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ディスカッションペーパー25-01
日本の労働市場におけるタスクの分布の変化と要因
―教育・産業構造の変化とICT導入の影響―

2025年2月28日

概要

研究の目的

本研究は、1980年から2020年の日本の労働市場におけるタスクの分布の変化を明らかにし、その要因として教育構造や産業構造の変化、ICT導入の影響を検証することを目的とする。総務省の国勢調査の個票データと日本版O-NETを職業でマッチングしたデータを用いて、6つ(非定型分析、非定型相互、定型認識、定型手仕事、非定型手仕事身体、非定型手仕事対人)のタスクに分類し、これらタスクの分布の変化とその要因について検証した。

研究の方法

厚生労働省の「職業情報提供サイト(日本版O-NET)(以下「日本版O-NET」 という)」で公開されている職業別の数値情報および総務省「国勢調査」個票データを用いた二次分析

主な事実発見

日本の労働市場におけるタスクの分布の変化(1980〜2020年)

日本版O-NETと国勢調査の個票データを職業でマッチングしたデータを使用して、1980年から2020年にかけてのタスクの分布の変化を確認した結果、次の点が明らかになった。

第1に、タスクの分布の変化について、欧米の先進諸国と同様に、非定型分析・相互タスクが増加し、定型手仕事・非定型手仕事身体タスクが減少している。一方で、日本独特の傾向として、定型認識タスクの増加と1990年代以降の非定型手仕事対人タスクの増加が確認された(図表1)。

図表1 タスクの分布のトレンド(1980年〜2020年)

[画像:図表1画像:日本版O-NETと国勢調査を職業でマッチングしたデータを用いて、日本の労働市場におけるタスクの分布のトレンドを確認]

注)日本版O-NET(ver5.00)および国勢調査個票データより筆者作成。

第2に、非定型分析・相互タスクの増加と定型手仕事・非定型手仕事身体タスクの減少には産業構造の変化と高学歴化の双方が寄与している一方で、定型認識タスクの増加は産業構造の変化が主因であることが明らかになった。特に1980年時点で割合の高かった農林漁業のシェアの減少が非定型分析・相互タスク、定型認識タスクの増加と非定型手仕事身体タスクの減少に大きく寄与していた(図表2)。また、近年では、医療・福祉産業のシェアの増加が非定型相互・分析タスクと非定型手仕事対人タスクの増加に寄与しており、日本の労働市場における二極化の一因となっている可能性が示唆された。

図表2 6タスクの分布の変化の要因分解

[画像:図表2画像:6つのタスクの分布の変化を教育構造と産業構造の変化に分解し、それぞれの寄与度を確認]

第3に、産業内のICT導入とタスクの分布の変化に関する分析から、ICT導入が非定型分析・相互タスクの増加に寄与していることが示されたが、定型認識タスクおよび定型手仕事タスクの代替関係は見られなかった(図表3)。

図表3 ICT資本導入とタスクの変化の関係(1980〜2020年)【固定効果モデル】

非定型分析 非定型相互 定型認識
model1 model2 model1 model2 model1 model2
Log (1人当たり実質ICT資本) 1.252*** 0.923** 0.915*** 0.596* -0.046 -0.088
(0.381) (0.363) (0.345) (0.310) (0.264) (0.253)
Log (1人当たり実質非ICT資本) 2.444*** 2.367*** 0.312
(0.764) (0.678) (0.572)
Adjusted R2 0.982 0.984 0.985 0.986 0.989 0.989
観測数 675 675 675
定型手仕事 非定型手仕事
身体
非定型手仕事
対人
model1 model2 model1 model2 model1 model2
Log (1人当たり実質ICT資本) 0.216 0.196 -0.349 -0.191 0.095 0.022
(0.277) (0.253) (0.270) (0.266) (0.290) (0.247)
Log (1人当たり実質非ICT資本) 0.147 -1.175** 0.544
(0.607) (0.469) (0.579)
Adjusted R2 0.986 0.986 0.992 0.993 0.988 0.988
観測数 675 675 675

注1) 産業、年効果を含めた固定効果分析。括弧内は産業、年のクラスター構造に頑健な標準誤差。 ***, **, *はそれぞれ1%, 5%, 10%で有意であることを示す。産業ごとの就業者数のウェイトを考慮している。

注2) 実質ICT資本ストック、実質非ICT資本ストックはともに2000年価格。JIPデータにおける ICT投資の分類は、1980年〜2010年と2015〜2020年とで異なるため、1980年〜2010年は旧分類のICT資本の値を、2015年〜2020年については新分類に基づくICT資本の予測値を使用している。

政策的インプリケーション

本研究の分析結果を踏まえた政策的インプリケーションは次の3点である。

  1. ICTやAI等の技術革新に対応した非定型スキルの育成支援の強化
  2. 自動化リスクの高い労働者へのセーフティネットとキャリア支援の拡充
  3. 職業分類の改善

政策への貢献

労働政策の効果的、効率的な推進(ハローワーク等現場活用を含む)のための基礎資料として活用されることが期待される。

本文

研究の区分

プロジェクト研究「技術革新と人材開発に関する研究」
サブテーマ「技術革新と人材育成に関する研究」

研究期間

令和6年度

執筆担当者

小松 恭子
労働政策研究・研修機構 研究員
麦山 亮太
学習院大学

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