区町村の戸籍窓口で就籍の届出を行う必要があります。

A2.

無戸籍の方が母を相手方として、家庭裁判所に親子関係存在確認の調停を申し立てることになります。

調停とは、当事者間の話合いによって事件を解決する手続ですが、親子関係存在確認の手続は、子の母が誰であるかという子の福祉にとって極めて重要な事柄を決めるものですから、単に当事者間で子の母が誰であるかということについての合意が成立しただけでは、調停成立(=事件解決)にはなりません。この手続においては、(1)当事者間に申立ての趣旨(例:「子と母との間に親子関係があることを確認する。」)のとおりの審判を受けることについて合意が成立すること、(2)当事者間に母子関係の存否に関する事実関係に争いがないことに加えて、(3)裁判所が必要な事実の調査を行った上で(1)の合意を正当と認めた場合に、申立ての趣旨に沿った審判(合意に相当する審判。家事事件手続法277条)がされることになっており、それ以外の場合には、調停は不成立として終了します。例えば、(2)について当事者間で母子関係について争いがある場合や、(3)についてDNA鑑定等の事実の調査をした結果、母とされる者と子との間に母子関係が存在するという事実が認められなかったような場合には、調停は不成立となります。

調停が不成立となった場合に、調停の申立人が、更に裁判所で自己の主張を認めてもらいたいと考えるときは、家庭裁判所に、親子関係存在確認の訴えを提起することができ、この中で母子関係の存否について審理されることになります。この場合には、訴訟手続の中で、母子関係のあることを主張し、立証する必要があります。家庭裁判所は、母子関係の存在を認めることができれば、母子関係があることを確認する旨の判決をします。

その上で、無戸籍の方において、市区町村の戸籍窓口に就籍届書、裁判書の謄本(親子関係存在確認の申立て又は請求を認容する審判書又は判決書の謄本)及び確定証明書(審判や判決が確定したことを示す証明書。審判又は判決をした裁判所の書記官が発行します。)を提出していただくことによって、無戸籍の方は父母が婚姻中又は離婚後300日以内に出生している場合には、離婚の際における父母の氏を称し、その戸籍に記載されます。この場合、その父欄には元夫の氏名が記載されます。なお、就籍者が成年に達している場合は、その意思により、新たな本籍を定め、新戸籍を編製することができます。

A3.

母が死亡している場合には、調停を経ずに、検察官を被告として、親子関係存在確認の訴えを提起することができます(家事事件手続法257条2項ただし書。人事訴訟法12条3項)。また、母が所在不明の場合にも、調停を経ずに、親子関係存在確認の訴えを提起した上で、公示送達の方法によって訴状を送達することができます(家事事件手続法257条2項ただし書。民事訴訟法110条)。いずれの場合も、家庭裁判所は、母が出頭しないまま審理を行い、判決をすることができます。

A4.

就籍許可の裁判手続は、家庭裁判所の許可により、本籍を有しない者について本籍を設け、戸籍に記載するための手続です。相手方はなく、調停を経る必要もありません。

家庭裁判所は、その審理において、無戸籍の方が日本国籍を有しており、かつ、戸籍法110条1項に規定する「本籍を有しない者」(「本籍の有無が不明である場合」を含む。)と認められれば、就籍許可の審判をします。一般的には、通称を戸籍上の氏名として就籍許可の審判がされます。

日本国籍を有するかどうかは国籍法の規定によることとなります。国籍法2条は、(1)父母のいずれかが日本国籍を有している場合(1号2号)だけでなく、(2)日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき又は国籍を有しないとき(3号)も、子は出生により日本国籍を取得すると規定しています。最高裁判所は、「国籍法2条3号にいう『父母がともに知れないとき』とは、父及び母のいずれもが特定されないときをいい、ある者が父又は母である可能性が高くても、これを特定するに至らないときも、右の要件に当たる」としています(最判平成7年1月27日)。

就籍許可の審判を経た上で、無戸籍の方において、所在地の市区町村の戸籍窓口に就籍届書及び裁判書の謄本(確定判決の場合は判決の謄本とその確定証明書)を提出していただくことによって、無戸籍の方の新戸籍が編製されます。この場合、無戸籍の方は許可された氏を称し、その父母欄は空欄となります。

無戸籍の方の婚姻

A1.

無戸籍の方を婚姻の当事者の一方とする婚姻の届出がされた場合、相手方の氏を夫婦が称する氏とする届出であり、添付書類から婚姻要件を満たすことが認められるときは、婚姻の届出は受理され、婚姻が成立します。無戸籍の方に関する戸籍の届出をすることをお考えの場合は、所在地又は本籍地の市区町村の戸籍窓口や、法務局に御相談ください。なお、市区町村の戸籍窓口に婚姻届書を提出する際には、添付すべき書類として、次の書類が必要です。

  1. (1) 無戸籍の方の配偶者となる方の戸籍謄本等
  2. (2) 無戸籍の方が住民票に記載されている場合は、その住民票の写し
  3. (3) 母が戸籍に記載されている場合は、無戸籍の方の出生時の母の戸籍又は除籍の謄本等
  4. (4) 母子関係があることを証する資料(注)
(注)資料の例は、次のとおりです
  1. ア 医師、助産師等が発行した出生証明書
  2. イ 母子健康手帳
  3. ウ 幼稚園、保育園等に入園していたときの記録、小学校等の在学証明書等
  4. エ 母子共に写っている写真
無戸籍の方が婚姻した場合の戸籍の記載PDF

戸籍に記載されるまでの間の行政上のサービス

A1.

手続をとっている場合であっても、戸籍に記載されるまでには時間を要します。戸籍に記載される前であっても、一定の要件の下、以下のような行政上のサービス等を受けることが可能です。

  1. (1) 住民票への記載
    出生した子について住民票の記載がされるためには、戸籍法に基づく出生届が受理されていることが必要です。しかしながら、民法772条による嫡出推定が及ぶことに関連して、出生届がされていない場合であっても、親子関係不存在確認や強制認知等外形的に子の身分関係を確定するための手続を行っているときは、市区町村長は、当該手続が行われていることの疎明資料その他必要書類とともに申出を受け、申出内容を審査の上適当と認める場合に、職権でその子の住民票の記載をすることができることとされています。詳しくは、お住まいの市区町村の窓口にお尋ねください。
  2. (2) 小学校、中学校等への就学
    文部科学省においては、市区町村の教育委員会に対して、戸籍や住民基本台帳に記載されていない場合であっても、義務教育の年齢にあたる6〜15歳の子供について、その市区町村に居住していれば、小学校や中学校等に就学させるよう指導しているところです。現在、6〜15歳の子供がいる保護者は、子供の就学の機会を逸することのないよう、直ちにお住まいの市区町村の教育委員会において就学に関する案内を受けてください。なお、就学前となる5歳の子供がいる保護者におかれては、小学校等への入学に当たって必要な健康診断(無償)が早ければ10月1日から始まります。子供の就学の機会を逸することのないよう、お住まいの市区町村の教育委員会において入学に関する案内を受けてください。また、経済的な理由により就学が困難と認められる場合には、学用品費や学校給食費等について、援助を受けることもできます。あわせて、市区町村の教育委員会に相談してください。
  3. (3) 児童福祉行政上の取扱いについて
    1. ア 児童手当出生証明書により,児童及びその母が確認でき、かつ、児童が国内に居住している実態を確認できれば、児童手当の支給対象となります。
    2. イ 児童扶養手当ひとり親のご家庭等に支給する児童扶養手当については、出生証明書により、児童及びその母が確認でき、かつ、児童が国内に居住している実態を確認できれば、児童扶養手当の支給対象となります。
    3. ウ保育所・認定こども園・家庭的保育事業等
      市区町 村に小学校就学前の子供が居住している実態を確認することができれば、支給認定を受けた上で、保育所・認定こども園・家庭的保育事業等を利用することができ、子供のための教育・保育給付の対象となります。
    4. エ 母子保健
      市区町村に居住している実態を確認することができれば、母子保健に関する事業(母子健康手帳の交付、保健指導、新生児の訪問指導、健康診査等)の対象となります。
    5. オ 特別児童扶養手当
      調査により当該児童が国内に居住している実態を確認できれば、特別児童扶養手当の支給対象とすることができます。
    6. カ 障害児福祉手当
      調査により当該児童が福祉事務所所管区域内に居住している実態を確認できれば、障害児福祉手当の支給対象とすることができます。
    7. キ 障害児通所給付費等
      当該障害児の保護者が当該市町村に居住している実態を確認できれば、障害児通所給付費、特例障害児通所給付費、障害児入所給付費の支給対象とすることができます。
    以上の事業について、詳しくは、市区町村窓口にお尋ねください。また、手当等の受給に当たっては、上記を除く各種要件を満たす必要がありますので御留意ください。
  4. (4) 国民健康保険の取扱いについて
    他の公的医療保険に加入していない場合、市区町村に居住している実態を確認することができれば、被保険者として適用する取扱いとなります。詳しくは、市区町村窓口にお尋ねください。また、手当等の受給に当たっては、上記を除く各種要件を満たす必要がありますので御留意ください。
  5. (5) 生活保護制度の取扱いについて
    戸籍の有無を要件としておらず、自らの利用し得る資産、能力、その他あらゆるものを活用してもなお生活に困窮している方に対して保護を適用することとしています。詳しくは、市区町村窓口にお尋ねください。また、手当等の受給に当たっては、上記を除く各種要件を満たす必要がありますので御留意ください。
  6. (6) 旅券
    旅券の発給の申請をするためには、原則として、戸籍謄本又は戸籍抄本を提出しなければなりません。もっとも、人道上やむを得ない理由により、戸籍への記載を待たずに渡航しなければならない特別の事情があると認められる場合には、親子関係不存在確認や強制認知等の手続を行っていることの疎明資料その他必要書類を提出することによって旅券の発給を受けることができることとされています。旅券の発給について、詳しくは、都道府県の旅券事務所にお尋ね下さい。

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